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鉄道各社に「ベビーカー優先車両を導入して」と要望書を出した結果

「ベビーカーで混雑する電車に乗ったら白い目で見られた」。お子さんをお持ちの方なら、一度くらいは似たような苦い経験をされたことがあるのではないでしょうか。このような声を受け、メルマガ 『ジャーナリスティックなやさしい未来』の著者で、ジャーナリストの引地達也さんが所属する「あすぷろ実行委員会」は、各鉄道会社に「ベビーカー車両の導入」の要望書を提出。果たして、鉄道各社からの回答はどのようなものだったのでしょうか。

在京地下鉄・私鉄の「ベビーカー車両」要望の反応は?

「あすぷろ、という社会運動は『広がり』を目指す」という記事で、私が所属している社会活動の団体「あすぷろ実行委員会」が3月、首都圏の主な地下鉄や私鉄各社にベビーカー車両の導入の要望書昼間時間帯の車両編成すべてにおいて1両のベビーカー優先車両の導入」を提出したことをお伝えした。

この要望に対しての各社の返答は概ね「無理」との「ゼロ回答」ではあったが、その各社の対応が様々で面白い。反応しなかった社も含めて、その現在の文化状況を考えながら結果を報告したい。

要望書の提出先であったJR東日本、京王、小田急、東急、西武、東武、京成、京急、相鉄、東京メトロ、横浜市営地下鉄のうち、回答があったのは小田急東急京急相鉄東京メトロの5社。ほかのJR東日本、京王、西武、東武、京成、
横浜市地下鉄は提出から1か月を過ぎた4月26日現在、回答はなかった。

各鉄道会社からの回答

回答では、相鉄が「列車の先頭および最後部車両にフリースペース(車いす、ベビーカーをご利用のお客様スペース)を設けております。現状におきましては、混雑緩和への対応や、車両スペースが限られていることなどから、様々なニーズに対応する優先車両の導入は困難であるかと考えております」とし、現状維持との考え。

京急は「ご要望は、今後の課題としてお預かりさせていただき、周辺同業他社の状況および社会情勢を鑑みつつ検討させていただきたく存じます」と、他社を見ながら、という回答は正直でもある。

東京メトロは「広くお客様に対してベビーカー利用への理解・配慮が得られるよう、車両のフリースペース設置箇所付近へ、ベビーカー等を優先的にご利用いただける場所であることを周知するベビーカーマークステッカーを貼付しております」「『メトロのトリセツ』などの利用案内冊子を通して、ベビーカーを折りたたまずにご利用いただけること等の周知に努めております」と説明している。

できないことの見解のうち、小田急は女性専用車両導入には定時運転への影響を考慮し車両数や時間を限定していることを前提として「更にお客様を限定した車両を導入することは非常に難しい」としているのが本音らしく、女性専用車両さえ運用が難しいという現実を示しているようだ。

東急は「特定の車両をベビーカー優先車両とするのではなく、どの車両に乗車されてもベビーカーをとめやすいように車両すべてにフリースペースの設置を進めております」「ホームのスペース、各駅での乗降時分が限られることから、ベビーカーについては1つの車両に集中してではなく、分散してご利用いただきたいと考えております」と回答し、こちらは「全車両のフリースペース」で多様なニーズを受け止めたいという考えなのだろう。

ベビーカーでも気軽に外出できる日を目指して

この要望書は、車両導入を求めるものではあるが、私自身、それは「絶対」とは思っていない。目的は、赤ちゃんを育てる親がベビーカーでも気軽に外出し移動できる環境とマインドを形成したいということである。ベビーカーを車両の乗せることで、白い目で見られる状態を否として、子育てする母を温かく見守れる世の中のためのきっかけづくりである。この思いの本質を各社はどこまで理解しただろうか。回答という業務の中で、その思いを汲めるだけの余裕が各社ともないのが少し悲しいが、回答を見ながら、わかったことは、利用者のマジョリティ形成の重要さである。だから、その一歩は車両導入ではなく、きっかけとしての企画づくりかもしれない。導入しやすい地方の路面電車などで、ある時間だけベビーカーのお母さんを運ぶ取り組みなどでもよい。そんな企画を練りながら、この先も行動を続けていきたい。

image by: Tonv / Shutterstock.com

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特別支援教育が必要な方への学びの場である「法定外シャローム大学」や就労移行支援事業所を舞台にしながら、社会にケアの概念を広めるメディアの再定義を目指す思いで、世の中をやさしい視点で描きます。誰もが気持よくなれるやさしいジャーナリスムを模索します。

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