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【書評】皇室ジャーナリストが明かす「皇宮警察」の知られざる姿

「皇宮警察」をご存知でしょうか。読んで字の如く、皇室守護を目的とした唯一の警察組織なのですが、その詳しい姿はあまり知られていないというのが実情です。今回の無料メルマガ『クリエイターへ【日刊デジタルクリエイターズ】』では編集長の柴田忠男さんが、皇室ジャーナリストが2年の歳月をかけて取材した、知られざる皇宮警察のすべてを記した一冊を紹介しています。

皇宮警察
久能靖・著 河出書房新社

久能靖『皇宮警察』を読む。本の帯に「天皇をお護りし、皇室を護衛する!」とある。微妙にヘタな表現である。皇宮警察(こうぐうけいさつ)は皇室守護を目的とした唯一の警察組織である。わたしは知らなかった。皇宮警察を一般国民に詳しく紹介した本は、これが初めてなのだ。

著者は皇室ジャーナリスト。30年以上も取材のため宮内庁に出入りしていながら、皇宮警察を知らなかった。ふと気がついて、きちんと調べようと思い立ち、皇宮警察に打診したところたいへん喜ばれ、全面的な協力を得て約2年間にわたり密着取材ができた。本文も微妙にヘタだが、真っ当なレポートである。

皇宮警察は両陛下や各皇族方の護衛ばかりでなく、皇居をはじめ御所や御用邸などの警備も行う。それだけでなく、絶対に事件や事故、騒ぎを起こしてはならない、起こさせてはならない「絶対予防という崇高な使命を持つ。しかも護衛一辺倒ではなく、皇室と国民とのふれあいもサポートする難しい仕事だ。

皇宮警察本部は護衛部と警備部という二つの大きな部と、十課、四護衛署および警察学校から成る。護衛部は三つの課に分かれ、両陛下や各皇族方を直近で護衛するところから側衛官と呼ばれ、皇宮護衛官の誰もが憧れる任務である。国賓や各国大使が皇居に参内するときの護衛はとくに「儀衛」と呼ばれる。

警備部は皇居や御用邸などの警備、一般参賀や園遊会などの警備にあたるほか機動隊の機能を持つ隊も所管する。坂下、吹上、赤坂、京都の護衛署を持つ。皇宮護衛官になるためにはまず公務員試験に合格しなければならない。二次試験は面接と身体検査。身長、体重、色覚、視力、四肢の運動機能には制限がある。

体力テストもあり、基準に達しないものが一つでもあると不合格。競争率は大卒・高卒合わせた数字で2013年度27.5倍2014年度45倍だという。合格者は全員が皇宮巡査に任じられる。男女ともに全寮制。皇宮警察学校で大卒15か月、高卒21か月の研修と実習を受ける。その内容がこの本で詳しく描かれている。

座学と教養講座、警備訓練などの内容を密着取材。警備訓練の厳しさはすさまじい。実際の重い装備(6kg)をして屋外で行われる。5kgの楯を持ち隊列を組んでの駆け足。著者は駆け足後に男女とも1/3が倒れ込んだのを見る。そして楯を使った防備訓練。写真も多く掲載されている。身体を使った訓練は、ほかに柔道、剣道、弓道、逮捕術、射撃訓練、救急法訓練などがある。

座学では皇室に関する教養と警防、英会話、茶道、華道、書道、短歌、詩吟などがある。皇宮警察学校を卒業すると、各門での立番を経験する。正門の立番だけは儀杖勤務と呼ばれる。直立不動で一時間、微動だにしない。1時間が経過すると(それが限度らしい)次の二人と交代、このセレモニーが美しい。

皇宮護衛官になりたい人は必読の本であるが、これを読んで怖じ気づく人も少なくないだろう。著者は、人間は鍛え方によって短期間でこんなにも変わるものかという驚きを述べる。定年退職して再就職した人がいるが、履歴書だけで即内定の例もあったという。皇宮警察の社会的な信頼度は高い。孫の配偶者に欲しいな~。

編集長 柴田忠男

image by: Windyboy / Shutterstock.com

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