コストパフォーマンスの良さと圧倒的な品揃えが人気の「業務スーパー」を展開する神戸物産。先日発表された2017年10月期 第2四半期連結決算では1242億円超の売上高を記録するなど、その業績は絶好調です。2016年にはインサイダー取引疑惑があるとして神戸地検と兵庫県警による家宅捜査が行われましたが、その後、不起訴に。そんなイメージを払拭するかのごとく同社が快進撃を続けている理由はどこにあるのでしょうか。メルマガ『理央 周 の 売れる仕組み創造ラボ 【Marketing Report】』の著者でMBAホルダーの理央周(りおう・めぐる)さんが、その秘密をマーケティングの視点で探ります。
「業務スーパー」神戸物産の快進撃に学ぶ、戦略の明確化と顧客視点
神戸物産が好調だ。流通ニュースによると、「6月12日に発表した2017年10月期 第2四半期の連結決算は、売上高1242億5200万円(前年同期比4.4%増)、営業利益72億4900万円(44.1%増)、経常利益80億1400万円(2.8倍)、親会社株主に帰属する四半期純利益44億5,400万円(4.3倍)」とのこと。
自社サイトにある過去10か月の月次データを見ても、売上、売上総利益、営業利益ともに、堅調に推移している。
業務スーパーの維持費は、だいたい総売上の40%。
広い倉庫のような店内にはこごと陳列する方式だ。年間売上約3億円くらい。
維持費に年間1億2000万円くらい。
店舗の建物や従業員の給与に占める割合は以外に少なくてすむ。
200坪ほどの店舗を社員10人で運営するということ。 pic.twitter.com/gmWgw2xGZE— うまい酒とワインの店 酒の碇屋.【公式】 (@sake_ikariya) 2017年6月19日
食品を中心とした業務スーパーの神戸物産が、厳しい市場環境の中で、どのように業績をのばしているかを、マーケティングの視点で考えてみたい。
神戸物産の独自の強み
神戸物産の独自資源は、ホームページにあるように、他の小売業で扱っていない商品ラインアップを、価値のある価格で提供することだ。
いわゆる、差別化とコストリーダーシップの両立だ。差別化した商品ラインアップにするということは、当然ながら多品種少量になりがちで、ひいては仕入れ価格が割高になりそうであるが、その点をFC展開することと、ボリュームある輸入でカバーしている、秀逸なビジネスモデルである。
厳しい食品の卸の業界において、何をすべきか、と戦略を考えたうえで、差別化戦略をとり、さらに価格を下げるには何をすればいいのか、という発想を合わせてしている点が、この独自性につながっている。
エンド・ユーザーの視点を持つ業務スーパー
神戸物産は業務用スーパーとしての、「プロの品質、プロの価格」をスローガンにしている。店頭での看板を見てみると、上記に加えて、「一般のお客様大歓迎」とある。
ボリュームが多い業務用の食材に加えて、一般用の食材も豊富に品ぞろえされていて、ネットで検索すると、「お値打ちで美味しい」というフレーズで、神戸物産の食材を使ったタコライスなどのレシピが多く投稿されているのが目につく。
📌タコライス / 590kcal
(●︎´)З`)))モグモグ
業務スーパーのタコミート、カルディのサルサソースを使って簡単タコライス💕
590kcalのうちご飯だけで420kcal(笑)
ご飯250gも盛っちゃったのさ\(≧∀≦)/ pic.twitter.com/hMXJ3mEjqE— チャコ@MAX-37kg達成 (@chaco_diet) 2017年6月8日
クリスマスの夜は、業務スーパーの冷凍食材「牛赤身スジ肉1kg」「里いも500g」に、こんにゃく、長ネギを投入。山形芋煮会風に醤油ベースで味付けして、圧力鍋で煮込めば、トロトロの脂身が魅惑の「牛スジ芋煮会」の完成‼️。そろそろ趣味の領域に入って来たかも⁉︎。メリークリスマス🎄(笑) pic.twitter.com/ahjJ5WCUbI
— ダー岩井のツーリング写真館 (@Tadaiwai) 2016年12月25日
これはすごいぞ!「業務スーパー」の激安食材で作る絶品グルメレシピ集 https://t.co/hAqOdISeBJ #RTした人全員フォローする #RTした人全員フォローする pic.twitter.com/GeHrdxQBq3
— レシピ・レシピ@相互フォロー (@xwcuinfr7dyq1) 2016年12月16日
食材の値段を見に、業務スーパー下見!
たこ焼きの材料全部揃ってたし何よりAmazonで買うよりも断然業務スーパーの方が安かったという事実😲!!業務スーパー最強笑ありがたし。
#外大祭#文化祭#準備#たこ焼き#出店#業務スーパー pic.twitter.com/4fQXryex4e
— Takahiro Okusa (@TakahiroOkusa) 2016年10月21日
業務用スーパーのため、基本的に顧客は法人が中心。しかし、対法人向けのマーケティングを行う時に注意すべきは、「誰が需要を生みだしているのか」という点。
対消費者向けの場合、需要は消費者自身が「欲しい」と感じ購入するが、法人向けの場合は、顧客である法人自体が需要を創っているわけではなく、顧客のビジネスで生み出されプロダクトを購入または契約する、「エンド・ユーザー」が生み出す。
私のようなコンサルタントの事例でいうと、クライアントが引越会社の場合、引越をするのは、クライアントではなく、ユーザーとして引越しをする人たちになる。
したがって、対法人でも、クライアントのみを見ていては、十分なビジネスとしての質を保つことができない。
対法人の場合重要なことは、クライアントの先にいるエンド・ユーザーをしっかりと意識して、ビジネスを進めていく必要がある。
スケールメリットを活かしながらの差別化された商品ラインアップに加え、このユーザー目線が合体されて、神戸物産の独自性が出た結果が業績に色濃く出ている。
image by: WikimediaCommons(Corpse Reviver)