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「私が何か?」病院の口コミ評価をガタ落ちにする、受付係の態度

最近、病院はネットの口コミで選ぶという習慣は常識になりつつありますが、「受付の感じが悪い」「看護師さんがとても優しかった」など、肝心の医療行為の質よりも、ホスピタリティがその病院に対する評価を大きく左右しているようです。メルマガ 『ジャーナリスティックなやさしい未来』の著者でジャーナリストの引地達也さんは、「病院は恐怖と無縁な場所でなければならない」とした上で、患者とのコミュニケーションの大切さについて持論を展開しています。

基本的なコミュニケーションの成り立ちについて

久しぶりに歯科医院に行く必要があって、近所の歯科医院をインターネットの検索で調べ、口コミの評判などを目にすると、受付の対応や歯科技工士のコミュニケーションに関する感想が目に付く。高評価もあれば、苦情にも似た酷いコメントもある。

病院選びはコミュニケーションに関する対応を中心としたサービスが重視されている世の中だ。

その数日前、支援者の立場で中規模の精神科医院の受付窓口近くの待合室にしばらく座っていたら、「受付の女性職員の話し方が怖い」と言って、他の職員を呼び長々とクレームを言い続ける風景に出会った。偶然にもそのやりとりを目の前で見て、私は女性職員の対応を「それはいけない」と直感的に思ってしまったから、女性患者の「怖い」との言い分はその通りだと思った。

この場合「怖がらせるつもりはない」と反論したくなるだろうが、コミュニケーションは相手の反応がすべてである。目の前の人と心から親和的な思いで接しているかと言えば、すべての人が完璧ではいられないだろう。だから女性職員にも同情してしまう。この女性職員は日ごろの癖と思われるが、顎が上に向き、目が笑っていないため、どこか見下したような印象になっていた。そこに女性患者が素朴な質問をし、女性職員が「当然のこと」のような目線で話したものだから、コミュニケーションのぶつかり合いが起こった。そしてこれは起こるべくして起こったぶつかり合いである。

他者が「怖い」という印象を持つには理由がある。多くは心根に関する思い込みや考え方の習慣に類するものが原因である。そこに気づかないまま、場面に対応しようとして表面を取り繕ってみても、原因部分が消えたわけではないから、やはり「怖さ」は出てしまう。治癒を求め、不安の中にいる患者が訪れる病院も、私がいる障がい者の支援施設も、等しく「怖さとは無縁の場所であるべきだから、それぞれ抜本的な改革が望まれる。

それは些細な受付の対応かもしれないが、これはその組織の体質を示すものであるから注意したい。大病院も経営が成り立たない時代である。医療事故を受けての事後対応と再発防止に取り組み姿勢を見せたとしても、抜本的に組織の体質を変えていくには、「変化」する意識では対応できず、「変容する気概がなければ変わらない。変わらなければ、市場や患者の心はつかめないであろう。

先日、患者を相手にする企業グループの新人研修でも患者との触れ合いで必要なのは、これまでの自分のコミュニケーション行為から社会に出て、しかも患者と触れ合う中にあって、自分を変容させることで、より質の高いコミュニケーションを求めていくことを促した。真剣な眼差しでワークショップに参加した新入社員に少し希望を見るような思いがした。

講義を受けた新入社員から先日手紙をもらった。「患者様から会った時から、あたたかい雰囲気だと言われて、学んだことの大切さを実感しました」という。私が特別なことを言っているわけではない。やはり意識付け、である。コミュニケーション行為にどう向き合い、考えて行動できるのか。これを日々重ねていければ、自然とコミュニケーションの達人になる。ただ、強調したのは順序を考えよう、ということ。つまり対人のコミュニケーション行為とは、1. 雰囲気をつくる、2. 聴く、3. 話す、4. 調和する、5. 創作する、の順で展開されるものであり、雰囲気も作らないまま、または聴かないまま、話そうとしてはいけない、ということ。自分の主張の正しさに酔ったり、効率性を求めて結論を急いでいしまう風潮がある中で、雰囲気をつくることは疎かになりがちだ。そして、雰囲気をつくることは、柔らかい空気を演出できることであり、これこそが共生社会におけるコミュニケーション行為の基本であるはずなのである。

image by: Shutterstock.com

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特別支援教育が必要な方への学びの場である「法定外シャローム大学」や就労移行支援事業所を舞台にしながら、社会にケアの概念を広めるメディアの再定義を目指す思いで、世の中をやさしい視点で描きます。誰もが気持よくなれるやさしいジャーナリスムを模索します。

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