人間心理を利用したビジネステクニックは数多く存在していますが、無料メルマガ『弁護士谷原誠の【仕事の流儀】』の著者で現役弁護士の谷原誠さんが今回紹介されているのは、「社会的証明の法則」というもの。相手を説得するのに効果てきめんだそうですが、一体どのようなワザなのでしょうか?
ある国の国税庁が使った心理法則
こんにちは。
弁護士の谷原誠です。
どこに国でも、税金を滞納する人がいます。各国の国税庁は、どうやって税金を回収するか、に苦心しています。
ある国の国税庁も、その例に漏れません。税金を滞納している人には督促状を送るのですが、ある年には、督促状を送ったところ、約57%の人が税金を払ったといいます。次の年、国税庁は、心理学の成果を取り入れて、ある文言を督促状に記載したそうです。すると、回収率は、前年の57%から、86%に跳ね上がった、といいます。
では、どのような文言を記載したのでしょうか? それは、「大多数の国民は、納期限までに税金を支払っている」という事実を記載しただけだ、というのです。これを読んだ滞納者は、「なんだ。みんな払っているのか。じゃあ、私も払わなきゃ」ということで納税したのでしょう。
これは、心理学的に、どういう原理が働いているのでしょうか。
心理学の法則の一つに「社会的証明の法則」というものがあります。私たちは、他の人達の言動に影響を受け、それに引きずられて考えや行動を決定します。
たとえば、見知らぬ土地に行き、おいしいラーメンが食べたくなったところ、隣り合わせに2軒のラーメン屋がありました。右のラーメン屋は、1人も客がいません。左のラーメン屋は、とても混雑しています。そんなとき、誰もが左のラーメン屋の方がおいしい、と考え、入店を考えるのではないでしょうか。
普段赤信号を渡らない人が、他のみんなが赤信号無視をしているのを見て、ついつい赤信号無視で渡ってしまうのを見たことがありませんか? これが、社会的証明の法則です。
この法則を使うと、説得が容易になります。
「御社の業種では、約87%が、このシステムをご利用中です。御社では、導入されない特別な理由がありますか?」など言われると、焦るでしょう。
嘘をついてはいけませんが、相手が属する種別の中で、多くの人が取っている行動を調べ、指摘することです。それが、相手の決断に影響を与えます。
逆にやってはいけないことは、相手に取って欲しくない行動を指摘することです。
学校で、校則違反が多いことに悩み、次のような掲示をするとします。
「先月は、77%の生徒が校則違反をしています。必ず校則を守るようにしましょう」
そうすると、生徒は、この掲示による社会的証明の法則に影響を受けます。「ああ、そうか。77%の生徒が違反しているんだ。じゃあ、自分も違反しても問題ないね」
社会的証明の法則は、どちらにも作用する、ということです。
普段の説得、ホームページ、会社のチラシなどを、この「社会的証明の法則」に照らして、今一度見直してみましょう。
今回は、ここまでです。
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