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ブームが去った小池氏と希望の党は、この先どうなるのか?

先の衆院選の「反自民票の受け皿」として颯爽と登場するも、小池代表の「排除の理論」がマスコミにより喧伝されるや急速にその勢いを失ってしまった希望の党。この先、同党にはどのような「茨の道」が待ち受けているのでしょうか。メルマガ『国家権力&メディア一刀両断』の著者で元全国紙社会部記者の新 恭さんが、衆院選希望の党当選者の顔ぶれからその未来を占います。

当選者の顔ぶれから見える希望の党の未来

開いた口がふさがらない。自民党は若手の要望だと猿芝居を打って、野党の質問時間を大幅に減らす工作をしている。「モリ・カケ」封じが狙いなのは明らかだ。姑息というか、悪辣というか。「安倍主義の体質がにじみ出ている。

謙虚に、真摯にと、見え透いたポーズをとって、かくも傲慢な政治姿勢を安倍政権が取り続けられるのも、希望の党の出現にともなう野党の分断が起こったからだろう。

民進党の地方組織はたしかに大変だ。不平不満、憤怒の声が湧き上がるのも、うなずける。だが、小池が悪い、前原に騙されたと悔しがっても、いまさらどうにもならない。

立憲民主党が誕生し、リベラルの中核になっていく可能性ができたことを前向きに評価して、民主主義を守っていくために必要な野党結集をめざすべきである。

さもなければ、小選挙区制度では、地盤、カバン、看板、学会票の自公勢力に太刀打ちできない。

自民党政権を倒すには、共産党とも選挙協力する度量が必要。そのように小沢一郎氏に諭されたにもかかわらず、前原誠司氏は小池新党の幻影に怯え、かつ憧れて、民進党ごと一体化する道を選びあえなく失敗したのだ。

この記事の目的は小池、前原批判ではない。希望の党とはいったいどのようなメカニズムで生まれ、現実の国会議員団はどんな顔ぶれなのか。それを仔細に検証することによって、希望の党の将来を展望してみたい。

振り返ってみよう。前原氏が合流話を持ちかけたとき、確かに、小池新党は難航していた。資金も組織もなく候補者の擁立に苦戦していた。

小池都知事と若狭勝衆院議員が国政政党をつくるための準備を始めたのは、7月の都議選が終わってからだった。若狭氏は「すでにこのころ、10月22日の総選挙を想定していた」という。

都議選に惨敗したうえ、同日に予定されていた3選挙区衆院補選に敗北すれば、安倍首相は退陣に追い込まれかねない。そんな事態を避けるため、解散を打ってくるのではないかという噂が永田町界隈を駆けめぐっていた。

だが、彼らの準備はPRビデオやHPの作成など「空中戦」のツールづくりに過ぎず、都議選の延長の「風頼み」でどこまで行けるかという「実験」のようなレベルであった。

新党づくりが本格化したのは、何人かの同志と一定の実績を有する細野豪志氏が8月8日に民進党を離党、若狭氏と接触し、小池氏もまじえて食事をともにしてからだ。政治経験の浅い若狭氏にとって候補者の擁立という仕事は荷が重かっただろう。

細野氏はBSフジの番組で当時をこう振り返った。

私は4月に憲法改正案の私案を出しました。しかし憲法や現実的な安全保障政策は民進党では進まない。だから党を出たんです。

「片思いかもしれませんが」と、若狭氏はそれ以前から細野氏に目をつけていたことを同番組で明かした。

9月の半ばまでは、若狭、細野両氏を中心に話が進んでいた。それを「リセットしたい」と、9月25日に、小池百合子氏が突然、「希望の党旗揚げと代表就任を宣言した。その間、水面下で、小池氏と前原氏が手を組むためのやりとりをしていたわけだが、それについて前原氏は10月27日の民進党両院議員総会でこう語った。

私は共産党などとの「野党共闘」と「小池新党への合流」という2つの選択肢を常に考えていた。小池氏と(候補者調整に入る前段の)話し合いを始めたのは9月17日くらいだ。

離党者がボロボロと出る状況で衆院選に突っ込んでいれば、悲惨な結果になっていた。一方、希望の党の支持率は十数%もあった。あの時点では、あの判断しかなかった。
(産経新聞より)

若狭氏と細野氏は、小池氏が会見する直前まで確かな情報を知らされていなかった

細野氏は言う。

前原さんが何か考えているという雰囲気は感じていた。政党が公認を出していて直前でチャラですよ。驚天動地です。前原さんはすごいと思った。

細野氏はともかく、都知事選以来あれほど小池氏との同盟関係を強調していた若狭氏が何も知らされていなかったのは驚くべきことだ。それだけ、小池氏は若狭氏を軽く見ていたということだろう。

衆院民進党まるごと合流がかなわなかったことについて、前原氏はこう釈明した。

公認候補の選定交渉で、私は約300の選挙区に民進党からの公認候補200人、希望の党から100人にすべきだと主張した。だが、希望側は半々を要求してきた。交渉の結果、1回目の190人の候補者のうち、110人が民進党出身者となった。

希望側は常に強気な交渉態度だった。特に東京や神奈川、千葉、大阪は「民進党候補でなくても勝てる」と迫られた。
(同)

持ち株がじりじり値を下げて損失が拡大しそうなとき、急騰を続けている株を見ると、そちらに乗り換えたくなる。だが、大量買いしたとたん、小池銘柄の株価は急落しはじめた

今後、どう歩んでいくのかさっぱり見当がつかないのが希望の党である。主要メンバーのほとんどが民進党出身者。ところが、この党の政策は、自民党にどっぷりつかっていた小池百合子氏の理念を基本としている。

母屋が民進党で、軒先の小池百合子という看板の効果が失せたとなれば、これはいったいどういう所へ落ち着くのか。

泥をかぶることを好まない小池百合子氏は希望の党の創業者という位置に、ひとまず逃げ込んだ。代表は名ばかり、国政とは距離を置き、都知事に専念するということのようだ。

排除します」の部分がメディアに増幅して伝えられ、衆院選惨敗につながる痛恨の発言となった。よほどその発言を引き出したフリージャーナリストに腹を立てているのだろう。選挙後もしつこく食い下がるその記者の質問を大人気なく無視し続けている。

それにしても、希望の党の国会議員は、喧嘩のタネになる家訓だけを残し、あとはお前たちでやれと親に去られた「迷える仔羊」のように見えなくもない。

希望の党の衆議院当選者リストに目を凝らす。安保や憲法に限ると、かつての民進党の対立の縮図を見ているようだ。

単純に考えれば、安保法制に賛成している人たちは小池氏がこだわる政策理念に同調し、喜んで希望の党の公認を受けたといえるだろう。

結党メンバーである細野豪志氏や後藤祐一氏をはじめ、小熊慎司、笠浩史、奥野総一郎、長島昭久、松原仁、渡辺周、古本伸一郎、岸本周平、津村啓介、吉良州司の各氏はあきらかにそのグループと思われる。また小池氏の一存で比例大阪ブロック1位の好待遇を受け、選対事務局長をつとめた樽床伸二氏が小池氏を全面的に支持していることは疑う余地がない。

ここに、少し前まで民進党代表として針のむしろに座っていた前原誠司氏が加わってくる。外交・防衛政策において、前原氏と小池氏、安倍自民党の理念はほとんど変わるところがないように思える。

だが、前原氏が希望の党のメンバーに温かく迎え入れられるかというと、甚だ疑問である。

さきの民進党代表選において前原氏の推薦人に名を連ね、希望の党から当選したのは渡辺周、牧義夫、小宮山泰子、古川元久、大島敦の各氏だが、渡辺周氏を除けば集団的自衛権の行使には反対しておりリベラル色が強いのだ。

ほかに希望の党の公認で当選したリベラル派の顔ぶれをあげてみよう。

山岡達丸、寺田学、田嶋要、井出庸生、大西健介、岡本充功、泉健太、山井和則、柚木道義、白石洋一、小川淳也、大串博志の各氏。これらの面々は明らかに憲法改正にも、安保法制にも反対である。

つまり「踏み絵」を踏まされ、変節ではないかと批判されて、支持者への説明に苦労した人たちだ。それだけに、10月25日の両院議員懇談会での小池代表に対する「恨み節はどぎつい表現となった。

柚木道義氏は「『血が流れる』ではなく、血しぶきが舞い散る選挙だった」と語り、小池氏の「排除の論理」によって逆風となったことを批判した。小川淳也氏や吉良州司氏は「仲間がこれだけ死んでいるのだから責任を取るべきだ」などと、露骨に代表を辞任するよう求めた。
(産経ニュース)

先に名をあげたように吉良氏は右派グループの一人だが、その人でさえ、小池氏に手厳しい。おそらく前原氏に対しても同じだろう。政治理念が似通っていても、人間関係が良好であるかどうかは別である。

少なくとも今や、小池前原両氏に求心力はなくなった。小池氏の人気が突然回復する奇跡の「小池劇場」の幕開きが全くないとは言えないが、都知事として現実の難題を数多く抱えており、これからはジリ貧に向かうと見るのが常識的だろう。

国会議員団の共同代表候補として名のあがっている玉木雄一郎氏は、集団的自衛権行使には反対しているが、憲法改正の議論を否定しておらず、左右両派がまとまりやすい人材には違いない。しかし、分裂含みの党だけに、下手をすると将来ある身に深手を負う。

このように見てくると、希望の党がすんなりまとまっていけるとは到底思えない。比例近畿ブロックの単独2位で当選した元防衛官僚、井上一徳氏への小池氏のエコヒイキも尾を引くだろう。

小池氏としては、日本新党時代から親しい樽床氏と、総理補佐官時代に仕えてくれた井上氏を国会議員団に加え、自分の周囲を固めるとともに、若狭氏、細野氏、後藤氏らを中心に党務にあたらせるつもりだったようだが、若狭氏があえなく落選したうえ、樽床、井上両氏に対する比例順位の優遇にも反発が強く、当面は都知事室に緊急避難したままの状況が続きそうだ。

この新党に「希望」を見つけるのは、かなり難しい。

image by: 小池百合子 - Home | Facebook

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