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楽天、その手があったか。遅すぎる携帯参入を挽回する秘策とは?

前回の記事でも紹介した通り「携帯電話事業への本格参入」を正式に発表した、楽天。NTTドコモ、au、ソフトバンクの大手3キャリアがすでに業界を牛耳っている状態での参入は、素人目からしても無謀に思えますが、メルマガ『石川温の「スマホ業界新聞」』の著者でスマホジャーナリストの石川温さんは、楽天がNTTドコモと提携しつつ「MVNO」を上手く活用すれば面白い展開になるかもしれないと、意外な可能性を示唆しています。

● 5年遅い。楽天の携帯参入が「約束された負け」と失笑される理由

楽天は6000億円でどうやって日本全国をカバーするのか━━SIMフリースマホの「あの機能」が楽天を救う

先週、世間は忘年会がピークを迎えたようだ。

そんななか、モバイル業界関係者が忘年会で集まり、真っ先にする話題と言えば「楽天はなぜいまさら携帯電話事業に参入するのか」という話だ。

業界関係者から見れば、すでに大手3社での顧客獲得合戦には終止符が打たれており、これ以上市場の成長は見込めないと言われている。大手3社が全国津々浦々にネットワークを張り巡らせているなか、楽天がイチから基地局を打って大手3社に対抗するのはあまりに無謀過ぎる。

楽天は2025年までに6000億円を設備投資すると語るが、その金額ではNTTドコモの1年分にしかならない。果たして、6000億円で全国にネットワークを整備できるものなのか。

基地局ベンダー関係者に「6000億円というのは妥当な金額なのか」と直接、聞いてみたところ「昔に比べれば、設備は小型化が進み、金額は安くなっている」という。しかし、「基地局の設備は安くなっているが、工事費などの人件費は昔も今も変わらない」と続ける。結果として、6000億円で全国を網羅するのは難しいのではないかという結論だ。

ただ、基地局ベンダー関係者は「投資額が少なくても、全国をカバーできる方法がある」という。

それは「MVNOとしてNTTドコモから借りているネットワークと、新規参入して構築するネットワークをネットワーク側で融合することも不可能ではないが、NTTドコモとの交渉や技術的なハードルもある。しかし、スマホのDSDSを使えばもっと簡単に2つのネットワークを融合できるのではないか」というのだ。

ここ最近、SIMフリースマホに増えたDSDS機能。Dual SIM Dual Standbyとして、2つのSIMカードに対応し、同時にネットワーク待ち受けできるものだ。

仮に楽天がキャリアとして参入した際、ユーザーにはDSDS対応のスマホを使ってもらい、片方にはMVNOである楽天モバイルとして提供しているSIMカードを挿し、もう片方には、新規参入のMNOとしてネットワークを提供しているSIMカードを挿す。

これにより、都心部など、楽天がキャリアとして提供しているエリアであれば、データ通信料を課金せず、郊外など楽天自身がネットワークを提供できないところはMVNOとして、NTTドコモのネットワークに接続し、従来通りにデータ通信容量が減っていくようにすればいい。

これであれば、楽天は都心部に集中してネットワークを構築して、目標の人口カバー率を達成すればいい。かつてのイー・モバイルがNTTドコモ網にローミングするというかたちをとったが、DSDSを活用すれば、ローミングといったこともしなくていいし、従来のMVNOのスキームをそのまま使えるメリットがある。

創業当初はユーザーも少ないことから「楽天の基地局につながればデータは使い放題」といった見せ方もできるだろう。

DSDS対応機種も今後増えることが予想されるだけに、この手法を使えば、案外、面白い展開になっていきそうな気がする。

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日経トレンディ編集記者として、ケータイやホテル、クルマ、ヒット商品を取材。2003年に独立後、ケータイ業界を中心に執筆活動を行う。日経新聞電子版にて「モバイルの達人」を連載中。日進月歩のケータイの世界だが、このメルマガ一誌に情報はすべて入っている。

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