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何か隠してないか。新幹線の「台車ヒビ割れ」事件で残る5つの謎

多くのネットユーザーから大反響があった前回掲載の「どうした新幹線。「のぞみ34号」の重大インシデントに残るナゾ」。この記事の著者でメルマガ『冷泉彰彦のプリンストン通信』を発行するアメリカ在住の作家・冷泉彰彦さんは、今回の新幹線の「台車ヒビ割れ事件」について、「まだいくつかの謎が解明されていない」として5つの謎を挙げ、事件の真相解明に挑んでいます。

● どうした新幹線。「のぞみ34号」の重大インシデントに残るナゾ

新幹線の台車故障事件、残る5つの謎

12月11日に発生した東海道・山陽新幹線のぞみ34号の台車ヒビ割れ事件ですが、謎は深まるばかりです。とりあえず現時点で残る疑問を提示しておこうと思います。

まず、博多を出て山陽区間で色々問題が発生し、岡山からは技術要員まで乗せて調査したというのに、新大阪でJR西日本からJR東海には問題なしで引き継いだというのは理解できません。東洋経済の大坂直樹氏が書いておられますが、運転の許可は東京の指令が下す中で、司令ではJR西で起きた異常事態をJR東海の職員に隠すのは不可能のはずだからです。

車内にモヤというJR西日本の発表が遅れたのも気になります。最初は異臭というだけだったのが、問題が発表されてから数日後に「モヤが出た」という発表が追加されているからです。車内にモヤというのは油漏れが深刻でギヤボックスが異常な状況になっているというのは、新幹線の歴史の中では何度も起きている事故であるだけに自明のはずです。どうして発表が遅れたのでしょうか?

もしかして、「異臭とモヤ」ということだと、「何度も起こしているギヤボックス破損事故」だという印象を与えるので、台車に注目が行くように発表を遅らせた」のでしょうか?

これが新型の「製造当初からN700A」として製造された車両なら、台車振動検知器でトラブルが分かったはずですが、この車両には装備していなかった(小生の一部解説記事に関しては訂正対応中です)わけです。そうではあるのですが、車軸の温度センサーはあったはずで、ギヤボックスから大量に油漏れしていたら異常温で引っかかるはずという疑問が残ります。

仮にJR西日本がJR東海に「全く正常」ということで車両を引き継いだとして、発表のように東海のクルーも異常を感じた後に、名古屋で台車を検査して問題がわかったわけです。ですが、その前の「岐阜羽島=名古屋間」あたりで、東海ご自慢の「通過車両の台車温度を赤外線で遠隔検知」するシステムが問題を発見しており、結果的にこの「遠隔検知システムが大きな惨事を未然に防いだということもあるのかもしれません。

一番大きな疑問は、台車ばかりが疑われていますが、何度も前科のあるギヤボックスの不良が発端という可能性、そして他の理由もあるのではという点です。何と言っても、台車と車軸の間には「軸バネ」が介在します。ですから、多少のショックはバネが吸収してしまうからです。

そう考えると、(1)台車が金属疲労で破断その歪みが車軸を曲げてギヤボックスを破壊、というストーリーと、(2)ギヤボックスが破損車軸固着に近い異常な状況にその異常な力が台車に行って破断、というストーリーのどちらが可能性としてあるのか、どうも良く分かりません。(2)の方が現実的に思えますが、そうなるとモーターの異常など電気的なエラーが起きていて、どう考えても司令や運転台には分かるはずです。

ですから、依然として私個人としては「何かが当たってギアボックスと台車が同時に壊れた」という説を捨てられないのです。いずれにしても、詳細の発表が待たれます。

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東京都生まれ。東京大学文学部卒業、コロンビア大学大学院卒。1993年より米国在住。メールマガジンJMM(村上龍編集長)に「FROM911、USAレポート」を寄稿。米国と日本を行き来する冷泉さんだからこその鋭い記事が人気のメルマガは第1~第4火曜日配信。

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