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佐世保で米国の原子力潜水艦が不気味な動き。過去最多に並ぶ寄港

アメリカ原子力潜水艦の米海軍佐世保基地への年間寄港回数が過去最高となっており、長崎県内でも大きく報道されています。この事態、一体何を表しているのでしょうか。軍事アナリストの小川和久さんが主宰するメルマガ『NEWSを疑え!』では、静岡県立大学グローバル地域センター特任助教の西恭之さんが、米原潜の佐世保寄港の増加が北朝鮮の弾道ミサイル発射の増加に対応したものか検討するための詳細な資料を紹介しています。

米原潜の佐世保寄港が増えている理由

米海軍の原潜は、日本では横須賀基地佐世保基地ホワイト・ビーチ地区沖縄県うるま市)の3か所に寄港している。原潜の入港数は、横須賀とホワイト・ビーチではとくに増えていないが、佐世保では2012年の12回、13年の11回、14年の9回、15年の14回から、16年は過去最多の24回に増え17年もすでに24回に上っている。

日本周辺で米海軍の攻撃型原潜が行動する一般的な理由は、

  1. 作戦行動が予想される海域に慣れる
  2. 北朝鮮その他の国に接近して通信を傍受する
  3. トマホーク巡航ミサイルによる対地攻撃能力を各国に示す
  4. 甲板にドライデッキ・シェルターを載せている場合、特殊部隊(SEALs)投入能力を示す

ことが考えられる。

米軍は、北朝鮮が弾道ミサイルを試射したとき、ミサイルが発する遠隔測定テレメトリー用の電波などを傍受するため、攻撃型原潜を派遣している可能性がある。弾道ミサイルの飛行と、関連する電波に対する、米軍のもっとも優れた観測手段は、RC-135Sコブラボール電子情報収集機と、ミサイル追跡艦「インヴィンシブル」「ハワード・O・ローレンツェン」だが、数が限られているからだ。

金正恩時代の北朝鮮の弾道ミサイル発射は、2012年の2回、13年の6回、14年の19回、15年の15回から、16年は過去最多の24回に増え17年もすでに20回に上っている。

米原潜の佐世保寄港の増加が、北朝鮮の弾道ミサイル発射の増加に対応したものか検討するため、2017年に佐世保に寄港した原潜のリストを、長崎新聞の後藤洋平記者からいただき、北朝鮮の弾道ミサイル発射を加筆した。「ミシシッピ」はバージニア級、他の7隻はロサンゼルス級の攻撃原潜である。

2~3月の「アレキサンドリア」、4月の「シャイアン」、5月の「オリンピア」「サンタフェ」、7月の「シャイアン」「オリンピア」、11月の「ミシシッピ」「トピーカ」は、北朝鮮の弾道ミサイル発射に備えて佐世保に寄港した可能性がある。北朝鮮の弾道ミサイルの試射が増え、射程が延び、成功率が上がるとともに、原潜を含め、それを監視する艦船が佐世保に入港する回数も増えるはずだ。 (静岡県立大学グローバル地域センター特任助教・西恭之)

2017年に佐世保基地に入港した米海軍の原潜と、北朝鮮の弾道ミサイル発射

1月9日 パサデナ

1月12日 パサデナ
1月15日 ルイビル

2月11日 準中距離弾道ミサイル(MRBM)北極星2号、西海岸から50キロ以上内陸の平安北道亀城《クソン》市から日本海への試射に成功

2月14日 アレキサンドリア

2月15日 アレキサンドリア
2月19日 アレキサンドリア
2月28日 アレキサンドリア

3月6日 MRBMスカッドER、西海岸の平安北道鉄山《チョルサン》郡東倉里《トンチャンリ》で発射した5発のうち4発が日本海への試射に成功

3月18日 アレキサンドリア

3月22日 種類不明のミサイル、東海岸の元山《ウォンサン》空港で発射直後に爆発
4月5日 中距離弾道ミサイル(IRBM)火星12、東海岸の咸鏡南道新浦《シンポ》市で発射、60キロ飛行、制御に失敗して指令により破壊
4月16日 火星12、新浦市で発射数秒後に爆発

4月17日 シャイアン

4月18日 シャイアン
4月21日 シャイアン

4月29日 火星12、西海岸から50キロ以上内陸の平安南道北倉《プクチャン》郡の飛行場で発射、約50キロ離れた陸上に落下

5月2日 シャイアン

5月14日 火星12、亀城市から日本海上空の高高度への試射に成功
5月21日 北極星2号、平安南道北倉郡ヨンプン湖付近から日本海への試射に成功

5月23日 オリンピア

 

5月26日 オリンピア
5月26日 サンタフェ

 

5月29日 機動再突入体を搭載した短距離弾道ミサイル(SRBM)スカッドC、元山空港から日本海への試射に成功

5月29日 サンタフェ
5月30日 サンタフェ

7月4日 大陸間弾道ミサイル(ICBM)火星14、亀城市芳《パンヒョン》飛行場から日本海上空の高高度への試射に成功

7月11日 シャイアン
7月18日 オリンピア

7月28日 火星14、内陸部の慈江道前川《チョンチョン》郡舞坪里《ムピョンリ》から日本海上空の高高度への試射に成功
8月26日 SRBMまたはロケット弾3発を江原道から日本海へ発射、2発は約250キロ飛行
8月29日 火星12、平壌順安《ピョンヤン・スナン》国際空港から太平洋への試射に成功
9月3日 (第6回核実験)
9月15日 火星12、平壌順安国際空港から太平洋への試射に成功

11月17日 ミシシッピ

11月20日 ミシシッピ
11月27日 トピーカ

11月28日 ICBM火星15、平壌の約35キロ北東北の平安南道平城《ピョンソン》市から日本海上空の高高度への試射に成功

12月12日 ミシシッピ
12月14日 ミシシッピ

※『NEWSを疑え!』(2017年12月21日特別号)より一部抜粋

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地方新聞記者、週刊誌記者などを経て、日本初の軍事アナリストとして独立。国家安全保障に関する官邸機能強化会議議員、、内閣官房危機管理研究会主査などを歴任。一流ビジネスマンとして世界を相手に勝とうとすれば、メルマガが扱っている分野は外せない。

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【著者】 小川和久 【月額】 初月無料!月額999円(税込) 【発行周期】 毎週 月・木曜日発行予定

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