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清水寺の謎。なぜ「清水の舞台」は崖にせり出して造られたのか

京都の観光名所として誰もが思い浮かべるのが、清水寺。京の都を訪れる人の5人に1人が参拝するこの名刹、実は現在改修工事中とのことなんですが…、今回の無料メルマガ『おもしろい京都案内』では著者の英学(はなぶさ がく)さんが、改修中だからこそ味わえる「贅沢」をはじめ、清水寺のおもしろ雑学や見どころを紹介しています。

清水寺(平成の大改修中)

京都の観光名所の代表といえば「清水寺」ですよね。なんと年間1,000万人以上が訪れる一大観光地です。金閣寺と銀閣寺が500~600万人と言われているので圧倒的な人気です。京都の年間の観光客数が5,500万人以上なので、京都を訪れる人の5人に1人ぐらいは清水寺を参拝するといった感じです。

そんな大人気の清水寺ですが、しばらくはがっかりしてしまうかもしれない事が起きてます。ご存知の方もいらっしゃると思いますが、昨年から改修工事に入ってしまいました。そのため清水の舞台には足場が組まれ、本堂には覆いが被せられてしまっています。

実は清水寺の工事は2008年から始まっていたそうです。少しずつ色々な場所を改修しているのです。一昨年は三重塔などの修復が終わり、昨年の2月頃から清水寺の本堂の修復工事が始まったのです。なのでしばらくはあの京都を代表するお馴染みの風景を見ることが出来ません。

しかし実際にずっと見られないというわけではありません。工事は檜皮葺の屋根を葺き替えをし、舞台の損傷などを補修する計画で、2021年頃に新しい姿がお披露目される予定です。現在は仮屋根を設置しているので、すっぽりと清水寺の本堂は覆われてしまっています。

しかし、せっかく参拝した人が舞台を見て味気ないものと思ってしまうので、透明のシートで中の様子が分かるようになっています。こうすることで、普段見ることのできない貴重な内部構造などを見ることが出来るわけです。前回清水寺の本堂の改修工事が行われたのは50年前です。次の改修工事の際に中の構造などが見られる機会があるのか分かりません。清水の舞台の写真が撮れなくても、この内部の様子を写真におさめるのもまた一興かも知れません。改修工事が終わったら価値のある拝観になっているのではないでしょうか?

現在の清水寺の本堂は1633年に徳川家光によって再建されたものです。どうしてあのような崖にせり出したような舞台が造られたのでしょう?

清水寺の創建は778年の奈良時代まで遡ります。まだ京都に都が移っていなかった頃のことです。延鎮(えんちん)という僧が小さなお堂を建てだことが清水寺の始まりです。その小さなお堂を後に大改修をしたのが、坂上田村麻呂です。初代征夷大将軍に任命された人物ですね。

実は清水寺の敷地は彼の家の敷地だったとも伝わっています。田村麻呂がある日、現在の清水寺の近くで鹿狩りをしている時に延鎮と出会います。延鎮は彼が鹿を殺める事を察し、説法をしました。田村麻呂は延鎮の説法を聞きこの地にあった自宅を寄進してお寺の本堂したといいます。そして彼は本堂を大改修して現在のような形になっていったそうです。

では清水寺の舞台はなぜ、何の為に造られたのでしょうか? それは清水寺があの場所に建っていたということに由来します。

清水寺の本尊は千手観音です。千手観音がもともといらっしゃる場所は補陀落ふだらくという場所です。補陀落はインドの南にある島で、そこには八角形の険しい山がそびえ立っていると言われています。

日本では、修験道のような険しい山岳で修行することで悟るという「山岳信仰」というものがありました。なので、険しい崖や山々などがインドの南にあるという補陀落と同一視されるようになったのです。千手観音を本尊とするお堂を建てるためには、補陀落の地形に見立てたかのような場所が必要だったわけです。

崖のギリギリな地形の場所にお堂や本堂を建てるインドの補陀落にならって、清水寺も当時崖ギリギリに建立されたのです。清水寺はやがて本堂ではおさまりきらないほど参拝客が来る有名なお寺になりました。そこで改装をする必要が出てきました。

元々本堂が崖のギリギリに建っているため、増築する場所がありません。そこで、崖にせり出した舞台のように本堂を増築するという方法がとられたのです。これを「懸造り(かけづくり)」といいます。清水の舞台を支える独特な建築様式です。

懸造りは清水寺だけでなく、山岳信仰を持つお寺などに見ることが出来ます。狸谷不動尊や、峰定寺などでも、懸造りを見ることが出来ます。崖ギリギリに建ったお寺が増築などをする際にはこの懸造りが用いられるのです。清水の舞台は、無理矢理増築した結果だったのです。

最後に、清水寺の仁王門をくぐる前に狛犬の口を注意して見てみて下さい。仁王門前の狛犬は左右2匹とも口を開けて「阿阿」になっています。

一般的に狛犬は一方が口を開けた阿形(あぎょう)、もう一方が口を閉じた吽形(うんぎょう)になっています。「阿」は万物の始まりを意味し、「吽(ん)」は万物の終わりを意味しています。ではなぜ清水寺の狛犬は2匹共口を開けているのでしょうか? これはお釈迦様の教えを世に大声で知らしめる為なんだそうですよ。

いかがでしたか? 京都は日本人の知識と教養の宝庫です。これからもそのほんの一部でも皆さまにお伝え出来ればと思っています。

image by: 清水寺 – ホーム | Facebook

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毎年5,000万人以上の観光客が訪れる京都の魅力を紹介。特にガイドブックには載っていない京都の意外な素顔、魅力を発信しています。京都検定合格を目指している方、京都ファン必見! 京都人も知らない京都の魅力を沢山お伝えしていきます。

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【著者】 英学(はなぶさ がく) 【発行周期】 ほぼ週刊

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