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業界がざわついた「ZOZOスーツ」、アパレル以外にも常識を覆す可能性

昨年11月から話題を呼んでいる採寸ボディスーツ「ZOZOスーツ」は、あまりにも多くの予約が殺到し、年が明けて2月となった今もまだ手元に届いていない人が多いようです。今回のメルマガ『j-fashion journal』では、著者でファッションビジネスコンサルタントの坂口昌章さんが、ボディサイズデータを簡単に集められる「ZOZOスーツ」に秘められた新しいビジネスの可能性について探ります。

今後、ZOZOスーツがもたらすもの

1.採寸ボディスーツ「ZOZOスーツ」

ゾゾタウンは昨年11月、画期的PBの発表を告知していた。どんな製品が出てくるのかと楽しみにしていたのだが、発表されたのは通常のアパレル製品ではなかった。

まさに画期的なZOZOスーツだったのだ。

ZOZOスーツは、伸縮センサーを内蔵した採寸ボディスーツであり、上下セットを着用し、スマホをかざすだけでデータが読み取れる。

そのハイテク入力端末を無料配布したのである。

一気にシェアを高め、人間のボディに関するデータを独占的に収集し、ボディをネットにつなぐ。ボディIotビジネスの独占を狙っているのかと思わせる大胆な戦略であり、投資である。

これによって、今後のネット販売のインフラの一つを掌握することになるだろう。他のアパレル企業がネット販売する時に、ZOZOスーツが収集した採寸データを入手することができれば、様々なサービスが可能になる。

プラットホームの提供データの提供ができるのは、ゾゾタウンだけになるのだ。

インターネットで服を購入する際、最も問題になるのはサイズである。画像だけではサイズは分からないし、サイズ表記は同じでも、メーカーやブランドによって製品のサイズが異なる。

消費者はジャストサイズの服が簡単に探せるのなら、自分のサイズをクラウドに上げることに躊躇しないだろうし、無料なら尚更だ。

事実、注文が殺到している。

2.ボディサイズデータのビジネス

日本中の詳細なサイズデータを個人別に集めることで何ができるだろう。

第一に、保険会社はメタボの人をチェックできる。メタボの人の保険料を調整することもできるだろう。

また、急激な体型の変化により、疾病を予測することもできるかもしれない。

第二に、病院や医薬品、サプリメント業界のビジネスにもつながる。週に一度、ZOZOスーツを着用すれば体型の変化がわかるし、心拍計、運動量計、血圧計等の機能を持つスマートウォッチと併用すれば、かなりの身体的データが収集できる。そのデータを病院や医薬品業界が活用できれば、健康に関する様々なアドバイス等を行うことができるだろう。

第三に、ダイエット関連、トレーニングジム、エステサロン等の業界の活用も考えられる。こちらは、データを美的な観点から活用する。

第四に、人間工学的分析によるバス&トイレ関連、家具、キッチン、ベッド、寝装品関係の業界への活用も考えられる。

第五に、高齢者のデータだけを集めれば、介護福祉関連の業界でのデータ活用も可能だろう。

以上のように、アパレル製品の活用だけでなく、様々な分野でプラットホーム活用データ活用が考えられるのである。

3.身体にフィットしたオーダーメイド

アパレルの分野で、最も採寸データが必要になるのは、オーダーメイドの「ライダー用革つなぎ」「ウェットスーツ」だろう。また、オーダーメイドの「ウェディングドレス」「フォーマルドレス」「ダンス衣装」にも適している。

メンズのパターンオーダー、イージーオーダーにも役立つだろう。

メジャーによる採寸はボディの的確なポイントを判断し、その間の寸法を的確な方法で計らなければならない。熟練の技術が必要である。

ZOZOスーツを着用すれば、簡単に採寸ができるので、ネット上のオーダーメイドが容易になるだろう。

4.イレギュラーサイズ市場への対応

日本のアパレル市場でイレギュラーサイズが広がらないのは、一つの原因はイレギュラーサイズの顧客を把握できないことだ。もし、大型サイズの顧客名簿と寸法データが入手できれば、イレギュラーサイズの製品を作ることは怖くない

もちろん、小柄な人も同様だし、最近話題になっている胸の大きな女性のための服も作れるようになるだろう。

5.ハイテクなオートクチュール

オートクチュールのメゾンでは、全ての顧客のオリジナルボディを作り、それに合わせて裁断する。シルクドソレイユの衣装も同様だ。

現在のボディースーツに加え、計測ハイソックス計測キャップがあれば、帽子と靴の寸法も取れる

現在のパターンCADには、システム内で仮想ボディを作り、それに合わせて、パターンメーキングしたり、既存のパターンをグレーディングすることができる。簡単なものならば、自動化も可能だ。

足の3DデータからCADでパターンを作れば、木型なしに靴やブーツがオーダーメイドできる。

ZOZOスーツがハイテクのオートクチュールという新たな業態を創造するかもしれない。

私は、既存の既製服というジャンルでは、ZOZOスーツのデータは意外に活用しにくいと思っている。サイズデータを収集しても、サイズ展開を増やすことは在庫増につながる。

在庫を持たずに、サイズデータを生かすなら、オーダーメイドを基本に考えた方が良いのだ。

その意味で、ZOZOスーツは新たなファッションビジネスの扉を開いてくれるのではないか、と期待している。

image by: ZOZOTOWN公式ページ

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