単なる「モノ」を売れる「商品」に変えるマーケティング戦略

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誰もが知っているシャンプー「ヴィダルサスーン」と「パンテーン」と「ラックス」の違いって何だと思いますか? この質問にどう答えるかによって、あなたの「マーケティング力」が測れてしまうかもしれません。 P&G時代に「SK-II」「ヴィダルサスーン」などのブランドマネジメントを担当した、メルマガ『銀行とP&Gとライブドアとラムチョップ』の著者・高岳史典さんは自身のメルマガで、実際に関わったP&G時代の商品ブランドを例に、現場でどのように商品イメージを作ってきたのか、そのマーケティング手法を数回に分けて公開しています。

高岳史典(たかおか・ふみのり)氏プロフィール

・1991年、京都大学経済学部卒

・日本興業銀行にて金融商品開発に従事後、退職

・ P&Gでマーケティングの世界へ。SK-II、ヴィダルサスーン、マックスファクターなどのブランドマネジメントを担当

・コンサルティング会社を経てライブドアへ。 CMOとして営業・マーケティング全般を統括

・ 2013年、飲食業界で起業。ワインバル「ULTRACHOP」など3年間で5店舗を展開。「マーケティング」は飲食の個別店舗でも通用するか身をもって実験中

「ヴィダルサスーン」と「パンテーン」は何が違うのか? P&Gに学ぶマーケティング戦略

皆さんは「コンセプト」という言葉を聞いて何を思い浮かべますか

アイデア? 世界観? メッセージ?

Amazonで書籍に絞って検索すると「コンセプト」と名のつくものだけで、およそ1000冊もあります。

ザッとみると、それぞれ定義はバラバラ。中には「定義すらしていない」ものも。

これだけビジネスの場面で使われている言葉なのに、いざ定義となると曖昧な言葉って意外と多いですよね。

「ブランド」とか「ストラテジー(戦略)」とか、下手すると「マーケティング」ですらも。

僕がいたP&Gでは、同じ言葉は誰にとっても同じ定義同じ意味を指していました。

「コンセプト」で言うと、

素の形で存在するモノマーケティングできる商品に変えること

これがP&Gにおけるコンセプト」です。どういうことかと言うと、

モノコンセプト商品

ということです。つまり、

シャンプー」+「ヘアスタイルが決まる髪」=「ヴィダルサスーン

シャンプー」+「健康で輝く髪」=「パンテーン

シャンプー」+「リッチで艶のある髪」=「ラックス

こうやって、具体的な商品名を出してみると分かりやすいですよね。

モノとしてのシャンプーは、もちろん処方の違いはあれど、基本的にはどれも「髪を洗浄してダメージから守る液体です。

そこに「コンセプトを加えることで、マーケティングできる(すなわち、商売の対象となる)「商品にするわけです。

コンセプトを定義する「3つの要素」とは?

さて、この「コンセプト」、上のシャンプーの例では簡易的にワンフレーズで示しましたが、より定義的にいうと次の3つの要素から成っています。

Target(ターゲット): 誰に向けてか?

Benefit(顧客の利益): 約束する便益は?

Reason(根拠): 便益を約束できる理由は?

僕が担当した、「ヴィダルサスーン」というシャンプーを全国発売したときの例でいえば、

Target(ターゲット): 髪をファッションとして楽しむ女性

Benefit(顧客の利益): ヘアスタイルが自在に決まるよう髪のコンディションを保つ

Reason(根拠): 世界的なヘアファッションの権威である、ヴィダル・サスーン氏が開発したから

となります。

※補足P&GのOBの方が見たら、Reason(根拠)のところがP&Gっぽくないと思われるかもしれません。通常であれば、ここにはもっとタンジブル(実体感)な要素(例えばパンテーンでいう「プロビタミン」など)が盛り込まれるからです。でも当時は本当にこれだったんです、逆にいかにも「ヴィダルサスーン」っぽくないですか(笑)。

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P&Gは、どんな「商品開発サイクル」を回し続けているのか?

では、P&Gの中の人たちは日々どのように「商品」開発をおこなっているか分かりますか?

結論から言ってしまうと、

膨大なデータの分析 → 仮説の立案 → 「コンセプト」への落とし込み → テストリサーチ → 分析

というサイクルの繰り返しなんです。

このプロセスに近道は無し、とにかく地道に、泥臭く、このサイクルをぐるぐる回し続けるだけです。

そして、この「ぐるぐるから抜け出すたった一つの方法があります。

それは、テストリサーチで基準以上のスコアを出すこと

この「基準を超える」ということが、P&Gの過去の膨大なデータベースから勘案して、市場での成功率を高めることになるからです(それでも失敗するときはするからマーケティングは難しい!)。

Target(ターゲット)の選択肢は無数にあり、それと掛け合わせるBenefit(顧客の利益)の選択肢も無数にある。

その中で、より筋の良い仮説を立てて、最も可能性のある「コンセプト」に落とし込めることが出来るかどうか。

何枚も、何枚も「コンセプト」ばかり書いていたP&G時代が懐かしく、いま思い出してもしんどくなります……。

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なぜ「コンセプト」なしで「モノ」だけを売っても、商売が成り立たないのか?

さて、P&G時代をあらためて振り返りながら、「なぜコンセプトは必要なのか?」ということについて考えてみます。

先ほど、

モノコンセプト商品

と言いました。

では、なぜ「モノのまま売ってはいけないのか

別に構いません。

でも、それはビジネスとして成功する確率が大きく下がるからです。

先ほどのシャンプーの例でいえば、

すべての人に洗浄力があって髪を痛めないシャンプーを売る

ということになりますね。

この場合、なぜビジネスで成功する確率が下がってしまうのか

もうお分かりだと思いますが、おおよそ現代に売られているシャンプーである以上、

洗浄力があって髪を痛めないのは当たり前だから

です。

こういった便益のことを「カテゴリー便益」といいます。

すなわち、シャンプーという商品カテゴリーである以上当たり前の便益というわけです。

当たり前」ということは、逆にいえば、どのシャンプーにも備わっているということであり、そこでは差別化できない(すなわち、マーケティングできない)ということになります。

もちろん、洗浄力は洗浄力でも「凄まじい洗浄力」という感じに差別化することは可能かもしれません。

でも、それはそれで、

  • 誰がそんな「凄まじい洗浄力」を欲しがっているのか
  • 「凄まじい洗浄力」とは具体的に髪がどうなることなのか
  • なぜ、そんな「凄まじさ」を謳えるのか

と、結局コンセプトに落とし込まなければならない、ということになります。

そしてP&Gくらいの大企業ともなれば当然、他の「コンセプト」と比べてテストリサーチで優位な結果を得なければなりません。

このように、「コンセプトをつくり練り上げることは、ビジネスの構築において極めて重要な要素となるわけです。

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P&G流「コンセプトの定義」で、ビジネスはもっともっと輝く

さて、冒頭でもお話しした、一般的なマーケティング業界の「コンセプトの定義について話を戻しますと、残念ながらその定義は往々にしてボンヤリしており、「カテゴリー便益」に世界観をくっつけただけのような説も散見されるのが現実です。

このように、定義づけが曖昧模糊な状態で作られた「コンセプト」が、どれだけ現在のビジネスシーンで貢献できているのかといえば、どうしても疑問符がつきます。

もちろん、今回ご紹介したようなP&Gで使われているフレームワークが「万能だ」とは私自身も、まったく思っていません。

ただ、このP&G流のコンセプトの定義は、いろいろな商売に応用可能だと思うのです。

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image by: shutterstock.com

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img_150x150バブル末期の日本興業銀行、日本事業を飛躍させていたP&G、事件以降の混乱から再生へ向かうライブドア、そしていきなり飲食業界での起業。期せずして得た脈絡のないキャリアは、驚きと学びと挑戦の連続でした。今回はじめて、メルマガという形で「ここだけの話」を記していきます!

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