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金正恩よ、これがディールだ。微笑むトランプが突きつけた無慈悲

合意文書にCVIDの文言もなく具体性を欠くと批判的な見方もされた6月12日の米朝会談のその後、米国が北朝鮮に対して「非核化タイムテーブルの数週間以内の提出」を要請したことが明らかになりました。果たして実現するのでしょうか。無料メルマガ『ロシア政治経済ジャーナル』の著者で国際関係ジャーナリストの北野幸伯さんは、「いずれにせよ金正恩の狙いは経済制裁解除だけ、米国をだまそうとしたことがばれるのは時間の問題」との見方を示しています。

北朝鮮非核化が、【具体的】になってきた

6月12日の米朝首脳会談ですが、「共同声明にCVIDの文字がない!」「具体的でない!」「タイムテーブルがない!」などと、批判されています。それで、「大失敗だ!」「大失敗だ!」と非難されている。

一方、RPEは、「CVIDだろうが、『完全な非核化』だろうが、金がウソをつこうと思えばつける。大事なのは、非核化がなるまで制裁を解除しないことだ」「具体的なタイムテーブルづくりは、トランプの仕事ではない。トランプの役割は、『ディールの中身』を決めることだ」と主張し、「会談は大成功だった!」と書いてきました。

そして、「米朝首脳会談は大成功だった」ことの証拠というか、「非核化の具体的な工程表づくり」がはじまっています。

核計画全容「数週間内に申告を」、米が北に要求

6/17(日)20:08配信

 

米朝首脳会談で合意した北朝鮮の「完全な非核化」を巡り、米政府が北朝鮮に、核計画の全容を数週間以内に申告するよう求めていることが16日、わかった。米政府関係筋が読売新聞に明らかにした。ポンペオ米国務長官は、早ければ今週中にも行う予定の北朝鮮高官との協議の場で早期の申告を改めて迫る方針だ。

アメリカは、北朝鮮に、「数週間以内に非核化のタイムテーブルを出せ!」と要求している。北朝鮮の反応はどうなのでしょうか?

米政府関係筋は、今回の要求には「北朝鮮が非核化に迅速に取り組むつもりがあるかどうかを見極める判断材料とする狙いもある」としている。要求への北朝鮮の対応は明らかでない。
(同上)

「明らかでない」ですが、金正恩はトランプに約束した。出さないとウソつきであることを証明することになります。トランプは、「米韓軍事演習の中止」にむけて動き出し、「核戦争は嫌だから、人権問題で批判しない」といっている。つまり、トランプは、あらかじめ北朝鮮が言い訳できない状態に追いこんでいる

そして、金は、「工程表を出す前に、制裁を緩めてくれ!」とはいえません。トランプは、そんな約束していませんから。唯一できるのは、アメリカが約束した「体制保証の具体的なタイムテーブルを出せ!」と主張することでしょう。これを北が要求するのは当然ですね。

北朝鮮による核計画の全容申告は、「完全かつ検証可能で不可逆的な非核化」に向けた大前提となるもので、トランプ米政権は申告を受け、核施設や核物質の検証を含む工程表をまとめる。「2年半以内」(ポンペオ氏)の期限も設け、北朝鮮の非核化プロセスを進めていく考えだ。

「2年半以内」という具体的な期限もでてきました。

ここまでの話、もちろん「必ずうまくいく」という話ではありません。ただ、トランプと金が、「北は完全な非核化をし、アメリカは体制保証する」と合意したことで、話が次に進んでいるのです。そして、金が約束したので、彼がウソをついているか検証できます。

A君が、Bさんに「結婚しよう!」といった。その後A君は、「やっぱりやめた」といった。Bさんは、A君に、「あなたはウソをついた!」と主張できます。しかし、A君はBさんに、「結婚しよう!」とはいっていない。デートはしたけど、「結婚しよう」とはいっていない。Bさんは、A君に「あなたはウソをついた!」と主張できません。A君は驚いて、「そもそもなんも約束してねえし」と開き直ることでしょう。

今回の話も同じです。トランプと金は、「北は非核化しアメリカは体制保証する」と約束した。これは、「結婚しよう」と約束したのと同じです。その後は何をしますか? 「日取りどうする?」となるでしょう。

米朝首脳会談に「成果なし」という人は、「A君は、『完全に結婚する!』とはいったが、『完全かつ検証可能で不可逆的な結婚』をするとはいってない!」「A君は、『完全に結婚する!』と約束したが、『結婚式の日取り』を明らかにしなかった!」と批判しているのと同じです。その前に、そもそも「私たちは結婚します」という約束を交わすのが大事でしょう? それが決まれば、「では日取りを」となります。

さて、金正恩は、非核化に応じるのでしょうか? まだわかりません。わかりませんが、少なくとも彼が「ウソつきかどうか」を検証する基準は設定されました。「非核化しても成功」「北が非核化を拒否しても成功」です。

北は、94年と05年の成功、つまり「非核化の約束をし、制裁を解除させ、経済支援を受け取り、でも核兵器は保有しつづける」でいきたかった(94年には、まだ核兵器はなかったが)。しかし、用心深い安倍総理やボルトンさんのアドバイスのおかげで、金は追いつめられてきているのです。

 

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【著者】 北野幸伯 【発行周期】 不定期

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