「人生100年時代」と言われる今、書店をのぞけば豊かな老後を手に入れるためのハウツー本等が数多く並んでいます。事実、何をどのように「準備」すればいいのでしょうか。中部大学教授で老後に関する著作もある武田邦彦先生は自身のメルマガ『武田邦彦メールマガジン「テレビが伝えない真実」』で、「準備開始は早ければ早いほどいい」とした上で、50歳からの第二の人生を楽しく過ごすために必要な「4つのポイント」を紹介しています。
プロフィール:武田邦彦(たけだ・くにひこ)
中部大学教授。東京大学卒業後、旭化成に入社。同社にてウラン濃縮研究所長を勤め、芝浦工業大学工学部教授を経て現職に就任。現在、テレビ出演等で活躍。
50歳からの「第二の人生50年」を幸福に生きるための準備
筆者が年金、再就職、高齢者の健康などの話をしますと、決まって「それじゃ、もう間に合わない」と言われます。特に男性に多いのですが、自分が50歳を超えないと、50歳からの人生を考えないという人がほとんどです。でも0歳から50歳までの第一の人生を計画的に進めることができるのは、0歳から20歳まで20年間もの「準備期間」があるからで、もし生まれてすぐ就職しなければならないということになると、失敗が続くでしょう。
あまりにも当然ですが、50歳からの人生は50歳になるまでに準備をしておかないと間に合わないのに、50歳を超えないと「自分のことじゃないから」と関心を示さないことにあります。だから、多くの人が50歳を超えてから高齢期に関心を持ち、それから準備しても間に合わないという羽目に陥るのです。さらに言えば、60歳ぐらいで筆者の本(たとえば『老人のウソ』)を読んで絶望するという人もおられます。
そこで、今回は若い時から準備をしておけば、第二の人生の50年を幸福に生きることができる方法を整理してみたいと思います。
第二の人生を楽しく過ごすためには、
- お金
- 人間関係
- 健康
- 学力
の4つでしょう。紙面の都合もありますので、一つ一つを詳細に説明できない
ので、やや断定的に書いていきます。
若い時の貯蓄100万円が40年後に14万円の価値に
第二の人生のためのお金は、「現金」ではありません。日本はデフレが続いていますが、100年の人生を考えると、お金の価値は下がっていきます。経済学者が言う「円の価値」は「円」のみの価値を言っていますが、かつてラジオを聞いていたのに、白黒テレビになり、さらにカラーテレビになるように、どうしても生活はより豊かになりますから、「人間が感じるインフレ率」が大切です。
筆者がかつて計算した時には、仮に円の価値が同じでも、実質的に他人と同じ暮らしをするには、年率3.1%は持っているお金が増える必要があります。そうすると、今、自分が持っている100万円は20年で54万円に、40年で29万円になります。つまり30歳の時に100万円を持っていても、50歳で54万円、70歳で29万円になってしまいますから、「若い時の貯金は第二の人生では役に立たない」ということです。そして今、インフレ政策をとっていますから仮に政府の言う2%のインフレが続いたら、100万円は40年で14万円になりますので、まったく役に立ちません。
そこで自分が稼いだものをできるだけ早く、土地と株に変えておく必要があります。土地はだれでもその価値が変わらないか上がると思っていますが、株は「会社の価値」ですし、会社は定年の人が辞めて新人が入ってくるので、「年を取らない自分」のようなものです。それもできるだけ特定の会社の株を買うのではなく、日経平均にスライドするファンドのようなものを持つことです。
そして、現金は40歳になってから貯蓄を始めて、一気に60歳までの20年間で蓄積します。そうすると、若い時に買ったファンドや土地があり、40歳からの貯金と合わせて「楽な老後」を暮らすことができます。
次に、人間関係ですが、これは家族にしても、友人、知人、仕事の関係者のいずれも「恩を貯金する」(貯恩)がベストです。よく「ギブ&テイク」と言いますが、人間は「こちらが何かをしてあげる(ギブ)」のがまず最初で、それに対して相手が自分にしてくれる(テイク)になります。だから、元気で力のある第一の人生の時に、家庭を大切にして家族に愛情を注ぎ、友人知人を大切にしてなんでも骨を折り、社会に対して献身すると、第二の人生では多くの人が自分に「恩」を返してくれます。
それにはまず「ありがとう」の精神であり、次に「自分がやります」ということでしょう。人間は一人では生きていくことができません。お金よりなにより大切なのは自分を愛してくれる他人であり、なぜ自分を愛してくれるかというと、かつて自分が愛したからなのです。
第三は健康ですが、第一の人生では健康と運動はそれほど関係がありません。むしろ運動と健康が関係するのは第二の人生からで、50歳を過ぎてからの運動で十分間に合います。「若い時に体を鍛えておいたほうが良い」というのはあてになりません。50歳を過ぎてからの健康法は前回に詳述しましたので、それを参考にしてください。
そして最後に「学力」です。「知識」と言ってもよいのですが、「知識+考える力」なので、学力と表現しました。第一の人生はどちらかというと「ガムシャラな人生」なのですが、第二の人生は時間に余裕があります。なにしろ50年の時間がありますし、成長や学校の時期がありませんから、たっぷりなのです。
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