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武田教授が警戒。貴乃花親方引退はスターリン時代を彷彿とさせる

貴乃花親方が引退を発表し、さらに被害者側だったはずの貴ノ岩が訴訟を取り下げたことで日馬富士による暴行事件は「幕引き」となりそうです。しかし、マスメディアの印象操作により、国民が被害者非難に向かったことはソ連のスターリン時代を彷彿とさせ「とても気持ちが悪い」と警戒を強めるのは、『武田邦彦メールマガジン『テレビが伝えない真実』』の著者で中部大学の武田教授。今回の貴乃花引退を受け、武田教授があえて過去と現代の事件を改めて振り返ることで見えてきたものとは?

大虐殺を支持したのは洗脳された庶民

社会が崩壊するとき、最初はちょっとしたことから始まります。そしてその時には人間が融通性を持っていることが逆になって、崩壊を止められないのです。 その典型的な例が、ソ連のスターリンの登場と、その後約4000万人の人が処刑やシベリア送りで犠牲になったとされている((注)諸説あり、1億人以上から数百万人まで)。

事の始まりは1928年のシャフティー炭鉱事件で、破壊活動を行ったとして5人の技術者が銃殺刑になりましたが、事件自体は単純な技術のミスでした。それからというもの、次々と事件がでっち上げられ、それを庶民が支持し、デモでは女性が涙を流して「なぜ死刑にしないの!と泣き叫ぶようになったのです。

そのうち処罰はさらにエスカレートして、共産党の上層部が支持したノルマを達成しなかったというだけでシベリア送りになりました。でも、このような大虐殺を支持したのは、実はデモに参加した女性のように「政府の宣伝に洗脳された庶民」だったのです。

私は今の日本が、このような残虐な社会に変貌する種をもっていること、それが成長すると、私たちの子供は安心できる社会に住めなくなると思っています。その兆候を2、3整理したいと思います。

「貴乃花親方の角界引退」はメディアによる印象操作

平成29年11月、つまり昨年の九州場所の3日目の朝、日馬富士の暴力事件が露見して日馬富士は2連敗と一つの不戦敗で休場、そのまま引退して相撲界を去りました。すでに前頭8枚目の貴ノ岩は休場していて、不祥事の多い大相撲でも、けた違いの事件でした。

ところが、マスコミの操作によって世論は、暴力をふるった日馬富士やそれを静観し、報告もしなかった横綱白鵬を非難するのではなく、「態度が悪い」などの理由で被害者サイドの貴乃花親方と当の貴ノ岩の非難へと向かったのです。

紆余曲折はあったものの、最終的には負傷させられた貴ノ岩は「自らの責任」とされて十両最下位に落とされ、貴乃花親方は角界を去ったという顛末になったのです。そして現在、正式な九州場所の記録には、単に日馬富士の暴力事件があったことだけが記録されています。

プロ野球の賭博、高校野球の暴力事件、そしていろいろなスポーツで起こる不祥事について、あれほど厳しい態度をとっていたNHK、朝日新聞などのメディアは、一斉に「相撲協会側」につき、事実報道を怠り、非難を貴乃花側に向けて印象操作をした。それによって、国民もズルズルと「相撲協会は悪くなかった」という考えに傾いた。まさにスターリン時代のソ連のようにプロパガンダ(宣伝。メディア報道)によって国民感情を操作する」ということが行われたのである。

なぜ国民は印象操作されたのか?事件を整理

もちろん、この記事を読まれる人も感情を操作されていると思いますので、一応、事件を簡単に整理しておきます。

(1)九州場所が始まる前のモンゴル力士の会合で、日馬富士が貴ノ岩を殴り、すぐには相撲を取れないほどのケガをさせた。「身内はケガさせてよい」などという法律は日本には存在しないので、これは単純な傷害事件だった。

(2)その席に横綱白鵬がいたにも関わらず、救急車も呼ばず、警察にも届けず、巡業部長の貴乃花親方にも、相撲協会にも通報報告しなかった。後に巡業部長だった貴乃花親方が相撲協会に報告しなかったとメディアは批判したが、身内への報告より公的な処理を優先するのが法治国家であり、貴乃花が警察へ被害届を出したのが正しい。火事でも犯罪でも消防署や警察への届けが先であり、そのあとに身内の処理を行うのが順序だ。

(3)事件は完全なパワハラ事件であり、被害者の貴ノ岩は「上司から受けたことによって被害者が不利を受けないように」というのが大原則なのに、十両最下位まで降格になった。理由は横綱が平幕を殴ったときの規則がないので、通常の休場とする」という奇妙なものだったが、テレビ新聞はそれを支持した。

(4)組織内で事故の処理に当たった元検事や政治家、テレビで説明する記者など、すべてパワハラOK、暴力OK、組織内処理優先、相撲の興行最優先という態度で終始した。

(5)貴乃花部屋の力士(一人だけ親方の言うことを聞かなかった弟子)が暴力事件を起こし、世論はさらに貴乃花への印象を悪くした。心理的なものであるが、貴乃花の心中は複雑だっただろう。

つまり、この事件は完全なダブルスタンダードで、パワハラ、暴力、社会より組織など普通ならメディアが大騒ぎして非難するのに、まったく沈黙を守り、逆に被害者の方を叩いたという異常な事件でした。このようなダブルスタンダードが公然と行われ、それを国民が支持したということが私はとても気持ちが悪いのです。(メルマガから一部抜粋)

image by: shutterstock

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中部大学教授の武田邦彦です。主に環境問題や資源に関して研究を行っております。 私のメルマガでは、テレビや雑誌新聞、ブログでは語ることが出来なかった原発やエネルギー問題に鋭く切り込みます。

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