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まだ復興は終わっていない。教師が語る、8年経った南相馬の現状

あの東日本大震災から、8年。今年もさまざまな報道がなされましたが、復興が順調に進んでいるとは言いがたい側面もあるようです。今回の無料メルマガ『「二十代で身につけたい!」教育観と仕事術』では、現役教師でこれまで何度も復興支援ボランティアとして南相馬市に入っている松尾英明さんが、つい先日、3月9日の作業を通じて見えた「事実」を記しています。

よくはないが、よくなってきている 成立する二つの事実

3.11である。震災からちょうど8年が経過したことになる。

9日、また南相馬へボランティアに行ってきた。今回はそのレポートと気付き。

南相馬のボランティアセンターには、3.11直前の土曜日ということで、たくさんの人が集まっていた。中には、海外の若い人たちも参加していた。

海外からも「何かしよう」という人がいること。国という単位は生活の上で必要だが、国境を越えて同じ仲間として活動しようとする人がいる。希望のもてることである。インターネットの国境がなくなったこれからの世界は、現実の面でもそうなっていくのかもしれない。

さて、例のごとく依頼内容は、お得意の「竹林伐採」である。8年間以上手つかずの竹林というのは、密度が違う。今回の任務は「完了」「ゴール」ではなく、長距離リレーの第一走者のような感じである。そして「被災地に学ぶ会と他団体との合同作業である。とにかく角の一画をどうにかしようということで作業を開始した。

竹林伐採作業は、大きく6つの作業が入る。

0.下草刈りと作業場の確保
1.チェーンソーで竹を伐採
2.枝打ちと枝部分の処理(機械で粉砕)
3.50センチの長さに切り分ける
4.竹内部の節に穴を開ける(燃焼時の破裂事故を防ぐため)
5.処理場へ運搬

なかなかに、煩雑な作業である。量が多く、とにかく進まない。竹もまあすくすくとよく伸びていて、一本一本の作業量が多い。しかし、やらねば進まない。どんどんやる。

今回私は、初のチェーンソー使用担当である。使い慣れた人の数が足りなかったからである。エンジンのかけ方から分からず始めたが、慣れてきたら段々手際もよくなってきた。竹は丸く空洞なので、丸の形に沿ってチェーンソーの根本部分を当てていくとうまく切れた。大きな竹は切りきってしまうと、切れた瞬間にチェーンソー上に竹の全ての重さが載ってしまうので、注意が必要である。

やっている内に楽しくなるというのは、いつものことである。そしてお昼の休憩時に気付いた時には、腰を中心に全身筋肉痛になっていた。普段いかに使っていないかである。肉体労働の後、青空の下で丸太に腰かけていただくお昼ご飯は格別である(昼食のお弁当も例の如く、鍵山秀三郎相談役からのご厚意の提供である)。

午後4時まで作業をし、終わった後、くたくたの身体を起こして、竹林を眺めてみた。

正直、見た目あまり変わっていない。全体の10%もいってない感じである。時間と人数をかけた割に「まだまだ」という感じである。

帰りのバスの車窓から街の風景を眺めていて気付いた。

コンビニが増えた。食事する店が開いている。新しい家ができた。駅では、電車から結構な数の人が乗り降りしていた。工事車両がたくさん入っている。街に、多いとはいえないけれど、以前よりもずっと車や人の往来が増えた

8年も経ってまだこれぐらい、という思いはある。住んでいる人たちにとっては、これは日常に感じていることなのかもしれない。しかし、確実に着実によくなっている

ここの捉え方は、結構重要である。決してよくはない状態なのだがよくなってきている。つまり、希望はあるけど支援は必要という状態である。「復興したからもう大丈夫」では決してない。一方で、「僅かずつながら、確実によくなってきている」というのも事実である。

集約すると「決してあきらめないで復興支援を続ける」ということが大切になる。竹林への対処と同じで、一人が一回分でできる支援量は微量だが、これをリレーしていくことが大切である。回数も人も、多ければ多いほどいい。あきらめずに、みんなで長く続けることである。必ず変化が起きる。

南相馬の地区では、仮設住宅の供与がこの3月で終了する(ただし特例で、もう1年延長の場合もある)。この3月が、住民の人々にとって、またその支援をしようとする人たちにとっても、新たなスタートラインである。

絶対に絶対にあきらめない。人間がこの思いをもっている限り、世界は確実によくなっていくという希望を学べた、今回の活動だった。

image by: Shutterstock.com

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【著者】 松尾英明 【発行周期】 2日に1回ずつ発行します。

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