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元旅行誌編集長が明かす「源泉かけ流し」と「循環温泉」の違いは

温泉といえば、なんとなく「源泉かけ流し」がいいような気がしている…そんな人は多いかもしれませんが、「かけ流し」「循環温泉」ともに種類があることを知っていますか? メルマガ『『温泉失格』著者がホンネを明かす~飯塚玲児の“一湯”両断!』の著者で元大手旅行誌編集長の飯塚さんが、「かけ流し」と「循環温泉」の種類や違いを解説。「循環・塩素消毒」温泉に寛大だと自認する専門家が、循環温泉の長所と欠点を教えてくれます。

「循環温泉」とはどんなものか?

まず2005年5月24日に温泉法が改正され、温泉の利用状況として以下のことを「掲示しないといけない」(違反者は30万円以下の罰金)ということが定められた(違反施設は山ほどあるが、1軒として罰せられた例がないけど)。

  1. 温泉に水を加えて公共の浴用に供する場合は、その旨およびその理由
  2. 温泉を加温して公共の浴用に供する場合は、その旨およびその理由
  3. 温泉を循環させて公共の浴用に供する場合は、その旨(濾過を実施している場合は、その旨を含む)およびその理由
  4. 温泉に入浴剤(着色し、着香し、又は入浴の効果を高める目的で加える物質をいう。ただし、入浴する者が容易に判別できるものを除く。)を加え、又は温泉を循環させて公共の浴用に供する場合は、当該入浴剤の名称又は消毒の方法およびその理由

上記のいずれも行なっていない温泉を、一般的には「源泉100%かけ流し」という。かけ流しの場合でも、1、2を併用している場合は「加水かけ流し」「加温かけ流し」「加水・加温かけ流し」というふうに呼ばれる。

一方、「循環温泉」というのは、4の中の「温泉を循環させて公共の浴用に供する場合」にあたる(=A)。その上で1もしている場合は「加水循環」(=B)、2を行なっていれば「加温循環」(=C)、1も2も行なっていれば「加水・加温・循環」(=D)の温泉ということになる。

AからDのいずれの場合も広義の「循環温泉」であり、こたヤンさんも後述している通り、一度使用した(誰か他人が浸かった)温泉を何らかの形で集めて、汚れを濾過し、再び湯船に戻して再利用して循環している。

で、この「循環温泉」の場合は、はっきり言ってなんらかの形で「消毒」が必要になるのだ。ごくまれに「温度調節のためだけの循環」だけをしているというところも存在する。これは、個人的には想像するのも恐ろしい。濾過も消毒もしていない再利用温泉に入る度胸は僕にはない。

話を元に戻すが、「循環温泉」の場合は、一度利用した湯をまず「集毛器(ヘアキャッチャー)」というものに通して、湯船に浮遊している頭髪をはじめとした「毛」や、大きな汚れを取り除く。その上で「濾過器」に通して垢などの汚れを漉して綺麗にし、その上で、濾過器では取り除けない細菌類などをなんらかの消毒薬などで殺菌して再び湯船に戻すわけである。

こう書いてくると、「循環温泉」は何だか不潔な気がしてしまうのだが、そうとも限らない。前述のような濾過・消毒をしているからこそ、湯が清潔に保たれている場合だってある。源泉の湯量が少ないのに大きな浴槽で多くの人が入浴するような場合だと、かけ流しでは清潔感が保持できないから、加水して湯量を補い、なおかつ循環して湯を再利用するわけである。

しかしながら、湯を再利用するためにはぬるくなった湯を加温して温度を保つ必要も出てくる。いずれにしても循環するとなれば、消毒はまず欠かせない。つまり「源泉かけ流しでは湯の汚れを取りきれない場合がある」から、循環・濾過・消毒システムが生まれてきたのである。

ただ、この「消毒」と「対になっている」ところが「循環(・濾過)温泉」の「難」だとも言える。というのも、現在の温泉水消毒のほとんどが「塩素消毒」になってしまっているからだ。消毒に使う塩素材は「次亜塩素酸ナトリウム」など強力な酸化剤がほとんどで、この場合、湧き出したばかりの源泉が持っている「還元性」が失われてしまうことが多い、というのが問題なのだ。

昨今では「酸化還元電位」という概念で、源泉と浴槽での湯の変化を把握することもお馴染みになりつつあるが、この「酸化還元電位」(ORP値)を、“絶対的な”湯の鮮度を表す数値だと勘違いしている人も多い。この辺りはかなりややこしい話になってしまうので割愛するが、簡単に言うと、塩素消毒をしていない源泉100%かけ流し温泉は「還元系」の湯であって、すごく大雑把に言えば「抗酸化」(「=」ではないけど)のような力があるのだ。

一方、消毒した(=ほぼ循環温泉)湯は「酸化系」の湯であり、還元力が「かけ流し温泉」よりも大幅に劣っていると言える。詳しく知りたい方は、温泉ソムリエ協会のHPなどから「水・温泉ORP評価協会」のHPへ飛んで、アドバイザーの講座を受講するのがオススメだ。

実は僕、この業界ではおそらく最も「循環・塩素消毒」の温泉に寛大な人間だと思うが、それでもやっぱり源泉かけ流しが良いことは間違いない。 なんだか禅問答のようだが、僕のこうした立場に関しては、拙著『温泉失格』をお読みいただけると、ご理解いただけると思う。と、ちゃっかり自著の宣伝をして今回は終わりにします。

ああ、この話って毎回疲れるなぁ。

image by: shutterstock.com

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【著者】 飯塚玲児 【月額】 初月無料!330円(税込) 【発行周期】 毎週水曜日or木曜日配信 発行予定

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