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株価大暴落は不可避か。大幅下落の引き金をひく「盲点の10連休」

3月25日の取引では全面安の展開となり、前週末比650円23銭安という終値をつけた日経平均株価。大台と言われる2万1,000円を割り込んでしまう結果となりましたが、日本経済はこのまま減速してしまうのでしょうか。今回のメルマガ『国際戦略コラム有料版』では著者の津田慶治さんが、米中や英国、EUなど世界経済の現状と今後の展開を予測しつつ、自国景気悪化を認めない安倍政権の「失政の芽」の存在を指摘しています。

暴落相場が始まったか?

NY株も日経平均も三尊天井もどきの膠着相場から、世界景気後退を懸念した本当の暴落相場になりそうである。今後を検討しよう。

日米株価

NYダウは、2019年2月24日26,241ドルで、3月11日25,208ドルと下落したが、その後3月19日26,109ドルになり、3月22日25,502ドルまで下げた。三角持ち合い的相場ではあるが、独景況感指数下げ加速で400ドルの下落となった。

日経平均株価も、同様に2019年3月4日21,860円、3月11日20,987円となり、3月22日21,627円とこちらも三角持ち合い的相場になっているが、ドル円が110円を割り込み、3月25日の相場は荒れる。

当分続いた適温相場化した膠着相場から市場関係者は、12月の暴落は間違いではなかったかと言い始めていたが、3月下旬下落に相場が向かう可能性が高くなってきた。ここまで支えたきたFRBやECB、日銀など中央銀行の金融緩和政策と実体経済が悪化する懸念との綱引きが起きていたが、景気減速懸念が勝つようである。

中国の経済減速の影響を受けたドイツの3月マークイット製造業PMI速報値が44.7と市場予想を大幅に下回り、2012年9月以来の最低となり、米国はまだ景気減速の感じではないが、製造業指数は減速して、空席のFRB理事にトランプ陣営幹部ムアー経済評論家を指名したが、世界景気減速懸念で長期金利が下落して、10年国債と2年国債の金利が逆転して逆イールドになり、投資家は不安を感じ株価が下落してVIX指数も上昇した。

このため、安全通貨の円が買われることになった。このため、109円と円高になり、そうすると、待ってましたとばかりに海外投資家の株売りが加速する可能性がある。

米国株を先導したFANG株もデジタル課税や個人情報規制などと逆風が強まり、株価も上昇していない。米国株を支えているのは自社株買いとPKOであり、機関投資家も買っていない。

この上に、英国の合意なきブレクジットが起きると、欧州経済、特にドイツの失速は、当分止めることができなくなる。中国経済の影響が最初にドイツに出て、世界に波及することは間違いないことになる。日本への影響も大きくなる

この世界景気の悪化懸念でトランプ大統領の叱責通りに、FRBも今年の利上げ停止、9月資産縮小停止と対応策を取ってきた。ECBも量的緩和を再度始める可能性が出ている。

しかし、トランプ大統領の経済政策は、移民入国制限で人手不足になり賃金を上昇させ企業利益を減らし、累積債務が多く国債利払いで実質的な緊縮財政になり、減税効果もなくなり、壁建設はできず、米中通商交渉は合意できず世界経済を失速させるなど、すべての面で経済を冷やす方向の政策になっている。

日本でも、7月の参議院議員選挙があり、株価を上げたいと自民党政権は思っているし、そのため10月の消費税増税見送りの可能性もある。日銀も追加緩和の可能性を述べている。しかし、長期金利もマイナスになり、金利面での切り下げはできない。このため、株価維持のためにETFの買い増ししかない。

しかし、日銀の株式保有率上昇で、株式市場の膠着観が出て、市場参加者が減ることにもなる。市場価値を棄損する可能性が高い。このため、日銀は買いと同時に売りもして株保有率を上げない工夫が必要になる。ある基準値以下なら買い、基準値以上なら売ることを繰り返すしかない。

もう1つの心配は、4月終わりから5月初めまでの10連休である。この長期連休で、海外市場での円高等に対応できない可能性があるし、連休直前に売りが集中すると、そこが大幅下落になる可能性もあり、株価の変動が大きいことになる。

米中通商協議

トランプ大統領は、米中首脳会談を6月に行い、合意に達したいようである。しかし、中国へ要求した構造改革7項目を実現させるまでは、今掛けている関税の撤回はしないとした。

  1. 米企業に対する中国企業への技術移転の圧力
  2. 中国における知的財産権の保護と執行の強化の必要性
  3. 米国が中国において直面する多くの関税および非関税障壁
  4. 中国の米企業に対するサイバー窃取がもたらす悪影響
  5. 補助金と国営企業を含む、市場を歪める力が如何に過剰生産をもたらしているか
  6. 米国の製造業産品、サービス、農産物の中国への販売を制約している市場障壁および関税を除去する必要性
  7. 米中通商関係において通貨が果たす役割

1.と2.7.しか中国政府も対応できないし、それも不十分になる可能性が高いので、ライトハイザー通商代表は、確実に実行できているかの検証が必要と述べている。

この検証で日米通商交渉の際、合意したことが日本の衰退を招いたことを中国は研究している。このため、検証に反対しているが、米国は、検討にこだわっている。このため、全面的な合意を中国は諦めたようである。

貿易赤字解消部分だけが合意になり、その他は合意しないという部分合意になり、当分、関税UP撤回もないということになったようである。このため、合意できずという状態がわかり、中国政府の支援を受けて、ファーウェイも米国に反撃し始めている。

このようなことから、4月にライトハイザー通商代表が訪中して、最後の交渉をするとしたが、どうも合意は無理なようである。中国は米国との全面的な経済戦争に打って出る可能性も増している。

欧州やASEANなど多くの国はファーウェイを排除しないで使う方向であり、米国の味方と思われた豪州でもファーウェイの通信機器を使うようである。米国がハイテク分野で中国に負ける事態になっている。中国も米国を抜く自信を深めている。

そして、マクロン大統領は、中国の習近平国家主席のフランス訪問に合わせ、ドイツのメルケル首相、欧州連合(EU)のユンケル欧州委員長をパリに招いて4者で、通商や気候変動対策について会談するという。EUも中国との不公平な貿易環境を修正したいと交渉をする。

中国もEUの関係を改善するようである。EUは中国と米国と天秤にかけている。しかし、米国の理不尽な要求が出たら、中国に寄り始める可能性もある。中国も米国を諦めてEUとの関係を強固にしたいようである。

このため、米国が構造改革の要求事項を部分的に取り下げないと、米中貿易摩擦は解消しないことが徐々に明らかになっている。

この結果、インターネットの分断という事態も想定する必要になっていると見るし、米中の全面的なハイテク戦争を想定した方が良いようになってきた。ということで、株価は下がる方向になる。

トランプ大統領も、合意ができないとわかっていても合意への交渉を引き延ばして、株価を維持したいようである。合意延期でもFRBがハト派的な対応であれば、株価維持は可能と現時点では思っているようだ。

米国の財政縮小

トランプ大統領は、シリア撤退を宣言して近々に米軍をシリアから撤退するとしたが、これにイスラエルが反対して、クシュナー上級顧問を通じてトランプ大統領にも伝わり、また、2020年選挙を意識して、ユダヤ人と福音派の支持を得るために、シリア撤退を撤回し、シリアに1,000人規模の米軍を残留させることにしたようだ。その上に、トランプ米大統領は、ゴラン高原に対するイスラエルの主権を米国が認めるべき時期に来たと。シリアは反発している。そして、シリア撤退に代わり、タリバンと協議して、アフガニスタンからは完全撤退するようである。

財政赤字が1兆ドルになり、財政縮小を行う必要があり、同盟国に駐留する米軍経費の5割増しを駐留する同盟国に要求するとも述べている。ドイツは、その要求を知って軍事予算を増やさないと、反発している。恐らく、ドイツ国内の米軍は完全撤退することになると見る。それとともにドイツやEUは米国から離れる

米国の環境予算、国務省予算の海外援助予算、国連予算などは大幅な縮小になる。というように、米国の国際主義が予算面からもできなくなってきた

トランプ大統領は、国際主義を捨てて、国内のインフラ投資に予算を回し、景気を上げて2020年大統領選挙戦を有利にしたいようであるが、米国の赤字は限界になってきているように思う。

その上に、国債発行の上限に達して、秋までには上限の見直しをしないと、米国債のデフォルトになる。共和党茶会派や民主党が反対すると、本当に上限見直しができずに、デフォルトする可能性が高まる。

ブレクジット

3月29日期限の英国のEU離脱は、EU議会で離脱案を承認すれば離脱期限を5月22日まで、承認しなければ4月12日まで延期することになった。3月25日の英国議会が3回目のメイ離脱法案を否決すると、4月12日に合意なき離脱になるか、国民投票かEU離脱撤回になるか、最終判断の期限になってきている。合意なき離脱になると、当分英国の経済は大幅減速することになる。

これに対して、国民の多くは「ブレグジット中止」求めているようである。「ブレグジット中止」のネット請願への署名200万筆が英国議会に届いているが、メイ首相は合意した離脱に向かって進むようである。メイ首相が辞任しないとEU離脱撤回はないようである。

そして、合意なき離脱となると、米中冷戦の上に英国とEU経済の大幅な減速になり、株価はこれも下落方向になる。

このように、世界景気を冷やす方向の動きが多く、景気を押し上げる方向の動きがないことで世界の経済は当分下り坂になるように感じる。

ドイツ銀行とコメルツ銀行の統合

ドイツ銀行単独での業績回復はできずに、このままでは倒産する危険もあり、メルケル政権はコメルツ銀行との合併を推進しているが、ドイツ銀行を中心に2万人以上が雇用喪失になり、このため、労働組合は反対のようである。

一方、EU離脱になるとロンドンからフランクフルトに多くの銀行が移り、雇用が増加するが、雇用増加は3,000~5,000人程度であり、ドイツ銀行の社員をすべて受け入れることはできないし、英国から要員も移動してくるので、あまり増えないとも言われている。

ドイツ経済の中心である最大金融機関の不振と中国への機械・自動車輸出の不振や英国のEU離脱による自動車の輸出減少など、ドイツ経済の減速はどうしようもない状態になる。

ドイツ経済を中心に回るEU全体の経済も不振になり、中国とEU経済共に不振となりその影響は世界に波及する。

景気悪化を認めない国

この影響をあまり受けないのが米国であり、このため、世界的な景気悪化が相当に進んできても米国の株価は下がらなかった。米国の企業家は、この10年株価は上がり、その恩恵を受けてきたので、企業トップ層は、自社株買いで自社株の株価を維持したいようである。

もう1つ、世界の景気悪化でも自国景気悪化を認めないのが安倍政権であり、景気回復の基調は変わらないという。日米ともに株価下落を抑えたいのは分かるが、景気対策を打つタイミングを外す可能性が高い。特に10月の消費税増税は、景気を冷やすことになり、景気悪化時に消費税増税は、大きな禍根を残すような気がする。

さあ、どうなりますか?

image by: Shutterstock.com

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【著者】 津田慶治 【月額】 初月無料!月額660円(税込) 【発行周期】 毎月 第1〜4月曜日 発行予定

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