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進化論は悪、避妊もNO。日本人は理解できぬ米キリスト教の一断面

日本と比べて生活のいたるところに宗教を感じられると言われるアメリカ。自らを「無宗教」とすることが多い日本人にとって、にわかに信じられない事態に遭遇することも多いようです。今回のメルマガ『週刊 Life is beautiful』では世界的エンジニアでアメリカ在住の中島聡さんが、宗教的背景から人工中絶を強固に反対する人々の行動や、彼らが通そうとする法律について記しています。

※ 本記事は有料メルマガ『週刊 Life is beautiful』2019年5月14日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め初月無料のお試し購読をどうぞ。

プロフィール中島聡なかじまさとし
ブロガー/起業家/ソフトウェア・エンジニア、工学修士(早稲田大学)/MBA(ワシントン大学)。NTT通信研究所/マイクロソフト日本法人/マイクロソフト本社勤務後、ソフトウェアベンチャーUIEvolution Inc.を米国シアトルで起業。現在は neu.Pen LLCでiPhone/iPadアプリの開発。

私の目に止まった記事

The “heartbeat” bills that could ban almost all abortions, explained

米国に住み始めて、かず多くの日本との違いに出会いましたが、最も驚いたのが、宗教の社会への影響の大きさです。それも、単に「日曜日の朝には家族揃って教会に行く」などの、宗教を信じている人たちに閉じた話ではなく、他の人の生活にまで大きな影響を与えることがしばしばあるのです。

典型的な例が、学校での生物の授業です。「中学校で生物の時間に進化論を教えることはやめるべきと本気で主張する親が少なからずいるのです。日本に暮らしていたら想像もできないでしょうが、聖書に書いてある、人間がアダムとイブから生まれたという話を、「神話ではなく文字通り信じている人が結構な数いるのです(日本で言えば、天照大神の天の岩戸の話が、本当にあった歴史上の事実だと信じているようなものです)。

誤解して欲しくはないのですが、キリスト教を信じる人たちの全員がそんな人たちではありません。彼らの大半は、(日本人と同じように)神話と歴史・宗教と科学をちゃんと切り離して考えることが出来ます。あくまで一部の人たち10%から20%そんなキリスト教の盲信者なのです。

この記事に書いてある、人工中絶の件も同じ(もしくは、それ以上)です。彼らの多くが、そもそも避妊を否定しています。彼らにとって、性交渉は子供を作るための神聖な行為であり、快楽のためだけの性交渉は、神に対する冒涜なのです。

当然ですが、人口中絶も許されるものではありません彼らから見れば殺人なのです。

人口中絶が殺人なのかどうかに関しては、私も正直悩むところです。生まれる前の子供とは言え、「命を奪う」ことには変わりがないので、殺人と言えば殺人と言えます。妊娠何ヶ月で殺人になるのか、と言われると、答えに苦しむところです。

とは言え、望まれずに生まれてくる子供たちは不幸だし、特に、母親がティーンエージャーだった場合には、それが貧困の連鎖を生み出す可能性も十分にあります。

彼らは、そんな「中間層」の人たちを巻き込んで、激しい「人口中絶反対運動」を全米の各地で起こしているのです。中絶を専門にしたクリニックの前でビラ配りをしたり、妊婦に「人殺し」と罵声を投げかけるのはもちろん、極端な場合だと、クリニックに放火をしたり医者に暴力を振るったりというところまでエスカレートしたことがあります。

最近は、そんな過激な活動も沈静化して来たので、私も安心していたのですが、今度は、州レベルでのロビー活動をし、「heatbeat bill」と呼ばれる法律を4つの州で成立させることに成功したそうです。

「heatbeat bill」とは、「心臓の鼓動が計測できるようになった胎児の中絶をしてはいけない」という法律で、表向きは、私のように「人口中絶を殺人と呼ぶべきかどうかは悩ましい」と感じている中間層の人たちに、「心臓の鼓動が計測できるようになったら殺人ですよ」という答えを与えてくれています。

しかし、実質的には、これは人口中絶を全て禁止することに等しい、とこの記事は批判しています。現代の産婦人科に普通にある装置を使えば、鼓動を計測は、受胎後6週間から可能になります。

受胎後6週間というと、「今月は少し遅れているな」ぐらいのタイミングなので、多くの女性はその時期を過ぎてから医者に行くのが現状です。

人口中絶反対主義者たちは、この法律を通すことが、クリニックの前でビラ配りなんかよりも遥かに効果的なことに気がつき、保守的な州(敬虔なクリスチャンが多い州)から順に、一つづつ「heatbeat bill」を通す戦略に切り替えたのです。

※ 本記事は有料メルマガ『週刊 Life is beautiful』2019年5月14日号の一部抜粋です。初月無料の定期購読のほか、1ヶ月単位でバックナンバーをご購入いただけます(1ヶ月分:税込864円)

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マイクロソフト本社勤務後、ソフトウェアベンチャーUIEvolution Inc.を米国シアトルで起業。IT業界から日本の原発問題まで、感情論を排した冷静な筆致で綴られるメルマガは必読。

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