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自分の家に住めない。機能不全マンションを狙った悪徳商法の手口

リゾートマンションの相続等を巡り、遺産整理の際に数百万の滞納金が発覚したというケースは珍しくはありません。「遺産相続はしたいけれど滞納マンションの区分所有権は手放したい」といった心理を利用する悪徳商法も横行し始めているようです。今回の無料メルマガ『まんしょんオタクのマンションこぼれ話』では著者の廣田信子さんが、「区分所有権買い取り商法」の悪質極まりない実態を暴いています。

管理組合を中から崩壊させる恐ろしいビジネス

こんにちは!廣田信子です。

先日の研究会で、越後湯沢のリゾートマンションで、1円でも売れないような高額の未収金がある物件を3年分の管理費修繕積立金を自分たちに支払えば区分所有権を買い取って上げるという、一般社団法人〇〇を名乗る団体の存在が話題になりました。

区分所有権の責任から逃れたい区分所有者は、このくらいのお金で片が付くなら手放したいと思うのです。

考えてみてください。数百万の滞納が付いたリゾートマンションを持ったまま親が亡くなったとしたら…売ることもできず、相続放棄したいと思っても、相続放棄だと、自宅や預貯金等の他の財産も放棄しなければならないのです。この負の財産だけを誰か引き取ってくれるならお金を払ってもいいと思うのは、あり得ることです。

しかし、新たな区分所有者となった一般社団法人は、過去の滞納分も、元の所有者から受け取った3年分の管理費等も、最初から管理組合に支払うつもりはない確信犯なのです。すなわち、元の所有者から受け取った3年分の管理費等がこの団体の収入になるのです。

物件によっては、もっと多額のお金をとっているかもしれません。集めるだけ集めて、さすがにまずくなったら、一般社団法人を解散すればいいのです。

こうった団体があることは、いろいろなところから耳に入ってはいましたが、状況は、どんどん危ない方向に進んでいるというのです。

この団体に区分所有権を渡す区分所有者が増えると、この団体は、議決権を多数持つ組合員になるのです。堂々と総会に出席して、にらみを利かすだけで、他の組合員を、「自分も早くここから逃れたい」という気持にさせます。最後にババを持っている人にはなりたくないという心理に拍車を掛けるのです。

このリゾートマンションを終の棲家と考えている少数の方は、何とか、管理組合を運営していこうとして、組合員に、こういう団体は、絶対に管理組合にお金を支払わないから、こんな団体に区分所有権を渡さないように…と、呼び掛けるでしょうが、個人の立場で考えると、「自分が責任から逃れられればいい。悪いが、その後、管理組合がどうなるかまでは、自分には考える責任がない。自分が、最後に残って、滞納の山を抱え、管理不全になっていくマンションと心中…なんてことになりたくない」…と思うのも無理からぬことです。一旦、悪魔のささやきが始まると、自分が最後に残る人になりたくない…そういう心理に歯止めがかからなくなるのです。

それにしても、悪いことを考える人は、なんと、人間の心理を知り尽くしているのだろうと、改めて思います。

私たちが一番気になっているのは、こういったビジネス手法が都市部の管理不全マンションでも起こってくるだろう…ということです。管理組合を立て直すどころか、中から崩壊していくのです。

相続が発生する前に、自分が所有するマンションの行く末にしっかり責任を持つ…そのことは、人として、最後をどう締めくくるかという生き方の問題としても、ますます重要になってきます。

image by: Shutterstock.com

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【著者】 廣田信子 【発行周期】 ほぼ 平日刊

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