「日本のために、未来のために行動をおこそう」と言ったフレーズを耳にすることがありますが、具体的にそれはどんな行動を指すのでしょうか。今回の無料メルマガ『ロシア政治経済ジャーナル』では、著者で国際関係ジャーナリストの北野幸伯さんが、パイロット業務を通して世界各国の人々と10年以上も接している読者からのメールを例に、挨拶など「ほんの些細な言動が大きな国益に繋がる」という事実を紹介しています。
一人一人の言動も「国益」「反国益」になりえる
今回は、パイロットのMさんからのメールをご紹介させていただきます。
北野さん
初めてメールします。2,000号達成、おめでとうございます。当メルマガを読み始めてもう10年近くになります。長い道のり、いろいろな葛藤やご苦労があったことと思います。迷える日本人を導いて頂き、ありがとうございます。本当に分かりやすくて、毎号楽しみにしています。
私、某日系航空会社で機長をしております。シベリア上空もかれこれ10年以上飛んでおりますが、いつも思うのはロシアの管制官はいつも我々日系エアラインに対しては非常にフレンドリーだということです。「ko-nichiwa!」とか「sayonara」とか日本語で挨拶してくれます。元敵国の日本に対して何故なんだろう?と当初思ってましたが、このメルマガを読んでいるうちに、何故フレンドリーなのかも理解できるようになりました。
ちなみにシベリア上空は中国系や韓国系エアラインも飛行しているのですが、彼らに対して「ニーハオ」とか「アニョンハセヨ!」とか言ってるのは聞いたことがありません。
顔を見たことのない声だけのお付き合いではありますが、そういう訳で我々日本人パイロットはロシアに対して結構好感を持っている人が多いと思います。
こういう小さな積み重ねが国のイメージアップに繋がるんだと感じ、それ以来ロシアをはじめ通過するエストニアやリトアニア、フィンランドやスウェーデンの各言語での挨拶言葉を事前に調べ、通過時、管制官にそこの言語でなるべく挨拶するようにしています。特にバルト3国のような小さな国は、日本の飛行機からお国の言葉で挨拶して貰えばきっと嬉しいに違いないと思うからです。
とても小さな事かも知れませんが、そういう積み重ねが日本の好感を上げ、何かの役にきっと立つだろうと感じております。
これからも有益な情報をお知らせください。そして令和という時代を、朝日が登るような光り輝く良き時代にして参りましょう。ありがとうございました。
Mさん、ありがとうございました!
このメールですが、とても大事なことを私たちに教えてくれています。Mさんは、ロシアの管制官の愛想がいいので、
我々日本人パイロットはロシアに対して結構好感を持っている人が多いと思います。
という結論になっています。我々日本人パイロットは、「ロシアの【管制官】に好感をもっているとは書かずに、【ロシア】に対して好感をもっている、つまり、愛想のいいロシア管制官のおかげで、日本のパイロットさんたちは【親ロシア】になっていると。
それで、通過する各国のあいさつを覚え、その国の言葉で管制官に挨拶するようになった。その挨拶を聞いた管制官は、きっと【日本国】のことが好きになるでしょう。
Mさんは書いています。
とても小さな事かも知れませんが、そういう積み重ねが日本の好感を上げ、何かの役にきっと立つだろうと感じております。
まさにその通りですね。私たちは、意識するしないに関わらず、「目に見えない看板」を背負っていきています。その看板には、「日本国」という文字が記されている。
外国人が道を尋ねた。その時私たちが、親切に道を教えてあげ、なおかつその場所まで連れて行ってあげれば、「なんと【日本人】は親切なことよ!」と感激し、自分の国に帰って日本国の宣伝をしてくれることでしょう。逆に外国人に不親切にすれば、「日本人は冷酷民族だった」と拡大解釈されてしまうことでしょう。
私たちは、「国益」ときくと、何かメチャクチャ抽象度が高く、しばしば「自分と関係ない」と思ってしまいます。しかし、実をいうと私たちの言動の一つ一つが、日本国のためになったり、為にならなかったりします。
私も偉そうなことはいえません。意識して、日本の評判をあげる言動をしていきましょう。Mさんがされているように。
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