アメリカでは、小児がんの子どもたちの不安を和らげるためのアヒルのソーシャルロボットが無償提供され、社会的にたいへん高い評価を受けているようです。知らせてくれるのは、『メルマガ「ニューヨークの遊び方」』の著者でNY在住のりばてぃさんです。実は、日本にも今年中に300体が贈られるという話題もありましたが、国立がん研究センターの統計では、日本で小児がんと診断される子どもの数は、1年間に2100人。多くの子どもたちに届くよう、CSRプログラムとして採用する企業が広がってほしいこの活動を紹介します。
ソーシャルロボットのMy Special Aflac Ducks
このメルマガをご愛読されてる皆様の中には、日本にはまだ存在しない、ニューヨーク、あるいはアメリカならではの先進的な何か(ビジネス・モデル、マーケティング手法、テクノロジー、社会現象やトレンド、発明・発見、考え方や視点…等など)の情報を楽しみにされている方々も、たぶん、多いだろう。これはその一例。
My Special Aflac Duck | Teaser from Chispa House on Vimeo.
アメリカの大手保険会社のアフラック(American insurance company、略してAflac、アフラック)が、マイ・スペシャル・アフラック・ダック(My Special Aflac Ducks)という、病院で小児がんと命がけで戦っている幼い子どもたちの心の支え、癒やし、闘病生活の戦友になる、最新テクノロジー満載のアヒル型インタラクティブ・コンパニオン・ロボット(interactive companion robot)を無償で提供している。ソーシャル・ロボットとも呼ばれるもので、開発はSproutelというベンチャー企業。
小児がんの子どもたちにとって最も辛いのは、自分の人生をコントロールできなくなったように感じることだそう。放射線治療のために様々な検査や治療を受けらされている…そんな無力と感じることが多い中、アヒル型のインタラクティブ・コンパニオン・ロボットは子どもたちに寄り添い感情を表現してくれるという。
例えば、頭を撫でると喜び、歌をうたいダンスをする。また、お腹のセンサーに悲しい顔文字のチップを当てると悲しさを表現し、嬉しい顔のチップを当てると一緒に喜んでくれる。
細かい部分にもこだわっており、小児がん治療のための化学療法では、抗がん剤を投与するため、子どもたちのお腹の部分に管をとりつけるが、このアヒルのロボットにもその管(実物と同じもの)がついていたりする。
紹介ビデオには、最初はその管をつけることを怖がっていた男の子もアヒルにもついていることを知り怖がっていた感情が緩和される様子が映されている。ぎゅっとアヒルを抱きしめる小児がんと戦う幼い子どもたちの様子は、病気の治療に必要なのは薬だけではないととても分かりやすく教えてくれているようだ。
アフラックの9月3日付の公式発表によると、マイ・スペシャル・アフラック・ダックを初めて紹介した2018年10月以降、これまでに全米47州の220以上の病院の小児がんと戦っている子どもたちのもとへ、5,000体超を完全無料で寄付したとのこと。
ご参考:
● Aflac Announces Slate of Events to Commemorate National Childhood Cancer Awareness Month
また、このハイテク・コンパニオン・アヒルは各所ですでに高い評価を得ており、様々な企業による社会貢献活動(Corporate Social Responsibility Program、いわゆるCSRプログラム)を研究する専門家は経済誌フォーブスの記事で大絶賛。My Special AFLAC Duck: A Gold Standard For CSR Programs(マイ・スペシャル・アフラック・ダックは、CSRプログラムのゴールド・スタンダードです)と題した記事を掲載しているほどである。
ご参考:
● My Special AFLAC Duck: A Gold Standard For CSR Programs
さらに、マイ・スペシャル・アフラック・ダックが誕生したのは2018年10月。年末まえ2ヶ月ほどという状況で、雑誌Timeが選ぶ『2018年の最高の発明』の1つに選出。翌年には2019年3月のSXSW(サウスバイサウスウェスト)のイノベーション・アワードのロボティック&ハードウェア部門の最優秀賞も受賞。素晴らしい!
ご参考:
● Announcing the Winners of the 2019 SXSW Interactive Innovation Awards
そして、今年9月。アメリカではNational Childhood Cancer Awareness Month(全米小児がん啓発月間)ということで、このアヒル型のインタラクティブ・コンパニオン・ロボットを1人でも多くの小児がん患者の子どもたちに届けるため資金集めの目的で2019年9月~10月までMacy’s限定でロボットに見た目そっくりのアヒルのぬいぐるみを販売。売上の一部が寄付されるとのこと。
ご参考:
● Aflac Childhood Cancer Plush Duck
これは、もっと広く知られるべきだし、CSRを考える際のお手本となる。まさに楽しみながら寄付集めというアイデアも日本にはあまり無いことのように思うので学ぶところはいろいろあるのではないかと思う。以下は紹介ビデオや機能の紹介など。
ご参考:
● My Special Aflac DuckTM
● CES 2018: My Special AFLAC Duck | Into Tomorrow
● My Special Aflac Duck
ちなみに、このアヒルのロボットを開発したSproutelは、糖尿病の子どもたち用のソーシャル・ロボットのクマさんも開発している。
ご参考:
● Companion Robots
image by: Chispa House, vimeo