文政権が不正疑惑にまみれた「玉ねぎ男」ことチョ・グク氏を法相に強行任命して以来、チョ氏を糾弾するデモと、逆に擁護するデモとが同程度の勢いを保持し連日のように行なわれている韓国。そこには、日本で見られるデモの光景とは違う風景があるようです。今回の無料メルマガ『キムチパワー』では韓国在住歴31年の日本人著者が、あえて「韓国は、デモがクール」だと表現しその理由を解説しています。
熱い民族。デモする民族
韓国は今、大規模市民デモが華やかなりし時である。2つのデモがある。
1つは、ヂョ・グク氏を支持するデモであり、1つはヂョ・グク氏を糾弾するデモである。まったく反対方向のデモが連日とまではいかないけど、3日に1度くらいの割合で行なわれている。しかもその規模がまたすごい。
ヂョ・グク氏を支持するデモは200万人という発表があるかと思うと、ヂョ・グク氏を糾弾するデモは300万人という発表。実数のほどは両方ともよくわからない。警察も把握していないもようだ。
しかし、ニュースの画面で日本でも伝えられているかと思うけど、あの2002年のワールドカップのときよりもすごいことは一目瞭然だ。見物というしかない。
ヂョ・グク氏については、本メルマガ(「日韓関係さらに悪化必至。『玉ねぎ男』の法相任命がもたらす窮地」)でも書いた。現在は、彼の妻ジョン・ギョンシムが検察の取調べをうけているという状況である。妻ジョン・ギョンシムの調べの結果がどう出るのかは今のところわからない。どうもあまり芳しい結果が出ないんじゃないかと世間では騒がれている(つまりお縄となるような決定的な証拠がつかめずにおわるんじゃないかということ)。
娘の表彰状偽造に使われたと疑われるノートブックが見つからないようだし、娘の表彰状偽造に使われたと疑われるノートブックが見つからないようだ。当然本人のジョン・ギョンシムがどっかに隠しているわけだけど、証拠物件がないことには、検察としてもにっちもさっちもいかないわけだ。
とにかく、ヂョ・グクという男は、法学部の教授だけあって、ありとあらゆる法の抜け道を利用して自分には罪が降りかかってこないようにしてあるようだ。この人が今法務大臣としての任命を文大統領から受けたのだ。なぜこのものを法務大臣にしたかというと、前々から韓国の検察改革について本を書いたりしゃべったりしていてそれが文氏の心をつかんだらしい。同じ釜山出身というのもあるのかもしれない。
韓国の検察のどこをどういうふうに変えたいのか、筆者には今のところわからない。韓国の検察には、どうも強圧的な部分があるらしい。そんなところを改革しようっていうのだろうか。
でも、検察ってところは、悪を取り払うのが目的の部署だから、悪に対してはあくまで強圧的でもいいんじゃないのかと筆者などは素人考えとしてはあるんだけれど。文大統領の就任期間中にやりたいことのうち重要な柱の一つがこの検察改革であるらしい。それを推し進めるにふさわしい人間がこのヂョ・グクという人間のようだけど、彼の所属するソウル大の学生でさえ、ヂョ・グク反対デモを最初にやったくらい、このものは偽善者としての烙印を大々的に押されている人間だ。こういう人間を法務大臣にするってこと自体、正気じゃないとわたしには思われる。
しかし、ここがまたわからないところなんだけれど、2019年9月9日、ヂョ・グク氏が法務大臣の任命を受けてすぐの週末、検察庁の前の道路を出発点として、長くあるデモ隊(デモ隊発表で200万人)が道を埋めたのだが、それがなんと「ヂョ・グク支持」デモだった。このときには筆者もたまげてしまったものだ。
前日までソウル大や高麗大などで大学生の「ヂョ・グク糾弾」デモが大々的に報道されていたため、デモ隊のニュースを画面で見たときは、ははあ、やっぱり「ヂョ・グク」はだめじゃないか、と思いながらみていたのだけれど、よく見るとなんと「ヂョ・グク支持」デモだったのだ。開いた口が塞がらないとはこのことをいうのだろうと思った次第だ。これじゃ、保守の自由韓国党(ジャユーハングクダン)はもう終わりだなと筆者も思わずうなだれてしまった。決して筆者は自由韓国党支持ではないのだけれど。あれだけ不正に取り巻かれているヂョ・グク氏を糾弾しようという党がこの党だからだ。学生らももうなんの力もなくなってしまったのかと冴えない気持ちで1日、2日過ごした。
すると次の週末くらいに、今度は検察庁の前ではなくてソウルのグァンファムン(光化門)の道路を埋め尽くしているデモ隊がテレビの画面に映っているじゃないか。これが300万人と報道された「ヂョ・グク糾弾」デモであった。安心した。不正に対して断固示威を示した学生や市民、そして自由韓国党などが中心となって不正糾弾デモを繰り広げていたのだ。
韓国は、このデモがクールだ。クールジャパンは、すしとか自販機とかお祭りとかいろいろあるけど、こちら韓国のクールコリアは、このデモがナンバー5以内には入るはずだ。はじめにも書いたように、連日とまではいかないにしても3日おきくらいに両方のデモが行なわれている。ニュースにはほぼ毎日どっちかのデモの様子が画面を賑わすといっても過言ではない。だから毎日デモがあるような錯覚に陥るくらいだ。
実は、今回のメルマガで、この韓国のデモについてそのルーツから探ってみようと思って書き始めたのだけれど、文章が余りにも長くなってしまった。韓国のデモの源流についての文章は、次回に書いてみたい。乞うご期待。
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