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将軍も「別格」扱い。京都の紅葉を楽しむなら、南禅寺界隈を散策

これからの紅葉の時期、多くの観光客が足を運ぶ京都。見どころは数多あれど、禅寺の最高位「別格」と定められている南禅寺の紅葉は、まさに「格別」なようです。今回の無料メルマガ『おもしろい京都案内』では、著者で京都通の英学(はなぶさ がく)さんが同寺について詳しく解説するとともに、最高の紅葉を愛でることができるルートを紹介しています。

別格 南禅寺 禅寺最高位の寺

紅葉の時期が少しずつ、着実に近づいています。今回は大好きな紅葉の時期の散策エリア、中でもその中心的な存在である南禅寺をご紹介します。南禅寺界隈には塔頭寺院である南禅院、天授庵、金地院は言うまでもなく、無鄰菴、永観堂など京都の紅葉を代表する名所がすぐ近くにいくつも点在しています。今年の紅葉狩りの起点として南禅寺を選んでみてはいかがでしょうか?

南禅寺は歌舞伎の場面でも有名な三門、法堂の天井に描かれている蟠龍図、小堀遠州作の虎の子渡しの庭、狩野探幽筆と伝わる襖絵、境内を横切るレンガ造りの水路閣などが見どころです。今回はその一つ一つの魅力をお伝え致しますので、是非今年は紅葉と共にご観賞頂ければと思います。

南禅寺の正式名称は太平興国南禅禅寺です。臨済宗南禅寺派大本山で山号は瑞龍山、本尊は釈迦牟尼仏を祀っています。1264年、亀山天皇の離宮禅林寺殿が始まりで、1291年、無関普門(むかんふもん)を開山、亀山法皇を開基とし禅寺に改められました。1334年、京都五山第一位に定められましたが、後に室町幕府3代将軍足利義満が禅寺の最高位である別格京都五山之上ござんのじょう)と定めました。

京都五山

第1位 天龍寺
第2位 相国寺
第3位 建仁寺
第4位 東福寺
第5位 万寿寺

広大な敷地に立つ現在の建物のほとんどは桃山時代の遺構です。応仁の乱で焼失した後、「黒衣の宰相」(こくえのさいしょう)といわれた以心崇伝(いしんすうでん)によって復興されました。境内には勅使門、三門、法堂、方丈などの建物が一直線に並ぶ禅寺特有の伽藍が配置されていて周辺には金地院、南禅院、天授庵(てんじゅあん)など12の塔頭が点在しています。

三門

三門は高さ22メートル、別名「天下龍門」(てんかのりゅうもん)と呼ばれ、日本三大門の一つに数えられています。現在の門は1628年、大坂夏の陣に倒れた戦没者を弔うために築城の名手・藤堂高虎が寄進し再建したものです。正面向かって右側の階段から楼上に登ることができます。楼上には宝冠釈迦坐像(ほうかんしゃかざぞう)と十六羅漢が安置されています。天井や柱・梁には狩野派の絵が描かれていて、華麗な異空間が広がります。三門の上からは京都市内の北西方向を見渡すことが出来ます。まさに「絶景かな」という景色を見ることが出来ます。歌舞伎の演目「楼門五三桐」の「南禅寺山門の場」で石川五右衛門が「絶景かな 絶景かな」と言うセリフは有名ですよね。ただ、実際には石川五右衛門が生きた時代には三門はまだ再建されていませんでした

三門の前に大きな石燈篭がありますが、高さ6mを誇り、日本一大きいことで知られているのでお見逃しなく。

法堂(はっとう)

三門をくぐって真っ直ぐ進むと、正面に建っているのが法堂(はっとう)です。秀吉の息子・秀頼が寄進した法堂は明治28年に焼失し、現在のものは明治42年に再建されたものです。法堂内部の中央には釈迦如来像・文殊菩薩・普賢菩薩の三体が祀られています。天井は今尾景年の大作・幡龍図(ばんりゅうず)が描かれています。

方丈

方丈は、大方丈と小方丈に分かれていて、大方丈は後陽成天皇より拝領されたもの、小方丈は伏見城殿舎を移築した建物と伝わります。小方丈の襖絵は御用絵師・狩野探幽が描いた「水呑の虎みずのみのとら)」で、特に有名なので注目して見て下さい。虎は用心深い動物で水を飲む姿などをみせることがないと言われています。まさに決定的瞬間をイメージして描いたものと伝わっています。

大方丈の見どころは庭園です。前庭は小堀遠州作と伝わる白砂に6つの石を組んだ「虎の子渡しの庭で江戸初期の代表的な枯山水庭園の特徴を今に伝えています。石を親虎と子虎に見立て、白砂で川や水を表現しています。

中国・宋の時代の故事で、虎の母親が数匹の子を1匹ずつ連れて苦労して無事に川を渡る姿が語られています。

故事の中では、虎が子を産むと必ず1匹はヒョウが生まれるとされています。ヒョウは一緒に生まれてきた他の虎の子を食べてしまう習性を持っています。

そのため母親の虎はヒョウを背負って他の数匹の虎の子供達を1匹ずつ付き添いながら川を渡るのです。ヒョウと生まれたての虎の子達を一緒に置いておくと虎の子達が食べられてしまうからです。そのためこのように子供達と一緒に川を渡るのに何度も往復しなければならなかったのです。「虎の子渡しは苦しい状況を何とかやり繰りすることのたとえです。

大方丈と小方丈の内部は合わせて130面を越える狩野派の襖絵で豪華に装飾されています。二つの建物には数多くの文化財などが所蔵されていて、見るべきものが多いのでゆっくり回ると30分ほどかかります。時間をたっぷり取って拝観してみて下さい。

 

水路閣

南禅寺の境内にはレンガ造りの疎水橋が天井川として流れています。水路閣は琵琶湖疏水事業の一環として明治21年に建設されました。美しいアーチを描く全長93mの橋は、琵琶湖疏水の設計者の田辺朔郎が設計したものです。琵琶湖疏水事業は京都府知事北垣国道(きたがきくにみち)の発意によって田邉朔郎(たなべさくろう)工学博士を工事担当者として進められました。東京遷都以後廃れてしまった京都に活気を取り戻そうと「百年の計」として工事が着手されたのです。この事業によって日本初の事業用水力発電が開業し京都市内の中心地に路面電車が走るようになり再び活気を取り戻したのです。

禅寺の別格「五山乃上」の寺格を誇る南禅寺の境内に恐れ多くも西洋風のレンガ造りの天井川の橋脚を建てることなど、伝統や格式を重んじる京都の人たちは大反対したことでしょう。でも京都の人はそれと同じぐらい「新しいもの好き」でも有名です。伝統を守り続ける心と新しいものを受け入れる気質が京都が古都であると共に、常に時代の最先端をいく都であり続けたのでしょう。この二つの価値観の共存がなかったら1,000年以上も首都であり続けることは出来なかったのではないでしょうか?アーチ状のレンガ造りの橋は、古代ローマの水道橋が手本になっていて、現在も琵琶湖から水を運ぶ疎水として活躍しています。

南禅寺界隈

境内には南禅院、開山塔の天授庵、塔頭の金地院などがあり、5分ほど歩くと永観堂があります。南禅寺から永観堂に向かい哲学の道を通り、銀閣寺まで歩く南禅寺~銀閣寺コースは季節を問わずおススメですが特に紅葉の時期は最高です。南禅寺、南禅院、天授庵、金地院、すぐ近くの無鄰菴、永観堂、銀閣寺近くの法然院などは特に京都を代表する紅葉の名所です。これほどの場所が徒歩圏内というのはとても贅沢なエリアです。紅葉の時期に京都に訪れた際には絶対に1日はこのエリアに行かれることを強くお勧めします

いかがでしたか?

今回は前の週に龍安寺の石庭を紹介した時に虎の子渡しの庭についてお伝えしたこともあり、小堀遠州作と伝わる虎の子渡しの庭がある南禅寺を取り上げました。また秋になり紅葉シーズンを控えて、紅葉の名所をいくつかご紹介したいという思いもありました。紅葉まではまだ少し時間があるので是非今から計画してみてはいかがでしようか。

image by: 京都フリー写真素材

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【著者】 英学(はなぶさ がく) 【発行周期】 ほぼ週刊

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