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重いテーマが世界の時流。今年のNo.1台湾ドラマは『悪との距離』

今年も台湾のテレビ番組を表彰する「ゴールデン・ベル・アワード」が開催され、無差別殺人事件を題材とした連続ドラマ『悪との距離』が最多6部門を受賞しました。紹介するのは、メルマガ『黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」』の著者で台湾出身の評論家・黄文雄さん。台湾に限らずドラマや映画のテーマが重くなっていると、各国の話題作をいくつか取り上げ、その背景を論じます。

【台湾】台湾で話題の映画・ドラマ紹介

「悪との距離」が最多6部門受賞 台湾のテレビ番組賞 第54回金鐘奨

台湾で「第54回ゴールデン・ベル・アワード」(電視金鐘奨)授賞式が行われました。これは、より多くの支持を得たテレビ番組および関係者を表彰するものです。

今年、やはり最も注目されるのは連続ドラマ作品賞でしょう。今回は、『我們與惡的距離(悪との距離)』が最多6部門の受賞で圧巻でした。このドラマは、ある無差別殺人事件を題材とし、加害者、被害者、支援者、メディアなど様々な立場の人々の視点を通じて、「悪との距離」を考察した社会派ドラマです。人気俳優の温昇豪が出演していたことも人気を得た一因でしょう。

このドラマのテーマは、日本、台湾、韓国などの東アジア各国が共通して抱く課題です。韓国では、実話に基づいた子供の虐待を描いた映画『虐待の証明』が大ヒットしたそうです。虐待を受けて成長した女性が、ある日、被虐待児と出会い、その子を守ろうとするという内容です。虐待シーンや主人公の壮絶な人生など、全編通して重い内容です。日本では11月15日に公開予定だということです。

虐待被害者が痣だらけの少女と出会う…実在事件を基にした衝撃作が日本公開

また、アメリカ映画で現在世界的ヒットとなっているのが『ジョーカー』です。この話もとても悲惨です。現在日本でも公開中なので、あらすじを詳しくは書きませんが、社会から見放された男が、殺人をきっかけに狂気に走る話だということです。

『ジョーカー』、『ダークナイト』比251%で圧倒的No.1「ガツンと心に残る」

日本での上映は間もなく終了する映画ですが、中東の貧困と子供をテーマにした映画『存在のない子供たち』も、じつに重いテーマを描いた作品です。

『存在のない子供たち』

この映画に出てくる子供たちが心に抱くのは、「毎日殴られるだけで、なんで生まれてきたんだろう」という思い。『虐待の証明』にも「生まれてきてごめんなさい」というセリフが出てきます。

殺人、犯罪、貧困、虐待、紛争など、マイナスのものがドラマや映画を通して人々の心に響いています。これは、社会が病んでいる証拠ではないでしょうか。明るい未来を描けずに、悲しいことばかりを身近に感じて共感してしまう。そんな殺伐とした社会はあまりに悲しいと思います。世界は、子供たちが明るい未来を描ける社会、大人たちが人生の楽しさを享受できる社会、そんな社会へ向かって進んでいってほしいと思います。

伝統的な社会規範が失われ、新しいモラルを確立できないのも、社会が閉鎖的になっている一因かもしれません。平和、広義、公平、平等と叫びながら、現実にはそれは「きれいごと」であり、実在はしません。1960年代後半、「ベ平連」が主張する「平和」について、「建前と本音」があまりに乖離していることを知ってから、私は「進歩的文化人」の言うことは信用できなくなりました。

最後に、いま私が気になっているドラマをご紹介したいと思います。現在放送中の台湾ドラマ『用九柑仔店』です。

マンガが原作で、出演は期待の若手俳優・張軒睿、ベテランの人気俳優・邱澤など。物語の舞台は、台湾南部の小さな雑貨店。雑貨店の店主が病で倒れたのをきっかけに、台北に就職した孫が店を継ぐために戻ってくるという話です。

物語は、雑貨店を通して様々な人間模様が描かれ、様々な事件が起こります。田舎ならではの閉鎖的な面も描かれていますが、田舎の良さも十分に感じることができます。特に、人と人との距離が都会とは全く違うという部分が私は好きです。セリフの半分以上が台湾語というのも、アイドルが出るドラマにしては珍しいのではないでしょうか。

用九柑仔店(wikipedia)

芸術の秋、週末のひとときは話題のドラマや映画を楽しんでみてはいかがですか。

image by: 『悪との距離』公式ホームページ

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