台風19号による河川の氾濫により、埼玉県川越市でメンテナンス中だった高知県の消防防災ヘリが浸水被害に遭いました。この事実をすぐに高知県は公表しています。一方、台風15号よる被災が疑われているのが、横浜市の消防防災ヘリです。事の次第を伝えるのは、メルマガ『NEWSを疑え!』を主宰する軍事アナリストで危機管理の専門家でもある小川和久さんです。真相はわかりませんが、機材が予定通りに使用できないことは明らかになっており、住民に対して説明がないことを問題視しています。
消防防災ヘリも被災。高知と横浜の対応の差
相次ぐ台風と大雨の被害は、救助にあたる消防防災ヘリコプターにも及んでいるようです。まずは10月15日付の高知新聞から。
「東日本を襲った台風19号の影響で、埼玉県川越市で耐空検査中だった高知県消防防災ヘリ『おとめ』が、周辺河川の氾濫で浸水被害に遭ったことが15日までに分かった。高知県消防政策課が機体の損傷度合いなどについて情報収集を急いでいる。
高知県消防政策課によると、『おとめ』は10月9日から毎年必要な耐空検査のため、川越市にある航空会社『朝日航洋』の川越メンテナンスセンターに入っていた。メンテナンスセンターは川越市を流れる入間川と越辺(おっぺ)川に挟まれた地区にあり、越辺川の堤防が決壊して『おとめ』が入る格納庫も浸水したという。
高知県には13日午前7時40分ごろ、朝日航洋から『ヘリが浸水した可能性がある』との一報があった。その後、朝日航洋から大まかな状況説明があったが、14日時点で被災現場一帯は立ち入り禁止になっており、機体の損傷程度など詳しい状況は分かっていない。
高知県消防防災ヘリ『おとめ』は2014年4月、県が南海トラフ地震に備えて消防庁から無償貸与される形で導入された。現在はヘリ『りょうま』との2機態勢で、災害時の情報収集や傷病者の救急搬送などの際に運用されている。
今回、『おとめ』の耐空検査は3、4カ月程度が見込まれていた。『りょうま』は来年4月から検査入りする予定となっているため、高知県消防政策課は『仮に「おとめ」が損傷し、修理に要する期間が「りょうま」の検査と重なった場合、その間の災害対応は四国3県に協力を仰ぐことになる』としている。(海路佳孝)」(10月15日付 高知新聞)
高知県がヘリの被災を公表したのは、もちろん県民の命に関わる機材だからです。
しかし、ヘリコプター関係者の間では「腑に落ちない情報」も飛び交っています。なんと、横浜市消防局のヘリコプターも9月の台風15号で被災し、飛行不能になっているのに、それをなんとなく誤魔化しているのではないかというのです。
関係者の間で口にされており、Twitterにも投稿されている話を総合しますと、次にようになります。
「横浜市金沢区福浦にある横浜ヘリポートでは、強風で格納庫のアルミ製のシャッターがめくれ上がり、そこから大量の海水が流入した結果、ヘリコプター(はまちどり2)の計器板から下のあたりが水浸しになり、取り外して使えるのはエンジンとメインローター、テールローターくらいになってしまった。これを元通りにすることになれば新品を導入するのと同じくらいの費用となり、平成27年6月に導入した新しい機体ということもあって、横浜市では新品に更新すべきかどうか悩んでいる」
高知県と横浜市のヘリはともにイタリア・レオナルド社製のAW139。価格は、今年9月から運用を開始した静岡県のもので25億9200万円、もろもろを含めると28億円ほどの機材とされています。それでも、これは天災ですからしかたのないことだと思います。
横浜市が「誤魔化している」と関係者から疑われているのは、あたかもヘリが被災していないようなふりをして、飛行できないことを公表しているからです。
はまちどり2が被災した情報は、既に台風15号の被害が出た数日後には関係者に共有されていました。しかし、横浜市消防局は9月14日の段階で2019年度に実施するヘリコプター離着陸訓練の予定を発表したのです。
関係者からは、「よかった、被害が軽かったんだ」という声が上がったのはもちろんのことです。ところが、10月1日になって横浜市消防局は「消防ヘリコプターの点検・整備のため、今年度の訓練をすべて中止」と発表したのです。
これ、なんだかおかしくありませんか。たしかに、「点検・整備のため」という言い方は間違いではないのですが、飛べないほどの点検・整備であれば前もってスケジュールに組み込まれており、9月14日の段階で訓練計画を発表することなどありません。これを関係者は「誤魔化している」「被災隠しだ」と疑惑の眼差しで眺めているのです。
事情はどうあれ、横浜市民の生命に関わる高価な機材です。そのうちの1機が飛べないのであれば、高知県がしたように、きちんと情報を開示すべきではないでしょうか。
それとも、はまちどり1だけで用が足りるというのであれば、横浜市民の1人として、納得いく説明が欲しいところです。(小川和久)
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