韓国政府は17日、急速に発展する人工知能(AI)を活用した「AI国家戦略」を発表。2030年までに最大455兆ウォン(約43兆円)の経済効果を創出し、経済協力開発機構(OECD)加盟国中で現在30位程度の生活の質を10位まで引き上げることを目標とし、推進していくことを決めたと聯合ニュースが伝えています。このAI国家戦略の中で、「IT強国を越えAI強国に」をビジョンとし、2030年までにデジタル競争力世界3位まで上げ、「人中心のAIの実現」を強調したということです。
実はAIで遅れている韓国
AI国家戦略を打ち出した韓国ですが、このAIの分野で韓国は大きく出遅れています。韓国の科学技術政策研究院(STEPI)が人工知能の開発能力における各国の公的研究機関を比較したところ、国別ランキングで中国、米国、日本から大きく引き離されて、韓国は10位だったといいます。これは2012~2016年の過去5年間でAIに関する論文の発表数をもとにしたもので、論文引用件数率においても、全体平均を下回る0.88%という結果になりました。論文引用件数率は研究価値を測る基準であるため、論文レベルが低い状況であることが浮き彫りとなっています。
毎年ノーベル賞の話題が出てくると取り沙汰されますが、韓国は自然科学分野でノーベル賞を受賞したことはありません(ノーベル賞自体2000年に金大中大統領が受賞した平和賞1つのみ)。他の先進国と比べて、韓国は基礎科学レベルが低いと言わざるを得ないのです。韓国経済研究院によると、米国のAI人材競争力を10とした時、中国が8.1、日本が6.0、韓国は5.2と評価され、韓国のAI専門人材が量的にも質的にも不足しているとしています。
他国から大きく水をあけられている現状を踏まえ、韓国政府が打ち出した「AI国家戦略」。AIインフラ拡充などの整備、AI集積団地を造成、さらに小学校や中学校でソフトウェアとAIの必修科目を拡大して低年齢から学習できる機会を設けるなど、様々な改革を行っていく予定です。
AI後進国となってしまった韓国、これらの状況に韓国のネットユーザーからは、「時代に乗れない大韓民国」「これが韓国の現実」「この国はいまだにどんな技術もぞんざいに扱っている。スーツを着て書類にサインする職業が最高だと思っている国」「韓国は北支援に全力投球中でAIに回す余裕はない」など、韓国政府に対する批判の声が多く寄せられているとRecord Chinaは伝えています。
「2045年にはAIが人間を超える」「AIが人類最後で最悪の発明になる」など人工知能の未来について飛び交う様々な予測や噂。では、日本のAIにまつわる現状はどうなのでしょうか?
厳しい日本のAI事情
AI先進国のアメリカや中国と比較すれば、日本のAI研究開発も遅れているといえるでしょう。日本政府は「AIの利活用に関し、アメリカや中国の企業などによる覇権争いが激しさを増しているが、我が国は後れを取っている」として、AIを各専門分野で応用できる人材を2025年に年間25万人育成することを目指すとしています。
また、民間でもソフトバンクグループの孫正義社長が、17日に東京都内で行われた国際シンポジウムで、AIは国力の増加に繋がるとした上で、「試験科目になければ日本人は勉強しない」とし、有能なAI人材の輩出に向け、大学入試で「義務化すべきだ」と話しました。
このようなAIを巡る動きに対して、ネット上では様々な意見が聞こえていきます。
東大がソフトバンクの200億円の出資でAI研究所を作る件で、AI後進国と言った孫さんが今更日本でみたいな声ある様だけど。日本でこれだけ資本入れてくれる実業家いないですよ。出資の理由がなんであれ、間違いなく感謝かと。こういう人達に見切られたら、日本終わるよ。
— 渡邊陽介 (@YohsukeW) 2019年12月12日
今後日本で求められる人材は、AIやロボットに「使われる側」ではなく、「使う側」の人間
そして欲を言うと、新たなテクノロジーを「生み出す」ことができる能力を持った人材が社会で必要になってくる
特に今製造業で働いてる人は、これから高確率で人手が必要無くなるから今の内に準備した方が良い pic.twitter.com/mOBOAVMj0P
— ぱぐみざわ (@pugmizawas) 2019年12月18日
日本のお家芸である素材技術も、AIの進歩によって、その優位性が覆されるかもしれない。あるいは、もう既に覆っているかもしれないと言うのが、このニュースの中で重要なポイントだと思う。
— gero – NO MORE ABE (@garirou) 2019年12月19日
現時点でのAI開発で最も脚光を浴びているのは、画像認識等の非言語分野であり、ここでは英語に弱い日本の技術者もハンディキャップ無しで戦えますが、私はむしろ日本語の言語処理の分野での優れた研究者の登場に期待しています。ニーズは結構高いのに、ここでは外国勢との競合が少ないので有利です。
— 松本徹三 (@matsumotot68) 2019年12月17日
ソフトバンク孫社長:大学入試でAIを試験科目に取り入れるべきと主張。それ以前にAI技術のベースは数学、特に「行列」などの線形代数。昔は「行列」を当たり前に学習したが最近の高校数学からは「行列」が削除されているらしい。この問題も大きい。https://t.co/SrQQdXbHqGhttps://t.co/5alAjFfnRQ
— 中村幸雄 Yukio NAKAMURA (@yukio_n_being) 2019年12月17日
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