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福祉事業者の「専門化」に注意。地域の中核人材を目指せ

さまざまな福祉活動に関わるジャーナリストの引地達也さんが、その活動の中で感じた課題や、得られた気づきについて伝えてくれる、メルマガ『ジャーナリスティックなやさしい未来』。今回は、福祉に従事している人が真剣であるほどに陥りがちな問題を提議。福祉領域が専門化することの弊害として、他の領域の人たちとの交流や情報交換がなくなってしまうことを懸念しています。それら諸問題の解決に繋がりそうな研究開発プログラムを紹介すると同時に、福祉従事にあたり楽しむことの大切さも説いています。

福祉従事者が「地域の中核人材」になるためには

障がい者の就労支援や障がい者の学びの可能性の追究に奔走している中にあって、当事者と向き合うのは最も大切なことではあるが、疎かにしていけないのが、支援者の育成や成長支援や、成長する場の提供、機会の創出である。

何よりも福祉に従事する人が、「福祉」の中で仕事を収めるのではなく、地域社会とつながりを持ち、当事者の社会での位置付けを自然な流れの中で確保できることが望ましい。そのために支援者は社会モデルを切り開く先駆者として歩んでほしいと思っているのだが、やはりそれは学びや機会の場がなければ難しい。

だから、その場をまずは研究として挑戦しようと2020年1月終わりから始めるのが、地域中核人材を育成するための研究開発プログラムである。

これは文部科学省の「専修学校による地域産業中核的人材養成事業」で採択された「障害者に関わる方のための障害者のライフステージに寄り添う地域サポーター育成事業」として行われる。目的は、地域の専修学校を活かして地域の福祉活動に従事する方々が、経験を糧により広範囲な仕事ができるようにするための学習プログラムの開発である。

福祉領域が専門化するのは、支援の質を向上させる点においては問題ないのだが、それがタコツボ化してしまい、ほかの領域と交流ができないこと、コミュニケーションがとれないことで、福祉そのものや関わる当事者も他者との交流ができなくなる弊害を招く恐れがある。

そのために、福祉領域の方が幅広い学問領域に触れ、アクティブラーニングにより他者とのディスカッションなどでほかの福祉領域の方々とつながり、知見を新たにしてもらうのが、本プログラムである。

福祉領域だけで収まってはいけない

学ぶ領域は「福祉学」「教育学」「社会学」の3つの人文社会分野の学問であるが、日々の仕事や暮らしから、私たちが学んできたものを、この3つの分野に落とし込みながら、それを自分なりの学問としてほしい。

同時に学びの楽しさを発見し、地域で福祉に従事しながら、各分野との連携や協働ができる人になっていただければ、との思いもある。「福祉学」「教育学」「社会学」の各分野が1項目2時間のプログラムを5項目行う予定で、本事業は、会場はさいたま市大宮区の埼玉福祉・保育専門学校、山梨県甲府市の甲府医療秘書学院。

日程は、さいたま市は「福祉学」を1月25日(土)午前と午後、2月1日(土)午前と午後、2月8日(土)午前の計5講座行い、甲府市が「教育学」を2月1日(土)午前と午後、2月15日(土)午前と午後、2月22日(土)午前の計5講座行う。

2会場ともに2020年度内に3つの分野を終了する予定で、すべて受講した方にはレポート提出などにより、「福祉の地域サポーター」の認証を行うことを想定している。現段階ではすべて受講も修了の認証も無料

この学習を経て福祉の中で、福祉を飛び越えて、支援者が躍動的に活き活きと過ごしてほしいと思う。福祉は地域から離れられないし、地域は福祉を伴う。その地域福祉を連携させ、福祉の領域そのものを躍動的な存在として、横断的な活動が活発になれば、地域福祉は楽しくなるはずだ。

そのためには、自分が楽しむ、楽しめる、楽しいのが大前提である。

私自身も楽しんでやることを基本としている。誰かが決めたであろう評価に気持ちを左右されるのはつまらない。「期待」という幻想の中で形作られた成果を出そうと焦る必要もない。

ただ、目の前にある必要な仕事を真剣にやり続けるだけ。そんなゆったり感を提唱しつつ、この言葉を口ずさんでみる。これを今年最後の本コラムの結びとしたい。「星空のごとく 急がずに 休まずに めぐれ誰しも おのが責務(つとめ)のまわりを」(ゲーテ)。

image by: Shutterstock.com

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特別支援教育が必要な方への学びの場である「法定外シャローム大学」や就労移行支援事業所を舞台にしながら、社会にケアの概念を広めるメディアの再定義を目指す思いで、世の中をやさしい視点で描きます。誰もが気持よくなれるやさしいジャーナリスムを模索します。

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【著者】 引地達也 【月額】 ¥110/月(税込) 初月無料! 【発行周期】 毎週 水曜日 発行予定

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