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高市早苗「ネガキャン動画疑惑」で四面楚歌。秘書関与の“事実”を答えぬ宰相のあまりにも苦しい言い逃れ

「週刊文春」のスクープにより端を発した、高市陣営の他候補に対する誹謗中傷動画の大量拡散疑惑。次々と放たれる「文春砲」に対して、高市首相は幕引きを図るが如く論点ずらしとも取れる発言を繰り返しています。今回のメルマガ『国家権力&メディア一刀両断』では元全国紙社会部記者の新 恭さんが、当案件を巡る国会でのやり取りを詳細に検証。さらに首相の答弁に見られる特徴的な対応手法を分析するとともに、政治家に求められる説明責任のあり方について論じています。
※本記事のタイトル・見出しはMAG2NEWS編集部によるものです/原題:誹謗中傷疑惑に頬被りを決め込む高市流答弁術

不可解、不合理、不自然。誹謗中傷疑惑に頬被りを決め込む高市流答弁術

自民党総裁選と衆院選で、他候補の誹謗中傷動画を大量に拡散したとされる高市陣営の重大疑惑。毎週にわたる週刊文春の追及が続く中、高市首相は、AIを駆使してそれを実行した松井健氏とは全く無関係、松井氏が勝手にやったこと、という印象をふりまく発言を国会で繰り返している。

ならば、でっち上げの報道として名誉棄損で訴えればいいのではないかと国会で指摘されても、「私は国家経営に取り組んでいる。そういうことに時間を使っている暇はない」とかわし、「では記事は捏造ということでいいか」と念を押されると、「私たちは他陣営の誹謗中傷をしたことがない。それを矜持としている」と話をそらすだけ。まさに、その発言は不可解、不合理、不自然。無理な言い逃れや、ごまかしだらけ、といえる。

そこで、注目の的になっているのは、そもそも高市氏の公設第一秘書、木下剛志氏と松井氏との間に接点があったのかどうかだ。

2025年9月から26年3月の間の木下氏と松井氏のショートメール、シグナル、LINEによるやり取りの記録を根拠に、二人が中傷動画拡散について合意していたという趣旨の報道を文春が続けているのだが、これに対し高市首相は「事実無根」「週刊誌は信用できない」と、頑として譲らない。

6月4日の衆院予算委員会。中道改革連合の伊佐進一議員は、文春が電子版で開した木下秘書とみられる音声について、高市首相を追及した。

木下秘書と松井氏が参加して昨年12月に開かれたZoom会議でのやりとりだ。木下秘書が語る。

「やっぱり、デジタルとアナログのコラボレーションで精度を上げていくということだと思うので」

「うまくですね、一緒にやれたらいいなと思います」

予算委員会でこの音声が流されたわけではない。委員長の許可が出ないからだ。伊佐議員は前日、質問通告のなかで、文春が公開した音声が木下秘書であるかどうかを確認したうえで質疑にのぞむよう、高市首相に求めていた。

ところが、高市首相の答弁は意外なものだった。

「一昨日は台風対応などもあってほぼ徹夜でした。昨日も、今日の70以上の質問があるので順次、いただいた通告に沿って、答弁書のチェックをしたりしてたんですが、委員(伊佐氏)の質問通告を見たのは今朝がた3時半でした」

「ご指摘の音声は会員制の有料オンラインなんですね。これまで、私の面識のない方の言い分をイメージ操作をして報道してきた雑誌の有料オンラインの会員になろうとは思いませんし、方法もなかったので確認できませんでした」

総理大臣の仕事が過酷であるのは理解できる。だが、これを聞くと、秘書官は何もせず、高市首相一人が悪戦苦闘しているような印象を受ける。そんな仕事のやり方をしているとしたら、総理大臣という大任は担えない。

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音声が「木下氏」であるか否かの言及を避けたい高市首相

質問通告が14人の議員から出され、それに対する答弁書を用意するのは、間違いなく大変だ。だが、そのための秘書官ではないか。手分けして質問項目を読めば、伊佐議員が求めているのは「木下秘書」の声であるかどうかの確認だけだとすぐにわかる。

高市首相がいちいち文春デジタルの会員になる必要はない。秘書官の誰かが初月度300円の会費を払ってとりあえずの会員登録をし、公開された音声を高市首相に聞いてもらえば、瞬時にそれが木下氏のものかどうか判断できるはずだ。

「音声の主」を問われているのに、高市首相はわざと「秘書官が会員になってそれを聞いて文字おこしをして私に伝えろという話だったんでしょうか」と、とぼけて見せる。ここで何も文字おこしをする手間は必要ない。音声を聞けば、それでカタが付く話だ。

伊佐議員は「なんなら、今わたしここに音声データを持ってますので、休憩して聞いてもらいたい」と当然の要求をしたが、坂本哲志委員長(自民)は、「ここで休憩なんてできない。テレビ中継をやっているし、中東関係の論議をしなければなりません」とそれを却下した。

要するに、高市首相は音声が「木下氏」であるかどうかに言及するのを避けたいのだ。「木下の声です」と認めたくもないし、「別人です」と嘘をつきたくもない。だから、理由にならない理由をこじつけているだけのことである。

いつものことだが、答えに窮すると、高市首相は凄みを利かせて開き直る。

「衆院選においてなにか私の事務所に違反行為があったという疑いをお持ちなのか。それを具体的に教えていただけましたら、私は誠実に答弁をいたします」

伊佐議員はそんなことを言っていない。高市事務所の公式な選挙活動の話ではなく、木下秘書が他陣営に不利になる動画の大量作成・拡散を松井氏に依頼したのではないかという疑惑について追及しているのだ。

結局、この日の衆院予算委では決着がつかず、質疑は翌日の参院予算委に持ち越された。問題の音声を前夜遅く確認したという高市首相は岸真紀子議員(立憲)に、こう答えた。

「内容は、広く国民の声を聴くためにはどうしたらいいかといったものでした。昨年12月の音声であり、総裁選で他候補を批判するものではありませんでした」

岸議員が、あいかわらず論点をすり替えようとする首相の姿勢にあきれた表情で「内容ではなく、公設秘書の声かどうかを聞いているんです」と再び質問すると、高市首相からようやくこんな答弁が返ってきた。

「秘書本人かどうか、あのような音声をもとに判断するのは難しい。途中で登場する“AIサナエ”は明らかに私の声ですが、私の発言や発音とは違います。秘書のものとされた音声も、私と会話している時より、かなり高い声でハキハキとしゃべっていたので、違和感がありました。いずれにしても、やりとりは他候補を批判するものでもなく、これはどう考えても確認のしようがありません」

20年も秘書として支えてくれた木下氏の声と同一であるかどうかを聞き分けるのが難しいという。文春はこれに対抗するため、音声の一部を急遽、無料公開した。YouTube上に残る木下氏の声と比較してみると、そんなに難しい判断だとは思えない。

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物理的、権威的、主観的回避を繰り返す「トリプルガード」

高市首相の発言には、傲慢と被害意識から生まれるある種の「回避パターン」がある。

「台風対応で徹夜」「質問が70以上」などといった状況を設定し、どんなに自分が国民のために身を削っているかを訴える。「週刊誌は信用できない」「イメージ操作してきた」と情報の出所そのものの価値を貶め、それがいかに総理としての仕事の妨げになっているかを想起させる。そして、肝心な音声については「普段と違って声がハキハキしている」などと主観的な違和感を強調し、「確認のしようがない」と言って逃げを決め込む。物理的、権威的、そして主観的な回避を繰り返す「トリプルガード」である。

高市首相は「私自身の戦い方の流儀をずっと傍で見ていた秘書でございますので、週刊誌の記事を信じるか、秘書を信じるかというと、私は秘書を信じます」と言い張っている。

しかし問題は、高市首相が何を信じるかではなく、事実はどうだったのか、ということである。身内をかばうのではなく、客観的な調査を行うべきではないか。

最初は文春報道を無視していたテレビ、新聞も、国会での追及を報じる形で、この一件を取り上げはじめた。今後、問題がさらに大きくなっていく可能性があると見通したからだろう。

共同通信は6月7日、松井氏がオンライン取材に応じ、木下氏から「小泉氏を逆転するにはどうすればいいか」と相談され「ネガティブな発信」を提案したと証言していることを報じた。今月1日に行われたこの取材では、弁護士同席のもとに松井氏が動画作成の経緯を詳細に説明。共同通信は松井氏が秘書とやりとりした携帯電話のメッセージを入手し、電話番号を木下秘書本人のものと確認したという。

「週刊誌の記事は全く信用しておりません」という高市首相。では、共同通信の調査については、どうなのか。

国会では今、選挙期間中のSNSによる偽情報拡散対策として、来春の統一地方選に間に合うよう、今国会中に公職選挙法と情報流通プラットフォーム対処法を改正する方向で与野党の議論が始まったばかりである。公選法については、虚偽や事実の歪曲によって選挙の公正を害してはならないとの内容を追加することで、すでに一致しているという。

高市首相の発言を聞いていると、こうした国会の動きが、まるで他人事のようだ。まずは自陣営に持ち上がった誹謗中傷疑惑について、きちんと説明責任を果たすのが、宰相としての値打ちを高める近道ではないだろうか。

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image by: 首相官邸

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