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躊躇なく都市封鎖を。緊急事態宣言だけでは止まらないコロナ伝播

4月7日にようやく緊急事態宣言が出されたものの、その運用を巡っては国内外から多くの疑問や懸念の声が上がっています。諸外国のような強制力を伴わないこのような措置で、日本は新型コロナウイルスとの戦いに勝つことはできるのでしょうか。今回の無料メルマガ『ジャーナリスト嶌信彦「時代を読む」』ではさまざまなメディアで活躍中の嶌さんが、新型コロナと対峙する世界の現状を改めて確認するともに、安倍総理は都市封鎖に関して躊躇すべきでないとしてその理由を記しています。

都市封鎖を躊躇するな コロナ伝播をさせないことが第一

安倍内閣は7日、緊急事態宣言を発令し、5月6日までの1ヵ月間、東京など7都府県で外出自粛や学校、百貨店などの使用制限を要請できる私権の制限に踏み切った。ただ、一方で都市や道路の封鎖はしないし、公共交通機関は運行することを強調した。しかしコロナウイルス感染による死者を減らすには、一見やさしい措置を残すよりあらゆる選択肢を持つことの方が重要ではないか。

「都市封鎖(ロックダウン)や道路封鎖をしないのは国民の動揺に配慮したからだ」と安倍首相は説明している。しかし国民が動揺するのはコロナウイルスが蔓延することであり、コロナウイルス感染を阻止するためなら多くの国民は都市封鎖なども甘受するのではないか。安倍内閣は緊急事態宣言の発令についても躊躇し続け、結果として遅すぎたと批判を浴びた。今回の都市封鎖などについても同じ轍を踏むことにならないかどうか、懸念してしまう。

いま世界では、4月9日13時30分時点(米、ジョンズ・ホプキンス大学)で感染者は148万4,811人、死者は8万8,538人に達している。一番多い国はアメリカの43万2,132人、死者14,817人で、2位以下スペイン14万8,220人(死者1万4,792人)、3位イタリア13万9,422人(死者1万7,669人)、4位ドイツ11万3,296人(死者2,349人)、5位フランス8万3,080人(死者1万887人)、以下、中国、イラン、イギリス、トルコ、ベルギーが上位10ヵ国で、いずれも感染者が約8万2,000人から2万2,000人。死者も6,000人台から800人台までと並んでいる。(※)

コロナウイルスは中国で発生し、ヨーロッパで拡大したため欧州での感染者数が多いものの、医療専門家たちは「いずれ2~3週間遅れで日本にも伝染してくる」とみる人が多い。アメリカでは拡大防止のための行動自粛措置を維持した場合でも死者は10~24万人に及ぶ可能性があるとしたが、7日アダムス米公衆衛生局長は、ニューヨーク州などの安定化の兆しにより予想を下回る可能性があると述べた。

ジョンズ・ホプキンス大学では感染症の死者が世界で3月20日に1万人、25日に2万人超、28日に3万人超と増え、3月末には4万人を超え増加ペースは衰えていないと指摘しているのだ。日本の感染拡大は欧米より遅いペースだが、日本だけが例外的に低く収まるとみるのは甘いと見るべきだろう。

緊急事態宣言を発表するとアベノミクスによる景気回復はさらに遅れると懸念し安倍首相はこれまで宣言を避けてきた。都内で初めて感染者が確認されたのは1月24日だが、3月17日になって累計で100人を突破、以後急増し9日午前10時半時点のNHKの情報によると全国で4,979人、死者105人、退院632人(クルーズ船を除く)に達した。また、都内では8日新たに144人の感染が新たに確認、全国では515人の感染され、初めて500人を超えている。

このため医療専門化や自治体関係者などから、このままだと「国民の生命と健康に重大な被害を与える」「全国的な急速なコロナの蔓延は国民生活と経済に甚大な影響を及ぼす恐れがある」と警告が相次ぎ、結局、緊急事態宣言に至ったとみられる。

安倍首相は会見で「人と人との接触機会を最低7割、極力8割削減できれば2週間後に感染者の増加をピークアウトさせ、減少に転じさせることができればできる」と述べている。8割減らすとは屋内で会う人を10人から2人にすることを意味するという。ただ企業に出社したり、営業で外回りをしている人たちにとって8割減らすことは至難だろう。

また日本の弱点は初動が遅れたり、その後の調査が不十分で感染経路が半分もわかっていないことだ。感染経路がわからないと追跡が難しく感染の広がりを抑えることも困難になってしまう。都市封鎖をおこなっている海外では日本の緊急事態宣言の効果を疑問視する声が多いのもこうした事情があるとみられる。いまや伝染は国境を越えグローバル化しているだけに、日本も国内の抑え込みだけでなく世界にどう貢献できるかといった施策も考えるべきだろう。

※ 4月8日18時時点のジョンズ・ホプキンス大学発表の数値ではフランスの感染者数は11万70人でしたが9日13時30分現在では8万3,080人と変更されておりました。サイト上に理由は書かれておりませんが、引用先に掲載の情報をそのままお届けいたします旨ご了承ください。

Coronavirus COVID-19 Global Cases by the Center for Systems Science and Engineering (CSSE) at Johns Hopkins University (JHU)

image by: StreetVJ / Shutterstock.com

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ジャーナリスト。1942年生。慶応大学経済学部卒業後、毎日新聞社入社。大蔵省、日銀、財界、ワシントン特派員等を経て1987年からフリー。TBSテレビ「ブロードキャスター」「NEWS23」「朝ズバッ!」等のコメンテーター、BS-TBS「グローバル・ナビフロント」のキャスターを約15年務め、TBSラジオ「森本毅郎・スタンバイ!」に27年間出演。現在は、TBSラジオ「嶌信彦 人生百景『志の人たち』」出演。近著にウズベキスタン抑留者のナボイ劇場建設秘話を描いたノンフィクション「伝説となった日本兵捕虜-ソ連四大劇場を建てた男たち-」を角川書店より発売。著書多数。NPO「日本ニュース時事能力検定協会」理事、NPO「日本ウズベキスタン協会」 会長。先進国サミットの取材は約30回に及ぶ。

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【著者】 嶌信彦 【発行周期】 ほぼ 平日刊

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