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脱北者が語る北朝鮮で感染症が発生した際の悲惨な死体処理の実態

前回、『統一日報』に掲載された脱北者の手記を紹介し、「脱北者が語る悲惨な医療実態」を明かした北朝鮮研究の第一人者の宮塚利雄さん。読者の要望に応え、今回のメルマガ『宮塚利雄の朝鮮半島ゼミ「中朝国境から朝鮮半島を管見する!」』では、前回記事で割愛した軍隊や教化所(刑務所)で感染症による死亡者が発生した場合の悲惨な死体処理について紹介。韓国のビラ撒きに抗議するマスク姿の平壌市民の映像の向こう側に、医療物資の乏しい地方の惨状を想像しています。

感覚が麻痺する人間の死と遺体処理 ある脱北者の証言

中国武漢発の新型コロナウイルスの感染者は地球上の全地域を席捲したが、北朝鮮とわずかの国がWHOに「感染者ゼロ」と報告しているようだ。しかし、北朝鮮の「感染者ゼロ」は誰も信用していない。それどころか、北朝鮮での新型コロナウイルス感染状況に関するおどろおどろしい情報を「デイリーNK」などが伝えている。

それにしても北朝鮮が中国武漢発の新型コロナウイルスの感染を早期に国境を閉鎖したので、「感染者ゼロの可能性もある」とアメリカの北朝鮮問題専門家が宣(のたま)ったが、この人物は単に北朝鮮の言うことを鵜呑みにしたとしか思えない。

そこで前号に[伝染病が発生しても誰にも頼れず、どこにも救いのない国]という脱北者の手記を紹介したところ、当メルマガの読者から「この脱北者の証言は北朝鮮のコロナ感染者に関するいかなる情報よりも信ぴょう性がある。『統一日報』を読むことができないので、ぜひ、続きの記事も紹介してほしい」という依頼があった。

北朝鮮政府が公式に感染状況を発表していない中で、様々なマスコミが勝手に「北朝鮮のどこそこで感染死亡者が何人発生した」などと、さも知ったかぶりのように報じているが、このような隔靴掻痒の感がある情報は信用するに足りない。それよりもこの脱北者の証言は北朝鮮におけるコロナ感染状況を知る上で貴重な証言である。前号の続きを紹介する。

一番ひどい状況は伝染病で死んだ人の死体処理だが、その中でもひどいのは軍隊と教化所(刑務所)での死体処理だ。劣悪な環境の軍隊内で伝染病が発生するとすぐに集団死につながる。

 

これは極秘である、地面を掘って死体を全部その中に入れ、火葬して掘り出した土を盛って墓を作る。墓を作るところはマシで、墓がないところも結構ある。亡くなった人の家族には、時間がある程度過ぎてから「戦死家族」証書と一緒に伝達した。生活に余裕がある家族は墓所に行ってみるが、そうではない家族は「戦死者家族」証書と写真で法事を済ませていた。

 

昔は戦死者家族証書でコメや食用油を国から少しもらったけれど、それは1990年以前のことだ。何年も経ってから子どもの死因を知って、「なぜ病気に罹ったときに家に帰してくれなかったのか」と部隊に抗議をしながらもう一度泣き崩れる家族を見て、金氏一族に天罰を与えない空が残念でしようがなかった。

 

軍隊のような実態はあちこちで見られ、教化所(刑務所)はよりひどいし、国中が同様だった。このくらいになるともはや人と動物の価値観など区別がなくなって、ただぼうっとしてしまうのだ。日本に来て、犬や猫などのペットに対する社会的な認識を知って頭を強く打たれたような気持ちになり、北朝鮮の人権問題の深刻さに気づいた。今回は、北朝鮮で今までと同じことが起きないことを願うばかりだ。(3月11日付 統一日報)

教化所(刑務所)での無残な死体処理については映画「クロッシング」の描写が生々しく描かれており、伝染病の死者を土葬ではなく「火で焼いて処理する」ことは、映画「レッドクリフ(赤壁の戦い)」で、魏の曹操が自軍の部隊から伝染病の死者が出たときに、部下が「土葬にします」と言うと、「待て、死者をいかだに乗せて、向こう岸の孫権の部隊に流せ」と命令した。

孫権側に漂着した死者を乗せたいかだを見た孫権の兵士たちは我先に死者の身ぐるみはがしを行ったが、それを見た諸葛孔明が慌てて「そこから離れろ!」と叱咤し、死者と接した兵士たちを隔離し、土葬にするという意見に「土葬ではだめだ、火で焼いて処分する」という、丸太を組み上げたところで焼却処分する場面が出てくるので参照してほしい。

前号で「伝染病が派生した地域に派遣された人たちが、防疫服などないため、病気がうつるのが怖くなって逃げてしまい、閉鎖地域の人は食べ物などを手に入れるためにあっちこっち行くからどんどん広がるのだ」と紹介した。そんな中で、太った白豚の金正恩は自分だけはマスクをせず、その他の幹部たちなどにはマスクを着用させており、平壌市民がマスクをしている姿を「朝鮮中央テレビ」は報じているが、地方はこのような状況とは違うはずだ。

金正恩の「逃避行」といい、「コロナ感染者ゼロ報道」といい、北朝鮮関連情報に惑わされるのもいい加減にしてもらいたいものだ。(宮塚コリア研究所代表 宮塚利雄)

image by: Alexander Khitrov / Shutterstock.com

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元山梨学院大学教授の宮塚利雄が、甲府に立ち上げた宮塚コリア研究所から送るメールマガジンです。北朝鮮情勢を中心にアジア全般を含めた情勢分析を独特の切り口で披露します。また朝鮮半島と日本の関わりや話題についてもゼミ、そして雑感もふくめ展開していきます。テレビなどのメディアでは決して話せないマル秘情報もお届けします。長年の研究対象である焼肉やパチンコだけではなく、ディープな在日朝鮮・韓国社会についての見識や朝鮮総連と民団のイロハなどについても語ります。

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