インバウンド需要の高まりから「民泊」が法で認められたのが、2018年の6月。あれから2年、新型コロナウイルスの流行で海外からの旅行者が激減した今、民泊施設はどのような形で利用されているのでしょうか。マンション管理士の廣田信子さんが自身の無料メルマガ『まんしょんオタクのマンションこぼれ話』で、その意外な現実をレポートしています。
多くのマンションでの「民泊」禁止は正解だった
こんにちは!廣田信子です。
2年前の今頃、大きな話題になっていたのは、「民泊」でした。2018年6月15日に「住宅宿泊事業法」が施行され、正式に「住宅宿泊事業法」による「民泊」が開始されました。私も、2018年の夏休みは「民泊」を利用してみました。何だか、遠い昔のことのように思います。
多くのマンションでは、施行までに、民泊禁止の規約改正を行って、「民泊」がマンションに入って来るのを阻止しました。「住宅宿泊事業法」の施行により、違法民泊の取り締まりも厳しくなり、マンションにおける違法民泊問題は概ね解決してきました。
もし、新型コロナウィルスの感染拡大がなかったら、今頃は、東京オリンピックの真っ最中です。民泊施設は高価格でも満杯だったことでしょう。その時期を目指して、民泊事業を個人で始めた方も少なくありません。それが一転、コロナの影響で、外国人旅行者はほぼゼロ。人の移動が制限され国内需要もあまりありません。
「民泊」は、インバウンド需要を見込んで増えた宿泊施設ですから、大きな打撃を受けているはずです。「民泊」は今どうなっているのでしょうか。
6月に、2019年度(2020年3月まで)の「住宅宿泊事業法」による民泊の状況が観光庁から発表され、順調に登録件数が伸びているという内容でした。コロナ禍で、民泊事業者が大打撃を受けていると聞いている最中だったのでちょっとびっくりしました。
でも、確かに3月末までの状況はそうだったんでしょう。その後は、大きく変わっています。7月7日現在で、登録件数は2万6,473件です。登録件数は増え続けていましたが、今年5月から7月までの連続3カ月、新規登録数より廃業数が上回る状況が続き、登録件数が減っています。
「住宅宿泊事業法」による「民泊」は、年間営業日数の上限180日という制限があり、採算性を確保するのが難しいことから、コロナ以前から、「旅館業法にも基づく簡易宿所」としての「民泊」に移行するために、「住宅宿泊事業法」による「民泊」の廃業届出数は増えていました。
今のコロナの感染状況をみると、今後、ますます廃業が増えると予想されます。そんな状況で、民泊関連事業者による新たな事業展開が始まっています。コロナ禍で生まれた新たな需要、海外からの帰国者や感染者の濃厚接触者の自主隔離に使われているというのです。そのためのサイトも出来ています。
また、コロナ禍で、急増したテレワークの受け皿となるケースもあります。ワーキングスぺースとして空間を時間貸しするのです。ベッドを一部片付け、インターネット環境を強化し完全にワーキングスペースに変えているところもあります。ただし、「住宅宿泊事業法」の民泊施設は、宿泊に限られるので、時間貸しには使えません。
独立した空間である「民泊施設」は、確かに、コロナ感染の疑いがある人の隔離にも、コロナ感染の心配をしないで仕事をするためにも、すぐれた空間であるとは思いますが…使用する人が入れ替わる状況で、厳格なコロナ対策を求められているホテル並みに、コロナ対応ができているのか不安です。
こうなってくると、「民泊」とはそもそも何なのか…の定義が分からなってきます。改めて、一般のマンションで「民泊」を禁止にしたのは、正解だったと思います。利用者の情報が秘匿される民泊では、知らないうちに、コロナ感染の疑いがある人の隔離に使われていた…というようなことも起こり得るのですから。
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