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金正恩は「法の上」の存在。傲慢指導者と食糧難に喘ぐ北朝鮮人民の悲惨

コロナ防疫のために国境を封鎖する北朝鮮では、金正恩氏自慢の肥料工場の稼働もままならず、中国からの支援米11万トンも大連港に留め置かれたままとなっているようです。メルマガ『宮塚利雄の朝鮮半島ゼミ「中朝国境から朝鮮半島を管見する!」』著者で北朝鮮研究の第一人者の宮塚利雄さんは、厳しさを増す北朝鮮の食糧事情を紹介するとともに、禁煙法を制定しながら、自身は「法の上」に存在するかのようにタバコを燻らせる金正恩氏の指導力にも疑問を呈しています。

食べる問題を解決できると思えない「法の上」の金正恩

朝鮮中央通信によると、平壌で開かれた朝鮮労働党中央委員会第8期第2回総会(2月8日~11日)は9日、2日目の会議が行われ、金正恩総書記が報告で今年の経済目標や対外活動に関する課題に言及した。

その中で、農業問題について「食料問題の解決のためにあらゆる代価を支払っても結果を出すべき国家の重大事」と訴え、農業生産の向上を強調し、対策を指示した。

会議では「今年の農業の成否がかかっている」として、営農物資を保証するための国家的対策を至急講じる方針も打ち出されたが、北朝鮮は中国・武漢発の新型コロナウイルスの防疫を名目にした国境封鎖が1年以上におよび、北朝鮮の食糧難に追い打ちをかける中、金正恩総書記は危機感を抱いている。

「衣食足りて礼節を知る」と言うが、北朝鮮は「食衣住」である。金日成主席が「我が朝鮮人民の最も理想とする生活像」は「白いコメのご飯を食べて、肉入りのスープを飲み、絹の着物を着て、瓦ぶきの屋根の家に住むこと」と言って人民に希望を持たせたが、実現できず、続いて金正日総書記も「我が人民がかつてトウモロコシ米を食べていた、などと言われることがないよう」にと、「白いご飯と肉入りスープを飲む」ことの実現を図ったが、単なる言葉の羅列に終わった。さらに、金正恩総書記も「我が人民がこれ以上ベルトを締めることがないように」食糧増産に励み、朝鮮人民の長年の宿願である「食べる問題の解決」を口にしたが、いまだに実現できずにいる。

昨年だったか、金正恩総書記の肝いりで建設された北朝鮮屈指(?)という中部の肥料工場ですら必要な部品が輸入できず、稼働を停止したという。食糧生産においては「良質な肥料と土壌、それに種子」の供給が全てであるが、国境封鎖で肥料などが入ってこなくなった。北朝鮮は「我が国が誇る主体肥料の生産が実現した」と喧伝したことがあったが、その「主体肥料」が北朝鮮の農業生産にいかほどの貢献をしたのか、その後あまり報じられることはない。

北朝鮮では「窒素・燐酸・カリ」の3大肥料をまともに生産できず、人糞を代用しているのが現実である。北朝鮮は長年の食糧不足を輸入や海外からの人道支援に頼ってきたが、昨年、中国が対北支援用に準備した米11万トンについて、コロナウイルスの流入を防ぐという理由で受け取らず、中国の大連港に留め置かれたままだと報じられている。

満々と太った金正恩総書記は、人民に飢えを強いながら、自分はいかにも人民の食べる問題の解決に尽力しているかのようなパフォーマンスを取っているが、肝心の物資の供給が潤沢に行われない以上は、単なるスローガンに終わるのは目に見えている。

ところで、この金正恩総書記は、昨年11月に制定された禁煙法によって、劇場をはじめとするらゆる公共施設で喫煙すると厳しく処罰すると定め、人民に禁煙を強要した。しかし、今年のソル(旧正月)の大晦日だった2月11日にも、劇場で党幹部たちとソル慶祝公演を観覧したとき、彼の指には、たばこが挟まっており、机の上には灰皿とマッチが置かれていた。

北朝鮮の人民は、たばこの紫煙をくゆらすのが至福のいたりであると聞いたが、人民には禁煙を強いながら自分は“最高尊厳”として、雲の上ならぬ「法の上」に存在するものと心得ているようだ。国を統治する者が自ら違法をしでかしているのである。このような指導者が永年の宿痾(しゅくあ)である「食べる問題の解決」を実現できるとは思えない。(宮塚コリア研究所代表 宮塚利雄)

image by:Alexander Khitrov / Shutterstock.com

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元山梨学院大学教授の宮塚利雄が、甲府に立ち上げた宮塚コリア研究所から送るメールマガジンです。北朝鮮情勢を中心にアジア全般を含めた情勢分析を独特の切り口で披露します。また朝鮮半島と日本の関わりや話題についてもゼミ、そして雑感もふくめ展開していきます。テレビなどのメディアでは決して話せないマル秘情報もお届けします。長年の研究対象である焼肉やパチンコだけではなく、ディープな在日朝鮮・韓国社会についての見識や朝鮮総連と民団のイロハなどについても語ります。

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