必要量が確保できずに新型コロナワクチンの摂取が遅々として進まぬ日本ですが、海外に輸出するほど数に余裕があるはずの中国でも、接種率は思ったように上がっていないようです。その裏にはどのような事情があるのでしょうか。今回のメルマガ『黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」』では台湾出身の評論家・黄文雄さんが、未接種者に厳しい罰則が科されるのにも関わらず中国国民がワクチンを忌避する背景を紹介。さらに、習近平政権は新型コロナウイルスに続き、ワクチンでの被害をも世界に拡大することになると警告しています。
※本記事は有料メルマガ『黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」』2021年3月31日号外の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会に初月無料のお試し購読をどうぞ。
プロフィール:黄文雄(こう・ぶんゆう)
1938年、台湾生まれ。1964年来日。早稲田大学商学部卒業、明治大学大学院修士課程修了。『中国の没落』(台湾・前衛出版社)が大反響を呼び、評論家活動へ。著書に17万部のベストセラーとなった『日本人はなぜ中国人、韓国人とこれほどまで違うのか』(徳間書店)など多数。
中国人も嫌がる中国産ワクチン、あまりの不人気に政府は珍奇な宣伝と強制接種を敢行
● 中國疫苗接種政治化操作 沒打不能上班、不能回家(中国でワクチン接種が政治化、摂取しないと出社も帰宅も不可に)
中国が自国の影響力を強化するために、新型コロナウイルスのワクチンを海外に提供する「ワクチン外交」を積極的に進めていることはご承知のとおりですが、国内でも中国政府はワクチン接種率を高めることを全国的に推し進めているために、ワクチンを摂取しない者は会社に出勤できない、ホテルに泊まれない、さらには帰宅すらも禁じられるといった措置が取られています。
アメリカの中国語放送であるラジオ・フリー・アジア(RFA)などによると、多くの中国人が、国産ワクチンの安全性に疑問を持っているため、ワクチンの接種ペースは当局の期待を下回っており、これを挽回するために、地方政府が強硬手段を講じているとのことです。
RFAが取材したところ、北京市大興区の住民は、ワクチンを打たなければ出勤や帰宅が許されていないといいます。「接種者が少ないと、地方役人は減点され、場合によっては免職されることがある」ということですので、役人も必死です。各村では、「ワクチンを打たなければ家に帰れると思うな、警察がドアの前にいる」という状態だということです。
中国語メディアの新唐人は、重慶小康集団が3月25日に出した通知書を入手しましたが、そこには、すべての職場単位ができるだけ多くワクチンを接種すること、それができないときに組織や個人の責任が問われることが明記されていたということで、これは強制的な一人っ子政策のレプリカになりかねないと懸念されています。
その他、中国ではワクチン接種を個人個人の「健康コード」に結びつけ、ワクチン未接種の場合には、スーパーなどでの買い物を制限する動きも報告されています。
冒頭の記事は、台湾の「自由時報」ですが、中国の街には、ワクチン接種を上げるために、さまざまなスローガンを掲げていることが、台湾でも話題になっています。
たとえば、「我們一起打疫苗,一起苗苗苗苗苗」というものです。日本語では「一緒にワクチンを打とう、一緒にワクチン、ワクチン、ワクチン…」といったところでしょうか。
中国で流行った「学猫叫」という曲に、「我們一起学猫叫、一起喵喵喵喵喵」(一緒に猫の鳴き声を学ぼう、一緒にミャオ、ミャオ、ミャオ…)という歌詞があるのを真似て、「喵」と同じ発音の「苗」を当てているわけです。
オリジナルの曲はここから聞けます(スタッフに教えてもらいました)。
● パンパンちゃん、フォフォちゃん‐猫の鳴を学ぶ(公式MV)
その他、中国の街ではワクチン接種を呼びかけるさまざまなスローガンが張り出されているそうです。たとえば、「2021年頭等大事,接種新冠疫苗」(2021年の最優先事項、新型コロナワクチンの接種)、「早接種、早放心,賺取健康一桶金」(早めの接種で早めの安心で、バケツ一杯のお金に相当する健康を手に入れよう)などですが、他にも、林俊傑の歌「一千年以後」の歌詞をもじって、「別等到一千年以後,你才打疫苗」(ワクチンは1,000年待つのではなく、すぐ打とう)というのも現れ、ネット上で笑いのネタになっているとのことです。
● 「我們一起打疫苗,一起苗苗苗苗」中國為加速疫苗接種率,各種奇葩標語笑爆民眾
中国政府が3月24日に発表した最新のワクチン接種受付数は8,000万人を超えたとのことです。とはいえ、13億人の中国人からすれば10%にも届いていませんし、中国のことですから、地方役人が受付数を水増ししている可能性もあります。
前述したように、中国では国産ワクチンに対する不安が大きく、あまり信用されていないことが、接種率の低さの背景にあります。「自由時報」によれば、香港では中国製ワクチンを接種した者のうち十数名が死亡したと報告されているのに加え、ペルーではシノファーム(中国国薬集団)の2つのワクチンの効果が約11.5%と33%しかないという臨床データ、ブラジルではシノパック(科興控股生物技術)のワクチンの効果が50%しかないという臨床データが報告されています。
さらには、中国ではここ数年間、汚染されたワクチンや偽ワクチンの問題が相次いで発生しており、そうしたことも中国人の不安を高めています。ここ数ヶ月で中国では偽ワクチンでの摘発が相次いでいます。
● 中国でコロナ偽ワクチンの摘発を強化 3億円近く稼いだ犯罪グループも
そんな折、中国オリンピック委員会が国際オリンピック委員会(IOC)に対し、東京と北京でのオリンピック参加者に中国製ワクチンの提供を申し出たことを受けて、3月11日、IOCのバッハ会長はIOC総会でこれを受け入れるかのような発言をしました。日本側には何の相談もなかったそうです。
● 五輪に中国ワクチン、波紋 IOCから相談なく日本「メンツ丸つぶれ」
しかし、日本側には何の相談もなかったことで、丸川珠代五輪相が「聞いていない」と答える事態になりました。そもそも日本で認証されなくてはワクチンは使用できません。丸川大臣も「わが国で中国のワクチンを中国の企業が承認申請しているかどうかについて私は把握していない」と述べ、中国のワクチンがオリンピックで使用される可能性を事実上、否定しました。
武漢で発生した新型コロナウイルスを隠蔽し、世界に被害を拡大した中国は、今度は中国製ワクチンの効果を世界に喧伝し、「中国が世界を救った」という構図を作り出したいと思っています。
ところが、その中国は共産党一党独裁の国で、しかも習近平国家主席への権力集中を強化し、さらに香港から民主主義をも奪おうとしているわけです。そのために情報を徹底的にコントロールし、政権に対して批判的な声は絶対に出ないように封殺しています。
中国国内でのワクチン接種を進め、いかに副反応が出ても、あるいはその効果がなかったとしても、中国では「中国製ワクチンは高い有効性が認められた」と発表するはずです。中国製ワクチンに問題があっても、絶対に発表しません。そのことは、前々からわかりきったことなのです。
発言の自由がない独裁国家の怖さはここにあります。中国は新型コロナウイルスの被害を拡大しただけでなく、ワクチンでの被害をも拡大するかもしれない。中国は主権在民ではなく、人権も人の命もきわめて軽い国です。主権在民で人権を重視する民主国家が、そのような非民主主義で情報統制の国が製造するワクチンに頼れるはずがありません。
八大元老のひとりである陳雲の息子・陳元は、すべての優秀な大卒者を共産党に入党させるべきだと提案したことがあります。中国共産党員が1億人に達すれば、中国共産党政権が永久不滅になるというのです。1人のエリートで15人の愚民を洗脳して操ることによって、政権が盤石になるというわけです。目下、中国共産党員は約9,200万人に達しています。とはいえ、「上に政策あれば下に対策あり」の中国です。そう簡単に、人民を洗脳できるとも思えません。
先述したワクチン接種推進スローガンをいくら掲げても、中国人自身、自国のワクチンを信用していないことは明らかです。役人が強制接種を進めていることは、まさにそのことを示しているのです。
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image by: Zoltan Tarlacz / Shutterstock.com
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2021年3月配信分
- 中国人も嫌がる中国産ワクチン、あまりの不人気に政府は珍奇な宣伝と強制接種を敢行(3/31)
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2021年2月配信分
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- 偽ワクチンの横行と隠蔽に走る中国の深い闇/日帝残滓を用日に利用する韓国のご都合主義(2/17)
- 北京五輪を糾弾しない森喜朗氏批判の偽善者たち/中国に政治を乗っ取られる南アの不安(2/10)
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2021年1月配信分
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2020年12月配信分
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2020年11月配信分
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2020年10月配信分
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2020年5月配信分
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2020年4月配信分
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2020年3月配信分
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2020年2月配信分
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2020年1月配信分
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- 「中国発パンデミック」はなぜ厄介なのか/蔡英文再選後、ますます進む日台連携(1/22)
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- 黄文雄メルマガスタッフの台湾選挙レポート(1/13)
- 文化が残らない中国の宿命/中華にはびこる黒道治国と台湾総統選挙を左右する「賭盤」(1/08)
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