新型コロナウイルス感染症の再拡大で、政府は9日、すでに大阪・兵庫・宮城で適用されている「まん延防止等重点措置」(まん防)を東京都にも適用する方針を固めました。自粛生活の終わりが見えない状況が続く日本ですが、経済活動を抑える以外の得策はないのでしょうか。メルマガ『テレビでもラジオでも言えないわたしの本音』の著者で精神科医・映画監督の和田秀樹さんは、「まん防」によって経済活動を抑えることよりも優先すべきことを挙げながら、セレブ集団のマスコミには理解できない「本当に優先すべきこと」を記しています。
「まん防」で経済を抑えるより、さっさと「医療ひっ迫」を抑えよ
厚労省の役人が深夜まで宴会をやってボロクソに叩かれている。
人々に自粛を強要している役所が、自分たちは深夜まで宴会をしてなんだというのはわからない話ではない。しかしながら、こういう取材をする人とかコメンテーターの取材や知識の底の浅さも露呈された。
今回の宴会は、どうも老健局老人保健課の送別会だったようだ。
そしてコロナ対策を行い、自粛を呼び掛けているのは健康局結核感染症課(「いまだに結核ですか」というようなネーミングだが)である。厚労省が自粛を訴えているというが、それは厚労省一丸のものではなく、厚労省の一部の役人が突っ走っているという側面もある。
長年、介護予防やフレイルやロコモ対策を訴えてきた老健局からすると、こんな自粛の強要で、これから要介護高齢者が増えるし、そうでなくても足りない施設がもっと足りなくなるし、また介護財政もパンクすると苦々しく思っていたはずだ。
そういう愚痴をこぼす会をマスコミは叩き潰したわけだが、2、3年後に急増する要介護高齢者については、マスコミはどうせ責任を問わないだろう。
中長期的に見れば、コロナより高齢者介護のほうが重要なはずなのに、そこの主力スタッフが、こんなことで士気が落ちないかと心配だ。
33000人も職員を抱え、また旧労働省も包含した巨大組織が一枚岩のはずがない(こんなに大事な組織の副大臣が三原じゅん子というのも驚きだが)。
後で聞いた話だが、「ゆとり教育」推進時代の文部省も、実は反ゆとりで頑張っていた役人はたくさんいたらしい。
マスコミを味方につけると、それがその省の方針だと思われるのだろうが、この程度の知識もなしにニュースを垂れ流して正義の味方面をするのはいかがなものかと思う。
しかし、こういう背景をまったく考えないで、深夜まで会食をしたという外形的なことだけをとらえて、正義の味方面をして、ボロクソに相手をたたく人がいる。
たとえば、テレビ朝日「羽鳥慎一モーニングショー」の玉川徹氏は、厚労省の老健局の職員たちが、その日まで働き詰めで深夜まで頑張っていたということに対して、「そんなことを言うならICUで働いている医療関係者はみんな働きづめですよ」というようなことを言い、さらにこういう奴らがいるから彼らがもっと大変になるというような発言をした。
ICUで頑張っている人間がへとへとに疲れているのに、テレビ局の連中の正義の味方面で、仕事が終わっても温かいものの一つも食べられない。
ときに「慰労をやろう」という人間の心理もわからないし、メンタルヘルスを丸無視する人間がテレビコメンテーターや感染症学者という種族の人間のようだ。
宮崎哲弥氏にいたっては、「だから私は前から送別会を禁止すべしと言ってきたんです」としたり顔でいう。
彼らからクラスターが出たなら、言わんこっちゃない話になるかもしれないが、会食が犯罪行為のようになる国の現状はどうだろう?
何度も言うが、コロナという病気は薬もワクチンもないのに、大多数が無症状で例年のインフルエンザと同等の死者数(これはワクチンも薬もあっての話だ)の病気である。
そのために慰労も禁止、心のケアのための会食も禁止という「心」の無視が当たり前になっている現実が怖い。
しかし、いっぽうでまともな人間やまともな医者は、コロナの怖さが過大評価されていることもわかってきたようだ。
それをまとめた鳥集 徹氏の対談集『コロナ自粛の大罪』はかなりベストセラーのようで、楽天ブックスでもAmazonでも品切れ状態だ(私も対談者の一人である)。
この中の対談者の一人である木村 盛世氏の『新型コロナ、本当のところどれだけ問題なのか』もどうみても、5類感染症の新型コロナを2類にしている問題点を痛切に指摘している。
医者でもなんでもない調べ魔の小林よしのりさんなどもはるかにまともなことを言っている。
実際、本当のところはまともな医者はこの病気を過度に怖がっていないのだろう。
実は、私は勤め先の国際医療福祉大学の辞令交付式というのに出たのだが、ちょっと例外の時間帯をのけて理事長はずっとマスクをはずし、訓示を垂れていた。
もちろん、この大学は積極的にコロナ患者を引き受けているので、ワクチン接種が優先されるらしく(私は蚊帳の外だが)、理事長(もちろん医師である)もすでにワクチンを受けているからこのような行動が可能なのかもしれないが、まともな医者の考えることは基本的に同じとホッとしたものだ。と言いながら私はマスクを強制されていたが。
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さて、最近「まんぼう」という言葉が流行っているらしい。
「まん延防止等重点措置」の略らしいが、大阪や兵庫などの感染者が増えたことで、現実に施行される。結果的に、再び8時に店が閉まるという異常事態に戻る。
何度も言うように、もちろん会食や宴会はできなくなるが、同時に、医療関係者などが、ちょっと仕事が遅くなる(8時くらいに終わるのはざらだ)と店で食事ができなくなるし、運輸業の人たちも気をつけないと(経験的にいうと食事を摂ると眠くなることが多いから、本来ならその日の仕事を終えてから食事を摂りたいだろう)外食にはありつけなくなる。
そんなこととは関係ない、セレブ集団のテレビコメンテーターからこんなことを強要されたくないというのが本音だ。
感染者が増えると病床がひっ迫するなどと脅す人は多い。しかし、それはなんのために医療関係者からワクチンを接種するのかがまったく無視されている。
まともな医学知識のある医者なら、ワクチンを接種することでコロナに感染している患者を、これまでより安心して診れる。感染するかどうかはともかくとして、感染しても大したことにならないと思えれば安心できる。
もっといえば、あと120万人分のワクチンがあれば、日本中の入院患者(コロナ入院でない一般入院の患者)にワクチンを打つことができる。コロナ患者を引き受けても、入院患者が感染から防げたり、感染しても重症にならないで済むというのなら大幅に民間病院でコロナを引き受けるところが増える。
実際、他のベッドをつぶさなくてもコロナ患者を引き受けられるなら、助成金だけで病院としてはコロナ患者はありがたい存在だからだ。
「まんぼう」などと言って経済を抑えるより、さっさとワクチンを医療関係者と入院患者に接種して、医療のひっ迫を抑えた方が明らかに医療関係者にも(暖かい晩御飯が食べられるという点で)ありがたいし、文化も食文化も破壊しなくて済む。
そういうことがわからない人が、顔がいいだけで人気知事になるのがこの国の哀しさだ。
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※本記事は有料メルマガ『和田秀樹の「テレビでもラジオでも言えないわたしの本音」』2021年4月3日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会に初月すべて無料のお試し購読をどうぞ。4月分のすべてのメルマガが届きます。
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