国が評価基準を検討している、マンションの「管理計画認定制度」と、マンション管理業協会が創設を目指している「マンション管理適正評価制度」。どちらも2022年4月のスタートを予定していますが、何がどのように違うのでしょうか。今回の無料メルマガ『まんしょんオタクのマンションこぼれ話』では著者の廣田信子さんが、未だ全貌は明らかになっていないとしつつ、現在の時点で判明している両制度の相違点を紹介。その上で、なかなか一般には理解しにくいながらも、マンションの管理状況を評価するという意味では大きな進歩になると記しています。
マンションの評価制度がいろいろあってわからない?
こんにちは!廣田信子です。
マンションの評価制度の話が出たときに、うちのマンションはS評価だった。うちはA評価。なんでSじゃないのか納得いかない。そんな会話がありました。
でも、評価基準は今検討中のはず…。どうして、もう評価が出ているの?
と一瞬思いますが、すぐ、あっ、それは、「マンション管理適正化診断」の診断結果による評価だと、マンション管理士の方は、すぐピンときます。
日本マンション管理士会連合会(日管連)が行っている「マンション管理適正化診断サービス」というのがあります。
管理組合の求めに応じて、診断業務研修プログラムを修了したマンション管理士が管理運営状況、修繕計画状況、法定点検・修繕工事のほか、防犯対策、防火管理、保険事故履歴などマンションの管理状況全般を調査し、診断レポートを提供するというものです。
保険料を安くするために、そういえば実施したな…というマンションもあると思います。保険会社主導で実施したために、実施したという認識がないマンションもあるようです。
この診断結果がよければ、日新火災海上保険(株)のマンション共用部分用火災保険が割引になるからです。診断費用は、日新火災海上保険(株)が負担するので、管理組合には負担がありませんし、診断を受けたからといって、日新火災海上保険(株)の保険に加入する義務はありません。
途中からですが、診断結果に応じて「S・A・B」の評価が付けられるようになり
「S評価」マンションには、日管連より「S評価ステッカー」を発行されています。
今、国が評価基準を検討中ですが、それと、この適性診断の評価はリンクしているのか…と聞かれましたが、それは、今は、何とも言えません。
国の評価基準と言うのは、マンション管理適正化法改正によって国に義務付けられた「基本方針」の中にある管理計画認定制度における認定基準のことです。今、最終段階で、標準管理規約の改正案と合わせて、パブリックコメントを実施し、6月告示を目指しています。
それとは別に、以前より、マンション管理業協会で、マンション管理適正評価制度が検討されており、近々の創設を目指しています。
この両者がどう違うのか…というと、私が理解している範囲では、管理計画認定制度では、認定基準に合致して認定されるか、されないか、というどちらかになるのに対し、マンション管理適正評価制度では、マンションにSからDまでのランク付け行うということです。
しかし、それぞれの検討会には、関係者が委員として入っていますので、「管理計画認定制度」と「マンション管理適正評価制度」は、何らかの連携がとられると思われます。
これまでの、
- 日本マンション管理士会連合会による評価
に加え、
- 国や地方公共団体が主体の評価
- マンション管理業協会が主体の評価
ができる訳で、なかなか一般には理解しにくいと思います。
いろいろな経過や綱引きの話が聞こえてはきますが、最終的にどう整合性がとられていくのかは、私にもわかりません。もうしばらくすると、各制度の全貌が明らかになると思いますので、それまで待ちたいと思います。
発表になったら、各関係者は説明に追われるんだろうけど、いろいろあるのは、輪番制の役員さんには複雑過ぎるよね…というのが正直な感想です。ベテランの理事長さんでも、最初の会話のようなことが起るでしょうから…。
ふと、「マンション管理標準指針」の説明に追われたころを思い出しました。このときの状況では、「標準」を示すのが精いっぱいで、「評価」はできなかったのです。そう思うと、「管理状況を評価する」という意味では、大きな進歩なんですよね。
ちょっと大変な年になりそうです。
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