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朝日新聞の元校閲センター長が伝授、飽きさせない文を書く方法は?

昨今の「自称Webライター」の増加により、レベルの低下や文章の乱れがよく指摘されるようになりました。では、読み手を飽きさせない充実した内容文章を、限られた文字数内で書くためには、どうすれば良いのでしょうか? メルマガ『前田安正の「マジ文アカデミー」』の著者で朝日新聞の元校閲センター長という経歴を持つ前田さんが、文章を上手く書けることにもつながる文章の「文字数」について詳しく紹介しています。

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文章の長さと書く工夫

さて、きょうは文章の長さについて、考えていきます。

新聞の顔とも言われる1面下のコラムを比較すると、朝日新聞の「天声人語」は603字、毎日新聞の「余録」は658字、読売新聞の「編集手帳」は460字です(多少の誤差はあるかと思います)。僕が書いていた新聞のコラムは、500~600字ほどでした。

特集記事や企画記事などは例外ですが、だいたい500~600字程度でまとめるのが新聞記事の特徴かもしれません。400字詰め原稿用紙で1枚ちょっと。

案外、短いと思われるのではないでしょうか。新聞は1ページの面積が限られているので、一つの記事を長くすることが物理的に難しいのです。

できるだけ多くの記事を入れたい、内容もしっかり書き込みたい、という葛藤の中で成り立っているのです。かつて1段15字だった紙面は、徐々に文字を大きくしたため、いまは1段12字ほどです。ひところは文字拡大競争とまで言われました。読者が高齢化して新聞の活字が読みにくいという声を反映させたのです。文字を大きくすれば、相対的に情報量が減ります。そこで、記事をよりコンパクトにしようという動きになったのです。

通常のニュース紙面では1行あたりの字数が決まっているので、編集局内では字数より行数でカウントします。その方が、紙面レイアウトを考えやすいのです。たとえば出稿予定に「新型コロナ本記 50行、P付」とあれば、1行12字とすれば600字ということになります。字数より行数で知らされる方が、送られてくる原稿と写真、見出しなどの面積をイメージできるからです。ちなみにPというのは写真(photo)のことです。書き手にとっても、1行の字数が重要になるのです。たとえば、

この本はたくさんの人に読まれ、書店でも平積みにされています。

という文は29字で書かれています。1行30字なら、これは1行に収まります。

ところが、1行12字だと、

この本はたくさんの人に読
まれ、書店でも平積みにさ
れています。

と3行になります。最後の行は6字、あと6文字も入るのです。「たった6文字で何が言える?」と仰るかもしれませんが、次を見てください。

この本はたくさんの若い人
に読まれ、書店でも入り口
に平積みされています。

これで計35字、6文字を使って「若い(人)」「入り口」という情報を追加しています。「たくさんの人」の属性や平積みされている場所が記されました。このように可能な限り1行を無駄なく使って、情報を詰め込む作業をするのです。活字媒体では、総字数より1行当たりの字数と行数の方が重要だということがおわかりになるかと思います。

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ところが、ウェブの場合はこの制限がありません。原稿は何文字でも書けます。ウェブの原稿は2000~3000字というものも多いのですが、読み手が途中で飽きてしまう場合もあります。新聞社に入って、原稿を書くときの心得として聞かされたのは、「10を知って1を書く」とか「10取材して1を書け」というものでした。つまり原稿にするためには、取材を重ねてエビデンスが取れたものだけを書け、ということなのだろうと思います。往々にして内容の薄い原稿は「1を知って10を書く」類のものが多いのです。

まとまった文章を書こうとするなら、まず800字を目標にすべきだと思っています。400字詰め原稿用紙2枚です。実際に書いてみると、殊の外分量があることがわかると思います。しかし「起承転結」を利用すると、比較的楽に書けるようになります。

「起承転結」は、もともと漢詩の構成法の一つです。これを内容としてではなく、分量の目安として使うのです。「起承転結」を元に800字を4部構成に分けます。すると1部200字です。200字は、400字詰め原稿用紙で10行です。単純に10行ずつの固まりで書けばいいということになります。

ところが、書き出し(起)と結論部分(結)部分は、それほど長くなくてもいいので5行(100字)程度にします。そして、本来伝えたい内容を詳しく説明する「承」と「転」の部分を15行(300字)ずつにしてたっぷり書き込みます。5行、15行、15行、5行という配分にして書き始めればいいのです。こうしたことを考えず書き出すと、書き出し部分だけが長くなって結論を書くスペースがなくなったりするのです。1000字なら5行、20行、20行、5行といった目安を立てます。

与えられた字数を闇雲に埋めるのではなく、全体の構成を4ブロックに分けていくと、字数に惑わされにくくなります。これは入社試験の論文など、限られた時間に文章を書かなくてはならない場合などに、有効なテクニックになると思います。ぜひ試してみてください。

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image by: Shutterstock.com

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未來交創株式会社代表取締役/文筆家 朝日新聞 元校閲センター長・用語幹事 早稲田大学卒業、事業構想大学院大学修了 十数年にわたり、漢字や日本語に関するコラム「漢字んな話」「漢話字典」「ことばのたまゆら」を始め、時代を映すことばエッセイ「あのとき」を朝日新聞に連載。2019年に未來交創を立ち上げ、ビジネスの在り方を文章・ことばから見る新たなコンサルティングを展開。大学のキャリアセミナー、企業・自治体の広報研修に多数出講、テレビ・ラジオ・雑誌などメディアにも登場している。 《著書》 『マジ文章書けないんだけど』(21年4月現在9.4万部、大和書房)、『きっちり!恥ずかしくない!文章が書ける』(すばる舎/朝日文庫)、『漢字んな話』(三省堂)など多数。

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