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米NYタイムズ紙が東京五輪を「中止できない」と判断した6つの数字

新型コロナウイルスの感染再拡大が心配される中、有観客での五輪開催に向かいひた走る日本政府。未だ開催について懐疑的な国民が多い中での「強行」となるわけですが、海外メディアはこの動きについてどのように報じているのでしょうか。今回のメルマガ『在米14年&起業家兼大学教授・大澤裕の『なぜか日本で報道されない海外の怖い報道』ポイント解説』では著者の大澤先生が、有力2紙に掲載された東京五輪に関する記事を紹介。さらに現在紛糾しているオリンピックに関する議論について、「多くがいまの時点で議論しても仕方がない論点」との批判的な意見を記しています。

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1ヶ月を切った東京五輪。海外メディアはオリンピック開催をどう見ているのか?

海外でのオリンピック報道 サウスチャイナモーニングポスト

オリンピックの開幕まで1ヶ月を切りました。日本では、開催すべきなのか、できるのか?といった議論がまだあります。はたして海外はどう見ているでしょうか。

海外も同様に「ホントに東京オリンピックをやるのか?」という報道があります。

香港の代表的な英字新聞、サウスチャイナモーニングポストは6月23日に「2020年の東京オリンピック。開会式までの30日、消えない疑問の数々」と題した記事で、さまざま疑問をあげて答えています。

ご存知の内容も多いでしょうけれど、海外報道の内容を知る意味で記事紹介します。

今年の東京オリンピックは中止になるのでしょうか?

「開催契約では、参加者の安全が深刻に脅かされたり危険にさらされたりする、と考えられる場合に、オリンピック組織のみが開催都市との契約を解除できることになっています。明らかに、国際オリンピック委員会(IOC)はまだそのような事態には至っていないと考えています。ですから東京オリンピックは中止になりません」

 

「大会を運営する側は、とにかく開催すると言っています。大会を中止する権利を持つ唯一の組織である国際オリンピック委員会(IOC)にとっては、約40億ドルの放送収入という、あまりにも大きな問題があるからです」

 

なぜもう1年延期できないのか?

「東京の中心地である中央区の晴海にあるオリンピック村は、当初、2020年8月に閉幕して18ヘクタールの高級不動産に再開発される予定でした。マンションのオーナー候補たちは、入居時期の延期にすでに不満を抱いています。もう1回遅れると、さらに再交渉が必要で数十億円が追加にかかります」

 

当局はどのようにしてコロナの蔓延を防ぐのでしょうか?

「各国が今まで成功したのと同じ方法で蔓延を食い止めることができます。しかし実際のところ、コロナが蔓延しないという保証は何もありません。安全であることを祈るしかないのです。選手はコロナに感染したら、それは自身の責任であるという権利放棄書にサインするのです」

 

アスリートが行動ルールに違反した場合、罰せられるのでしょうか?

「アスリートたちは行動ルールに違反した場合、多くの処罰を受ける可能性があります。警告や一時的な出場停止、失格や罰金などです。到着時の強制検疫や日本の迷惑防止法などを無視した選手は強制送還されたり強制的に隔離されたりする可能性もあります」

 

今回のオリンピックの特徴

「IOCは若い視聴者を取り込みたいと思っています。そのため若者受けしそうな新しいスポーツやイベントが行われます。サーフィン、スケートボード、スポーツクライミングなどです。またバスケットボールのプログラムには3×3ゲームが、自転車競技にはフリースタイルBMXが追加されます」

「いろんな問題はあるが、こんな形で開催される」との記事ですね。

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海外でのオリンピック報道 ニューヨークタイムズ

続いて6月21日のニューヨークタイムズの記事をご紹介します。

「なぜ東京オリンピックが中止にならないのか?その答えは、何十億ドルもの資金、何年にもわたる準備、そして何千人ものアスリートたちの待ちきれない気持ちにあります」

との表題で数字を挙げて説明しています。

154億ドル
もしオリンピックが開催されなければ154億ドルの投資がほとんど無駄になってしまいます。この数字はオリンピック予算の中でも記録的なもので、昨年だけで30億ドルも膨れ上がっています。しかも、お金の損失に加えて日本の風評被害は計り知れないものがあります。

 

30年以上日本に住んでいる投資アドバイザーのJesper Koll氏は「結局のところ建設費が回収できるかどうかではなく、国のブランド力が高まるかどうかが重要なのです」と語っています。

 

40億ドル
これはオリンピックが開催されなかった場合に、国際オリンピック委員会(IOC)が返金しなければならない可能性のあるテレビ放映権収入の額です。この数字は、IOCの収入の73%を占めています。

 

12.5億ドル
2020年3月米国での放送権を持つNBCユニバーサル社は、東京オリンピックの国内広告を12億5,000万ドル販売したと発表しました。最高経営責任者であるジェフ・シェル氏は先週の投資家会議で、「視聴率次第で東京オリンピックは会社の歴史の中で最も収益性の高いオリンピックになるかもしれない」と語っています。

 

5億4,900万ドル
国際オリンピック委員会は各国のオリンピック委員会に5億4,900万ドルを分配しています。多くの国のオリンピック委員会にとって、それは管理費からトレーニング補助金、青少年育成プログラムまで重要な財政基盤となっています。今年の初め、英国オリンピック協会は、もし今夏の大会が中止になった場合、財政的に破綻するという見通しを示しました。

 

15,500人
延期されたことで、オリンピックでは約11,100人、パラリンピックでは約4,400人、合わせて200カ国以上のアスリートたちが、1年間の待機を余儀なくされました。結婚の予定や大学への入学、さらには子供を持つ計画を遅らせたのです。世界中の競技者が大会の開催を待ち望んでいるのは当然のことです。

 

37%
これは日本の菅首相の現在の支持率です。菅首相は自分の政治的な運命が大会と密接に結びついているため大会を中止することができないのではないかと恐れているのかもしれません。9月に国政選挙が控えているためです。

最後に日本の政治事情が付加されましたが、基本的には「これだけのお金や人が動いており、中止はできない」という記事です。

執筆後記

オリンピックに関する議論が紛糾していますが、いまの時点で議論しても仕方がない論点も多い気がします。

「コロナの蔓延を防ぐ」と「世界の視聴者、日本の観覧者・関係者、参加アスリート、が楽しめる」は矛盾する課題です。

冷静・科学的なバランス点を具体的に見つける議論をしてほしいものです。

結果的に「コロナで困難な中に開催されたが、東京オリンピックは素晴らしかった」と後世に伝えられるようになればよいですね。

(メルマガ『在米14年&起業家兼大学教授・大澤裕の『なぜか日本で報道されない海外の怖い報道』ポイント解説』 6月27日号より一部抜粋)

社会の分断化を推し進める「バランスを欠いた報道」を見極めるために

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image by: Peace H. Okumura / Shutterstock.com

大澤 裕この著者の記事一覧

・株式会社ピンポイント・マーケティング・ジャパン 代表取締役社長  ・情報経営イノーベーション専門職大学 客員教授 ・法政大学大学院イノーベーションマネジメント研究科 兼任講師 慶應義塾大学を卒業後、米国バンカーストラスト銀行にて日本企業の海外進出支援業務に従事。カーネギー・メロン大学でMBAを取得後、家業の建築資材会社の販売網を構築するべくアメリカに子会社を設立。2000年、ピンポイント・マーケティング・ジャパンを設立。海外のエージェントとディストリビューターを使った販路網構築・動機づけの専門家として活動を行っている。2015年「中小企業が『海外で製品を売りたい』と思ったら最初に読む本」を、2017年「海外出張/カタログ・ウェブサイト/展示会で 売れる英語」をダイヤモンド社から上梓。

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