読書感想文と並んで、夏休みの子供たちと親御さんの頭を悩ます自由研究。いっそ課題を与えてくれたほうが楽、との声も多々聞かれますが、今年はそんな悩みとはお別れできるかもしれません。今回の無料メルマガ『親力で決まる子供の将来』では著者で漫画『ドラゴン桜』の指南役としても知られる親野智可等さんが、教員時代に「これぞまさに研究であり学問」だと感じた教え子の自由研究を紹介するとともに、親としての心構えをレクチャー。さらに自由研究テーマの具体例を思いつくままに紹介しています。
自由研究に秘められたとてつもない可能性とは?
毎年、「夏休みの自由研究で困る」という親子が少なくないようです。「自由」ということで何をやればいいかわからず、かえって困るようです。でも、あまりかたく考えないで、何か一つ「これをやった」と言えるようなものがあればいいのです。
やり方としてはいろいろありますが、私のイチオシは、子どもが元々興味を持っていることや普段から熱中していることを、とことんやらせて深めさせてあげることです。そして、それをノートやスケッチブックにまとめるのです。
なぜかというと、普段はやりたくてもとことんやれないでいることが多いからです。それに、元々子どもがやりたいと思っていることなら、親がうるさく言わなくても子どもは自主的に取り組むからです。
1つの例として、私の教え子であるA君の自由研究を紹介します。A君の趣味は金魚の飼育でした。夏休みに、親が水族館の金魚講座に連れて行ってくれました。A君はそこでいろいろなことを吸収したのですが、中でも金魚の産卵に大きな興味を持ちました。そして、夏休み中に自分でも挑戦して見事に成功したのです。
A君は、夏休み中ずっと、金魚の飼育、観察、産卵、孵化についてノートに記録し続けました。金魚講座で教わったこと、図鑑やネットで調べたこと、自分で発見したこと、工夫したことなども書きました。金魚の種類、飼い方、水温、えさ、糞の始末、産卵、稚魚のえさなどです。
写真やイラストでビジュアル的に説明することも忘れませんでした。新聞に出ていた金魚の記事も貼りました。
2学期のはじめ、9月1日にA君はこのノートを学校に持ってきました。それは、どのページからも意欲と熱中ぶりが伝わってくるようなすばらしい研究ノートでした。私は、これこそまさに研究であり学問そのものであると感じました。
これは、とてもいい例だと思います。どんなことでも、熱中して深めていけばそれは研究であり学問なのです。それをノートやスケッチブックなどにまとめて形にしていけば、自由研究として立派に成立するのです。
大事なのは、何に熱中するかではなく何かに熱中することです。
親の心構えとして大切なのは、子どもがやりたいことをバックアップしてあげることです。というのも、何事も子どもだけでは深められないからです。深めるためには、情報、資料、お金、行動力など、いろいろなものが必要なのです。
バックアップと同時に、子どものがんばりをほめ続けることも大切です。親がほめ続けることさえできれば、子どももがんばり続けることができるからです。
子どもにしてみれば、もともと好きなことを思う存分やらせてもらえて、親がバックアップしてくれてほめてくれるのですから、こんなにうれしいことはありません。親への信頼感が高まり親子関係がよくなるのは確実です。
また、「これなら誰にも負けない」と言えるものができるので自分に自信を持てるようになります。子どもにとって、これはとても大きなことです。
では、思いつくままに具体例を挙げてみます。
■料理が好きな子
- いろいろな料理を作り、写真を撮ってノートに貼る
- 料理のレシピ、工夫した点、反省点、食べた人の感想などを書く
■ブロック、粘土、工作が好きな子
- 作った作品を写真に撮ってノートに貼る
- 大変だったところや工夫したことなどを書く
■野球が好きな子
- 自分で練習メニューを作って練習記録をつける
- 自分の打率を上げる方法を研究して記録をつける
- プロ野球や高校野球などの試合記録をつける
- 好きなチームをとことん研究する
- 一流選手の共通点や名言を研究する
このように、今思いついて書いただけでもいろいろなものが考えられます。親の価値観でかたく考えずに、自由に発想を広げてその子に合ったものをやらせてあげてください。
ところで、サッカー選手の中村俊輔さんは17歳の頃からずっとサッカーノートをつけているそうです。『夢をかなえるサッカーノート』(文藝春秋社)という本にまとめられているので、お読みになった方もいらっしゃると思います。彼は、日々の練習の記録、練習や試合の反省、発見、創意工夫、次の目標、課題、自分の心境などを書き続けてきました。
ただ好きなサッカーを練習するだけでなく、ノートに書くことで研究を深めてきたのです。そうやって、自分が一番やりたいことを徹底的に研究してきたのです。
それが今日の中村選手を作ったのです。
これこそ本物の自由研究です。自由研究には大きな可能性があるのです。
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