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逆ギレ毒妻が自ら切り出した「離婚」の二文字。娘の親権を持ったのは妻か夫か?

ふた昔であれば、夫の浮気に愛想をつかした妻が子どもを連れて離婚といったケースは珍しくありませんでしたが、女性の社会進出が進んだいま、「男女逆転現象」が起きていると語るのは、無料メルマガ『10年後に後悔しない最強の離婚交渉術』の発行者で、開業から16年で相談2万件の実績を誇る行政書士の露木幸彦さん。今回、露木さんはある夫婦の実話を元に、しつけを放棄し家庭内で孤立した妻と、育児に献身的な夫との離婚劇を紹介しています。まだ4歳の娘の親権を取ったのはどちらだったのでしょうか?

離婚の現場で起きている「男女逆転現象」。時代は大きく変わった

 

突然ですが、質問です。子どもの親権を獲得するのに夫と妻、どちらが有利だと思いますか? 夫婦が離婚したら子どもを引き取るのは「妻」だと思っている人が大多数でしょう。しかし、最近では本気で子どもを引き取りたいと望む「夫」が増えている印象です。具体的には、子どもにとって母親は「いない方がいい存在」だと結論づけていたり、母親がいない生活を詳細にシミュレーションしたり、家事や育児、教育を一手に担うべく両親や兄弟姉妹、職場の協力を取り付けたり、限られたお金、時間、体力のなかでも1人で子どもを育てようと真剣に考えている場合です。

愛人を囲って金を貢ぐ夫。パチンコにふけって借金を作る夫。大酒飲みで家のなかで暴れる夫。そして愛想を尽かして出て行く妻。昭和時代にこのような光景は珍しくありませんでした。しかし、すでに平成が終わり、令和も3年に突入した今、これらはもはや二昔前の古いイメージです。

現在は女性の社会進出が進み、男性と同等の賃金と高いプライドを手に入れたことで離婚の現場では「男女逆転現象」が起こっています。特に子どもの親権を決める場面が顕著ですが、妻は妻で子どもに固執せず、愛情を忘却し、さっさと親権を放棄することも珍しくありません。 

例えば、夫が家事や育児を担当し、手が空いたのをいいことに妻が外で遊ぶようなケース。夫に秘密を知られ、修羅場に至っても大丈夫。経済的な不安はなく、むしろ人生をやり直すチャンスだと前向きにとらえて、子どもを夫に押し付け、離婚を躊躇しないような妻です。

娘のしつけを保育園に「丸投げ」の妻に夫ため息

そんな新時代の離婚の形が増えていますが、赤尾大志さん(仮名、36歳)もその1人です。大志さんが一時的に職を失っていたとき、家のことを任されていた名残で、今でも4歳の娘の育児や家事の大半は大志さんが担当していました。

「妻(34歳)は人任せで、自分では何も教えようとしないんです! 娘はまだ4歳なので、性格も素直で教えられたことは吸収しやすい年頃だから、どうせ教えるのなら今がいいのに」 

大志さんは唾を吹き出さんばかりの勢いでそう訴えかけていたのですが、一体、何があったというのでしょうか? どうやら妻は娘さんに物事を教えるのを面倒に感じているらしく、最低限のことすら教えようとせず、結局、大志さんがすべて代わりにやらざるを得なくなったようなのです。

例えば、トイレの使い方、排便後のお尻の拭き方、衣服の着脱の仕方、たたみ方、食事の仕方、箸やお椀の持ち方、顔の洗い方、歯磨きのやり方、平仮名の読み書き、絵の書き方、時計の見方、数字の数え方などなど……。 

ついに大志さんも業を煮やして、妻に「少しは自分でやったらどうなんだ」と詰問したのですが、妻は意に介さず「そんなことは保育園で教えてもらったらいい!」と一喝してきたとか。「保育園や学校よりも、まずは家で親が基本的なことを教えるべきだと思うんですが、普通は……」大志さんは深いため息をついた後、そうつぶやきました。

反省どころか逆ギレ。家庭内で孤立した妻が離婚を決意した理由

例えば、大志さんが娘さんに「靴を脱いだら揃えて置くこと」を教えたのですが、娘さんはそれ以降、玄関で靴を脱ぐときは、きちんと揃えてから家にあがるようになったそうです。ところが妻はどうでしょうか? 大のオトナなのに靴を脱いだら脱ぎっぱなしで揃えようともせず、そのまま放置していたようで、運悪く娘さんはその悪態を目にしてしまったようです。

さらに大志さんが娘さんに箸の持ち方を教え、ようやく補助がついた子供の用の箸を使えるようになったのですが、それなのに妻は娘に向かって「そんなことをしないでいい! スプーンを使ったらいい!」「箸で突き刺したらいい!」などと言い放ったとか。

このように父(大志さん)と母(妻)の言っていること、やっていることが180度異なるわけですが、両親の板ばさみに遭えば、娘がどちらを信用して良いのか混乱し、あらゆる面の成長(靴の脱ぎ方、箸の持ち方などを習得するまでの時間)が遅れるのは間違いないでしょう。誰のせいなのかと言えば、残念ながら「妻のせい」だと言われても仕方がない状況です。

子どもは1日の大部分を大志さんと接しているので、妻より大志さんになついており、妻は相手にもされず、子どもとの間に距離を感じていました。そのうち、週末は妻が家で留守番し、大志さんと子どもが外へ遊びに行くようになりました。今の家に妻の居場所はなく、「夫が娘に自分の悪口を吹き込んでいるのではないか?」と気にするほど疑心暗鬼になっている状況でした。

そのため、ふて腐れた妻は自分が転職した際に「土日出勤」の会社を選んだため、ますます家庭内で孤立してしまったのです。妻が「あんたたちが勝手に私をノケモノにしてきたんじゃない!」と訴えかけても、大志さんは「一緒に出掛けても、いつも不機嫌じゃないか」と返し、また「あんたが無視するから私は居場所がなかったの!」と吐露しても、「居場所がないのはお前のせいだろ?」と相手にされず。ついに妻は「これ以上この家にいても仕方がない」と覚悟を決めたのです。

離婚を切り出したのは妻。娘の「親権」はどうなる?

とはいえ大志さんも最初から「離婚ありき」ではなく、妻がきちんと謝り、心を入れ替え、反省さえしてくれたら、結婚生活を続けてもいいと気を使っていたのですが、妻は「夫や子どものせいで精神的に追い詰められたのに、なんで私が頭を下げなきゃいけないの!」と反抗したのです。結局、妻は今の家族とやり直すより、ゼロから新しく人生をやり直したいと決めたようです。そのため、大志さんの計らいを断り、むしろ妻の方から別れを切り出しました。 

夫婦の間に未成年の子どもがいる場合、夫と妻のどちらが親権を持つのかを決めなければ離婚届は受理されません。海外では離婚しても元夫と元妻が協力して子どもを育てるという「共同親権」を採用している国も多いのです。

一方、日本では「単独親権」が原則なので、片親が1人で大半の育児を引き受ける形です。各自のお金、体力、時間は限られています。現在は大志さんが半分以上を負担している状況。もし、妻が親権を持った場合、半分以上のお金、体力、時間を削られることを意味します。少なくとも今の生活水準を維持するのは無理です。

それなら親権をあきらめ、自分のお金、体力、時間を大事にした方がいい……。妻が「娘を引き取りたい」と申し出なかったため、娘さんの親権について争うことなく、離婚が成立したのですが、本来、親権者は非親権者に対して子どもの養育費を請求することが可能です。しかし、大志さんは妻が親権について異論を唱えないよう、あえて娘さんの養育費を請求しなかったため、妻は経済的にも独身時代に戻ることができたのです。

夫が親権を持つことができる確率は10%(2019年の人口動態統計。離婚時に親権を持つのは夫が1,727件、妻が17,368件)。つまり、夫側が望めば、1割の確率で離婚時、子どもの親権を持つことが可能なのです。

image by:Shutterstock.com

露木幸彦この著者の記事一覧

行政書士の露木幸彦が夫婦の離婚、不倫、未婚出産、婚活の法律、交渉術、会話技術を解説明石家さんまさん司会のホンマでっかTV,ブラマヨさん司会の世界のこわ~い女たち、小倉さん司会のとくダネ、バナナマン設楽さん司会のノンストップなどに登場。11冊の著書を持ち累計部数は
5万部を突破。日本経済新聞、朝日新聞電子版では連載を担当。開業から16年で相談2万件の実績。

注)離婚手続に関する一般的説明や経済的観点から必要な離婚条件に算定を超え、個別事情を踏まえた離婚手続や離婚条件に関する法的観点からの助言が必要な場合は弁護士に依頼してください。

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【著者】 露木幸彦 【発行周期】 ほぼ 月刊

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