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真夜中のオアシス「ラーメン屋台」が絶滅危機。このまま消えてしまうのか

かつては夜鳴きそばとして親しまれ、全国至るところで見られたラーメン屋台。しかし今、そんな日本の食文化のひとつが絶滅の危機に瀕しているようです。今回の無料メルマガ『繁盛戦略企画塾・『心のマーケティング』講座』では繁盛戦略コンサルタントの佐藤きよあきさんが、昭和40年代には200軒を数えた関西の屋台数が、今やたったの10軒を残すのみとなってしまったというショッキングな事実を紹介するとともに、その行く末を憂えています。

絶滅!?屋台ラーメン。真夜中の小さな幸せは、いつまで続く?

飲みに行った後、残業の帰り、眠れない夜。ラーメン屋台の灯りを見つけたり、チャルメラの音を聞くと、なぜか嬉しくなったものです。夜遅く食べることは、ほんの少し罪悪感はあるものの、独特な楽しさがあり、その魅力を一度知ると、もうやめられません。また、屋台のラーメンは、専門店や町中華のそれとは違い、屋台でしか味わえないものです。しかも、夜中に食べることが多いので、美味しさも倍増します。

誰もが知っている、この屋台ラーメンが……と言いたいところですが、若い人たちは知らないようです。それは時代の流れで、屋台が減ってきているからです。少なくなっているだろうとは思っていたものの、まさかそこまで、というほど激減しているのです。

昭和40年代。関西には約200軒のラーメン屋台がありました。ところがいまでは……。これが驚きの数字なのですが、そうなった理由は、どうすることもできない、仕方のないことかもしれません。

コンビニの出店・拡大。何かを食べたい、何かを飲みたい時は、近くのコンビニに行けば、すぐに手に入ります。しかも、24時間。そんな便利なお店があっては、ラーメン屋台を待ち望む人が少なくなるのも当然のことです。

その結果、関西のラーメン屋台は、10軒となってしまいました。関西全体で、たった10軒です。想像を超えていました。普段は食べないものの、ふとした時に食べたくなるものなので、そこまで少なくなっているのは、寂しくもあり、悲しくもあり。このまま無くなってしまうのでしょうか。

その中の1軒。兵庫県尼崎市から伊丹市にかけて走る「阪神軒」は、いまなお多くのファンを持っています。創業46年。午後7時~午前2時ごろまで、懐かしいチャルメラを流しながら、ファンの待つ場所へ向かいます。

ほぼ7時間の営業に加え、仕込みに3~4時間掛かっているので、11時間働き通し。しかも、豚と鶏の骨からスープを作り、チャーシューも自家製。他の屋台では、粉末スープを使うところもあるのですが、ここの店主は一から手づくりしています。決して楽な仕事ではありません。

昔ほど売れるわけではないので、かなり厳しい状況に陥っています。しかし、もうすぐ70歳を迎えようとしている店主は、やめようとはしません。お客さまは、ほぼ常連さん。決まった曜日、決まった時間、決まった場所で待つお客さまもいれば、営業している場所にわざわざ車で向かうお客さまもいます。

また、居酒屋から電話が入り、「お客さまが食べたいと言っているので、来て欲しい」という依頼もあります。個人宅からの電話依頼も。昔のように、“流す”というスタイルではなくなっています。それだけ常連さんが多く、常連さんで持っているとも言えます。中には、週に5回食べるという人もいます。何年も前から週に1度の楽しみだという人も。

私もあちらこちらの屋台で食べていました。飲みに行った帰りや夜中に遊んでいた時、夜中まで働いてクタクタになった時、子どもが生まれその世話で疲れ切っていた時など、人生のいろんな場面で、しばし癒しを与えてくれた存在です。

屋台のラーメンは、ありふれた日常ではなく、どこか特別なもの。お腹を満たすだけではなく、心を満腹にしてくれます。この屋台の常連さんたちにとっても、人生のひとコマに登場する、印象深い大切な存在なのではないでしょうか。いつまでも忘れることはありません。

しかし、いま消滅の危機にあります。お客さまの減少、店主たちの高齢化により、明るい将来はありません。拘束時間も長く、夜中に働き、さほど収入が良いわけでもありません。若い後継者など、いるはずもなく、このまま消えるしかないのかもしれません。

日本の食文化を失いたくはありません。真夜中の小さな幸せを奪われたくもありません。しかし、生き残るアイデアが浮かびません。キッチンカーで昼間のオフィス街に出て行くという案もありますが、それは屋台ラーメンに似合わないのです。

あくまで真夜中に走ること。それが、人びとに愛される姿なのです。

静かに待ちわびる人びとのために、あとどれぐらいの年月が残されているのでしょうか。

image by: Shutterstock.com

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【著者】 佐藤きよあき(繁盛戦略コンサルタント) 【発行周期】 週刊

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