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ドコモの通信障害で見えた「IoT、仮想化、グローバル」の暗い未来

10月14日木曜日の夕方、NTTドコモのネットワーク障害が全国的に発生し、音声通話やデータ通信ができない状態が長いところでは5G・4Gで約12時間、3Gでは30時間近く続きました。ドコモはオンライン会見で障害理由を説明。メルマガ『石川温の「スマホ業界新聞」』著者でケータイ/スマートフォンジャーナリストの石川温さんがその内容を分析し、モノのインターネット(IoT)が人のネットワークに及ぼす影響の大きさに通信業界全体が震撼したはずで、取り組むべきことが多くあると伝えています。

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ドコモ通信障害。IoT、仮想化、グローバルの未来に警鐘

10月14日夕方からNTTドコモにネットワーク障害が発生した。翌15日に説明会がオンラインで開催されたが、関係者から出てくる言葉の数々が、なんとも興味深かった。通信障害の原因が、この先、Beyond5G時代に向けて勢いづこうとしていた通信業界に警告を発しているようで、とても印象的だった。

今回の障害はIoT機器の位置情報を管理する設備の切り替え工事で発生した。新設備に移行しようとしたが失敗し、旧設備に戻そうとしたら、20万台に及ぶIoT機器から位置情報が大量に上がってきてしまい、障害が発生。輻輳がスマホユーザーの音声通話、データ通信に影響を及ぼした。

IoTといっても、タクシーの決済端末や自動販売機など、おそらく3G回線をメインにつかっていた機器だと思われる。とはいえ、IoT機器の通信で障害が起きると、NTTドコモの全ネットワークに影響を与えるということ自体が驚きだ。これからの通信業界はIoT分野が成長領域と言われる中、IoTと人へのネットワークをどのように共存させていくかが課題になってきそうだ。

また、今回、切り替え工事が行われた「新設備」とは「仮想化設備」のことだった。長年、安定して稼働していた旧設備から仮想化設備に移行する際に失敗したとは、他社関係者も背筋が寒くなる思いだろう。Beyond5G時代に向けて、仮想化設備に切り替えることで、IoT機器向けの通信処理能力を飛躍的に向上させようとしたら、その切り替え作業で大コケしてしまった。

数年前、楽天モバイルの三木谷浩史社長がやたらと「これからは仮想化だ」と息巻いていたころ、他社関係者に「仮想化はどうするのですか」と聞いて回ったとき、ほとんどの関係者が「仮想化はこれからの技術であることは間違いないが、まだ信頼性や安定性などで不安なところも多い」と語っていた。今回はその前段階、移行時の失敗であるが、キャリアとしては安定稼働している設備からわざわざ新設備に移行するというのは、できれば避けたいものだろう。

線路の切り替え工事や銀行のネットワークなど、週末や夜間に業務を休止して設備を入れ替えることができれば大した問題ではないが、タクシーの決済端末や自動販売機など24時間、稼働するのが前提な機器だけに「稼働しながら設備を切り替える」というのは相当、難儀な作業をしているといえる。

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今回、NTTドコモは新設備に移行する際、「海外にあるIoT機器から上がってくるデータが、新設備で扱えるものではなく、旧設備に戻すことになった。海外オペレーターを経由するデータは仕様が異なっていた」ということであった。

IoT機器を海外に輸出する際、それらから上がってくるデータを日本で一元的に管理するという仕組みがこれからのキャリアの売りになろうとしていた。KDDIがトヨタ自動車に対して、クルマの中の通信機器を納入し、世界に輸出される自動車からデータを集めるというソリューションを手がけている。キャリアがグローバルでビジネスを展開する際、通信という「つなぐ」という価値を提供する際、いかに世界のキャリアと仕様を決めておくのが重要かということを今回の通信障害が教えてくれた。

「IoT」「仮想化」「グローバル」。まさに5G時代、さらに6Gに向けて通信業界が多用するワードが飛び出したのが、今回の謝罪説明会であった。

5GがSAとなり、ネットワークスライシングが導入されれば、IoT機器が暴走し始めても、人間が使う通信に影響を及ぼすことはなくなるものなのか。今後、デジタルトランスフォーメーションにより、IoT機器がさらに増えていく中、今回の通信障害は通信業界関係者に様々な示唆を与えたのではないか。

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image by:yu_photo / Shutterstock.com

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日経トレンディ編集記者として、ケータイやホテル、クルマ、ヒット商品を取材。2003年に独立後、ケータイ業界を中心に執筆活動を行う。日経新聞電子版にて「モバイルの達人」を連載中。日進月歩のケータイの世界だが、このメルマガ一誌に情報はすべて入っている。

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