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なぜ「女子大生社長」は日本の農業を救うきっかけを作ったのか?

 衰退の一途を辿っている日本の農業ですが、農家の人々の高齢化や後継者不足によって、さらに危機的状況に陥っていくと言われています。今回の無料メルマガ『繁盛戦略企画塾・『心のマーケティング』講座』では、ある女子大生社長が「農業を始める人を増やしたい」という思いで始めた事業について紹介しています。

衰退する農業を復活させるのは、「支援」ではなく「自立」

農業人口が毎年減少し続けています。従事者の高齢化及び後継者不足により、耕作放棄地も増えています。農家の平均年齢は67歳。その中で、10~20代の人はわずか1%。このままでは、日本の農業は危機的状況に陥ってしまいます。

政府や地方自治体も取り組んではいるものの、就農支援など、あくまでサポートのみで、積極的に改革する策は持ち合わせていません。この先、農業国ではなくなり、輸入に頼るようになってしまうのでしょうか。

そうなることは避けなければなりませんが、いま、ほんの少しだけ、光が見え始めています。

農家は減っているものの、就農する人がいないわけではありません。農業をやりたいという人や事業の多角化で参入する会社もあります。その中のひとつが、日本農業株式会社。少しレトロな社名ながら、創業10年のベンチャー企業です。当時女子大生だった社長が、「農業を始める人を増やしたい」という思いから、立ち上げました。

まずは、売れる農産物を考えることから。これからは、安全・安心なものが求められます。つまり、無農薬。手間ひまは掛かるものの、これをやり遂げなければ、農業及び自社の発展はないと考えたのです。

良い作物ができるまでに何年も掛かりましたが、ようやく売れるものができ、百貨店やスーパーに置いてもらえるように。しかし、そこに並ぶのは、大きくてカタチの良いものばかり。日本の消費行動の問題点なのですが、いまだ改善されない宿命のようなものです。

では、大きさやカタチによる規格外のものをどうするか。自分たちで、消費者に直接売ることを考えたのです。イベント的ではありますが、定期的に「マルシェ」を開き、仲間の農家と一緒に野菜を販売することにしました。これで、作物のロスは無くなり、経営的にも安定します。

しかし、これだけでは終わりません。社長の目標は、「農業を始める人を増やすこと」。自社の事業が安定するだけでは、目標には届きません。そのためには、“売れる農業”を創造する必要があります。

収穫できた野菜をすべて出荷でき、収入を向上させ、「やる気」「やりがい」を生み出すこと。魅力があれば、就農者も増えます。

問題となるのは、野菜の付加価値。野菜が持つ魅力のすべてを引き出すことで、収益性を高めることができるのです。

そこで考えたのが、「野菜スープ」。農家直営の「スープ専門店」をオープンさせたのです。野菜をメインにした煮込み風のスープ。栄養価が高いと言われる、野菜のヘタや皮、芯などを入れた、「ベジブロス」と呼ばれるダシを使っています。「ベジブロス」の中身は、ジュースを絞った人参の残りや玉ねぎの皮など、本来は捨てるものです。野菜をすべて使い切るためです。

このスープ専門店は、現在、関西に3店舗。100店舗を目指すと言います。お店を増やすことで、野菜が必要になり、契約する農家が増えていきます。すなわち、新規就農者も期待できるということ。これで、目標が達成できるのです。

先は長いのか、短いのか。成功を祈りたいと思います。

ただし、この会社の成功があったとしても、日本の農業が復活するわけではありません。この会社の支援によって、助けられる農家が増えたとしても、それはごくごく一部。こうした会社が数百社必要なのかもしれません。廃業寸前の農家が、それを待つ時間はありません。

また、従来の農家は、農協頼みの仕組みに縛られており、自ら動き出すことをしません。この根本を改善しなければ、“売れる農業”はできませんし、農業人口も増えません。

支援も必要なのかもしれませんが、重要なのは「自立」です。この会社のように、自分たちで作ったものを、自分たちで加工し、自分たちで販売する。「6次産業化」が求められているのです。

生産(1次産業)+加工(2次産業)+販売(3次産業)=6次産業と呼ばれるものです。

政府や自治体、農協を待っていては、廃業するしかありません。すぐに行動してください。

image by: Shutterstock.com

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なぜ、人はモノを買いたくなるのか。欲しいという感情は、どこから生まれるのか。消費行動における人の心理を知れば、売れるモノが見えてくる。売り方がわかる。小手先のテクニックなど、いらない。人を研究すれば、やるべきことはすべてわかる。

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【著者】 佐藤きよあき(繁盛戦略コンサルタント) 【発行周期】 週刊

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