情報漏えいに対する危機意識の低さや法整備の甘さから、「スパイ天国」と揶揄され続けている日本。主要国にスパイ防止法のない国はないとも言われますが、なぜ我が国は未制定のままなのでしょうか。今回のメルマガ『在米14年&起業家兼大学教授・大澤裕の『なぜか日本で報道されない海外の怖い報道』ポイント解説』では著者の大澤先生が、1985年にスパイ防止法案が廃案となった経緯と、マスコミの立ち位置を紹介。さらに中国の日本における情報収集活動の実態を取り上げ、スパイ防止法制定に関する議論の必要性を訴えています。
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スパイ防止法 中国と日本の差
スパイ防止法が必要ではないかとの声があります。
先月1月20日も衆議院本会議で「スパイ防止法」について質問が岸田首相にありました。
維新の議員から見解を聞かれた岸田総理は「スパイ防止法の必要性については様々な議論があると承知しております。必要な取り組みの充実強化に引き続き努めて参りたい」と答えています。
当面はやる気がないという事なのでしょう。
しかし、当然の事ながら諸外国にはスパイ防止法があります。
以下、香港サウスチャイナモーニングポスト紙2月17日に掲載された中国でスパイ行為で逮捕されている日本人の記事です。
中国が上海で日本人男性を拘束
中国当局が上海で50代の日本人男性を拘束したことが分かった。拘束の詳細や理由は不明と、日本の外務省が11日発表した。
岸田文雄首相が領事館経由で中国に面会機会を要請した。官房長官は「健康状態は良好と思われる」とコメントした。
2015年以降、中国では約16人の日本人がスパイ行為などさまざまな容疑で拘束されている。少なくとも10人が起訴され、9人が最長15年の実刑判決を受けている。
日本政府の報道官はまた2015年に北京で拘束され、スパイの罪で12年の実刑判決を受けた70代の日本人男性の死について、日本が中国に抗議を申し入れたと述べた。
中国は2013年に習近平国家主席が政権をとって以来、国家安全保障の名目で外国の組織や個人に対する監視を強めてきた。
特に2014年にスパイ防止法、2015年に国家安全保障法が施行された後、他の多くの外国人も中国で拘束されている。
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解説
日本でスパイ防止法案が最初に立案されたのは1985年と随分と昔です。
当時の野党が反対したのはもちろんですが、「憲法が保障する表現の自由に抵触する」として3大新聞(朝日、読売、毎日)等のマスコミからも批判の対象とされて廃案となりました。
以来、基本的にはマスコミはスパイ防止法案に反対の立場をとっています。
この記事のように「中国が日本人をスパイ容疑で逮捕しそのまま獄中で亡くなっている人がいる」ような事を大きく報道する新聞・TVが少ないのは、こういった過去の経緯があるからかもしれません。北朝鮮の拉致被害者の報道とは大分違います。
しかし、今の中国の日本における情報収集活動は常識を超えています。
例えば現在、中国は共産党の党員が3人以上いる企業では、『会社法』と『中国共産党規約』によって、中国共産党組織を設置しなければなりません。
これは日本企業も例外ではありません。中国人が3人以上働いている日本企業の中には、いつのまにか中国共産党組織ができている場合があるのです。
その日本の会社内の中国共産党組織が、先進技術の流出拠点となる可能性があります。
スパイ防止法でそれを未然に防ぐのは当然の対策に思います。
亡くなった初代内閣安全保障室長、佐々淳行氏は、次のように述べています。
「我々は精一杯、スパイと闘い、摘発などを日夜やってきたのです。でも、いくらスパイを逮捕しても、せいぜい懲役1年、しかも執行猶予がついて、裁判終了後には堂々と大手をふって出国していくのが実体でした。
なぜ、刑罰がそんなに軽いのか──。どこの国でも制定されているスパイ防止法がこの国にはなかったからです」
現場の無念さが伝わってくる言葉です。正しい現状認識に基づく議論が必要と考えます。(この記事はメルマガ『在米14年&起業家兼大学教授・大澤裕の『なぜか日本で報道されない海外の怖い報道』ポイント解説』2月20日号の一部抜粋です。この続きをお読みになりたい方はご登録ください。初月無料です)
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