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「虐殺はフェイクニュース」というプーチン露の主張に同調する中国の“腹の内”

ウクライナの首都キーウ周辺の都市で次々明らかになる、ロシア軍による民間人大量虐殺。しかしロシアはこれをウクライナ側の「自作自演」であるとし、中国でもその主張に則った報道がなされています。プーチン大統領に対する国際的な批判が頂点に達しようという中、ロシアに同調する中国の思惑はどこにあるのでしょうか。今回のメルマガ『黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」』では台湾出身の評論家・黄文雄さんが、習近平政権がロシア軍のジェノサイドを認めるわけにいかない理由を解説。さらに現在の台湾で起きているという、ウクライナ侵攻前夜に酷似した状況を紹介しています。

※本記事は有料メルマガ『黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」』2022年4月6日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会に初月無料のお試し購読をどうぞ。

プロフィール:黄文雄こう・ぶんゆう
1938年、台湾生まれ。1964年来日。早稲田大学商学部卒業、明治大学大学院修士課程修了。『中国の没落』(台湾・前衛出版社)が大反響を呼び、評論家活動へ。著書に17万部のベストセラーとなった『日本人はなぜ中国人、韓国人とこれほどまで違うのか』(徳間書店)など多数。

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【中国】中国のロシア擁護から読み解く台湾侵攻戦略

ブチャの虐殺は「フェイク」 中国メディアはロシアの主張が中心

ロシアによる侵略を受け続けているウクライナですが、キーウ近郊のブチャでは、多くの民間人の遺体が見つかり、ロシア軍によるジェノサイドであるという批判が世界的に高まりつつあります。

これに対してロシアは「フェイクニュースだ」と否定していますが、中国メディアもこのロシアの主張に同調するような形で報道しています。これまで中国はロシアへの制裁に反対してきました。その一方で、ウクライナにも人道支援を行うなど、双方にいい顔をしようとしてきました。

中国、ウクライナ追加支援 1億8700万円相当

しかし、その中国は、ロシアの侵攻前にウクライナにサイバー攻撃を行っていた疑いが強まっています。英紙タイムズによれば、中国のサイバー攻撃は北京冬季五輪の閉会式が行われた2月20日から始まり、23日にピークに達したそうです。そして翌24日からロシアの侵攻が始まったのです。

ウクライナにサイバー攻撃か 中国、ロシアの侵攻直前に―英報道

結局、中国はロシアの侵略に手を貸していた疑いが高いというわけです。こうなると中ロは一体であると思わざるを得ません。

中国としては、ロシアが早期にウクライナを占領すれば、今度は自分たちが台湾に侵攻しようと思っていたようです。流出したロシア連邦保安局(FSB)からは、「習近平が2022年の秋に台湾併合の計画を立てている」と書かれていた文書が流出しています。

習近平、幻の「秋に台湾侵攻」計画…ウクライナ戦争で白紙に(ロシア内部文書)

こうしてみると、中国の思惑が見えてきます。ブチャのジェノサイドをフェイクニュースだとするのも、もしこれを認めてしまうと、自分たちが台湾を武力統一する際にも中国兵による虐殺が行われることが容易に想像され、台湾人の警戒をさらに強めてしまうからです。

中国が台湾に侵攻する際、台湾の親中派勢力はそれを迎え入れようとするでしょう。そして中国軍は解放軍だと喧伝し、台湾人に抵抗することをやめるように呼びかけるだろうと思われます。

しかし、結局、攻め込まれたほうが蹂躙され虐殺される運命を逃れられないとするならば、絶対に降伏することはありません。じつは台湾人には、それに近い、苦い過去があるのです。

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戦後、マッカーサーの第1号命令で中国国民党軍が台湾を軍事占領し、20万の日本軍と40万人の民間人を台湾から追放し、50年間蓄えてきた個人資産までをも国民党は戦利品として接収しました。そして台湾には200万人もの中国人が流入してきたのです。

当初は台湾人のなかにも、「祖国」である中国の軍隊がやってくるということで、期待している人も少なくありませんでした。国民党政府は「台湾光復」を謳い、解放軍としてやってきたのです。

ところがその国民党軍の兵士に接した台湾人は、そのみすぼらしく規律のとれていない様子や、平気で嘘をつき、略奪し、賄賂を要求する姿に、かつての軍規正しく整然としていた日本兵とのあまりの違いを感じて大いに幻滅してしまいました。

そして、「犬が去って豚が来る」という言葉が台湾人の間で囁かれました。犬はうるさいけれど規律と秩序を守るし役に立つ、しかし豚は汚くて役に立たない、という意味が込められていました。

1948年2月27日、台北で闇タバコを売っていた女性から警官が売上金を没収、さらにその女性を警官が殴りつけたことをきっかけに、それまで国民党政府の腐敗や、搾取、虐待などに絶えきれなくなった台湾人の不満が爆発し、翌28日から大規模な抗議デモが発生、それは台湾全土に広がったのです。

これに対して、まだ中国本土で国共内戦を戦っていた蒋介石は鎮圧部隊を送り、徹底的な弾圧を加えました。この国民党政府の弾圧は白色テロとよばれ、これによる死者は2万~3万人、あるいは10万人ともいわれていますが、ともかく膨大な台湾人が虐殺、処刑されたのです。

台湾の場合には、国民党軍と戦ったわけではありません。日本が敗戦したあとに中国人が入ってきただけです。しかしそれでもこのような文化摩擦から虐殺が起こったのです。そして中国共産党も、チベットやウイグル、南モンゴルについて、「解放」を名目にしながら侵略し、多くの虐殺を行ってきたことは歴史の事実です。

ウクライナも、ロシアとウクライナは兄弟国と言われてきました。そもそもウクライナはキエフ公国が興った地です。ロシアはキエフ公国を継承したことを自認しており、だからウクライナとは兄弟国だとしているのです。もっとも、ウクライナ人からすると自分が兄で、ロシア人は弟だという意識でしょうが。

それでもウクライナはロシアの侵攻に徹底抗戦し、またロシアもウクライナ人を多数虐殺しているのです。

こうした虐殺の事実が判明して都合が悪いのは中国です。「台湾同胞」などと言っていますが、いざ台湾に侵攻すれば台湾人を虐殺することは目に見えています。しかし、あくまで「平和統一」「台湾解放」だと主張する中国としては、兄弟国ですら虐殺が起こっていることは「不都合な真実」なのです。

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ロシアがウクライナからの反撃や西側諸国からの制裁で大きなダメージを受けていることは、中国にとっても誤算でしょう。もしも中国が西側諸国からの経済制裁を受ければ、そのダメージはロシアの比ではありません。こうしたことが台湾侵攻を断念させることにつながれば幸いですが、その一方で、台湾では中国からのフェイクニュースが日常的に流されています。

中国、台湾にフェイク攻勢 ウクライナに乗じる

また、中国からのサイバー攻撃も1日500万件と激増しており、これは先のロシア侵攻直前のウクライナへのサイバー攻撃をも連想させます。

台湾へのサイバー攻撃「1日500万件」 中国の脅威高まる

このように、中国がロシアを擁護すればするほど、台湾侵攻への布石を打っていることの証左なのです。

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