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ウクライナ危機の影で中国が“静かな”侵攻。島国スリランカが嵌った罠

ロシアによるウクライナ侵略に対して曖昧な態度を取り続ける中国ですが、アジア・アフリカへの「静かな侵攻」は粛々と進めているようです。今回のメルマガ『大村大次郎の本音で役に立つ税金情報』では元国税調査官で作家の大村大次郎さんが、中国が仕掛けた債務の罠に嵌ったスリランカの現状を紹介。さらに中国による経済支援の「筋の悪さ」を解説するとともに、この先、第2、第3のスリランカが出かねないことへの懸念を記しています。

※本記事は有料メルマガ『大村大次郎の本音で役に立つ税金情報』の2022年4月16日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め初月無料のお試し購読をどうぞ。

プロフィール大村大次郎おおむらおおじろう
大阪府出身。10年間の国税局勤務の後、経理事務所などを経て経営コンサルタント、フリーライターに。主な著書に「あらゆる領収書は経費で落とせる」(中央公論新社)「悪の会計学」(双葉社)がある。

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中国の静かなアジア侵攻“スリランカ危機”とは?

ウクライナでの戦争に世界中の注目が集まっている中で、アジアのスリランカが深刻な経済危機に陥っています。

スリランカは慢性的な貿易赤字に加えて、新型コロナウイルスにより主力産業の観光業が低迷し、それにウクライナ戦争での物価高が追い打ちをかけたのです。

スリランカの3月末時点の外貨準備高は約19億ドルで1年間で半減しています。また外貨不足により原油や食料品の輸入が滞り、スリランカでは深刻なインフレが生じています。

スリランカは、この夏にも債務不履行(デフォルト)に陥るのではないかとみられており、ウクライナ危機と同様に世界経済の大きな不安材料となっています。

スリランカの債務は、その多さも問題ですが、その内容に重大な懸念材料が秘められています。スリランカは「中国の罠」にひっかかったとされているのです。昨今、中国はスリランカに対して、大規模な経済支援を行っています。が、この経済支援のほとんどは、融資です。つまり、お金を貸しているわけです。そしてその融資のやり方が、かなりヤバいのです。

スリランカは中国からの融資でハンバントタ国際港とマッタラ・ラジャパクサ国際空港を建設しました。が、どちらも経営がうまく行かず、債務の返済ができなくなり、2017年に中国国営企業がハンバントタ国際港を99年間の租借することになりました。

中国は19世紀に、欧米列強から政治の腐敗につけこまれ資源や国土の利権を奪われました。中国全体が虫食い状態にされ、国を立て直すのに100年以上かかりました。中国自身がそういう目に遭っていながら、それと同様のことをスリランカにしているのです。

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アジア、アフリカに経済支援をしまくる中国

中国は昨今、アジア、アフリカの各地で同様の経済支援を行なっており、各地でスリランカ同様の「債務の罠」にひっかかる可能性があるのです。

中国は、近年、急激な経済発展をしており、それに伴いエネルギーや鉱物資源を大量に必要とするようになりました。

そのため、アジア、アフリカの資源を確保するために、アジア、アフリカ諸国に経済援助や投資を行っているのです。中国は欧米諸国に代わって、昨今、アジア、アフリカにおいて大きな影響力を持ちつつあります。

たとえば、最近話題になっているAIIB(アジア・インフラ投資銀行)です。
AIIBは、1,000億ドルを出資金として集め、それをアジア各地の開発に投資するという目的を持っており、中国版マーシャル・プランとも呼ばれています。第二次世界大戦後、アメリカがヨーロッパ諸国に大規模な支援をしたように、中国もアジア各国に大規模な経済支援、経済協力をしようということです。

中国が金をだし、その金を参加各国の開発投資に使おうという趣旨を持っています。そして、開発地域は、歴史的にシルクロードが通っていた地域が重点的になるとされています。中国は現在、世界第2位の経済規模になっています。その中国が主に中国の金を使って、経済支援や経済協力をするというのだから、世界各国にとっては悪い話ではありません。

AIIBに限らず、中国の世界経済における影響力は、近年、急激に大きくなっています。中国は、AIIBをつくるかなり前から、すでに世界各地で、相当な規模の経済支援や経済協力を行っています。中国がアジア地域で強い影響力を持ちつつあることは、すでに知られていますが、実はアフリカでもかなりの影響力を持つようになっています。

中国は2000年から、アフリカ諸国の48カ国の首脳を集めて「中国・アフリカ会議」を開催しています。これは中国からアフリカ諸国に経済支援をする代わりに、石油などの資源を中国に優先的に輸出することを協議した会議です。

この会議は、3年ごとに開かれており、開催地は北京とアフリカの都市が交代で担っています。この「中国・アフリカ会議」では、毎回、中国からの桁違いの支援が約束されています。2006年11月に北京で開かれた第3回会議では、中国はアフリカ諸国に対して50億ドル拠出、2009年の第4回会議では100億ドル、2012年の第5回会議では200億ドルと額を増やしていき、2015年の第6回会議ではなんと600億ドルもの巨額の拠出をすることになったのです。

600億ドルというのは、日本円で7兆円近い額です。日本のODA予算が現在5,000億円から6,000億円なので、その10倍以上のお金をアフリカ地域だけに拠出するというわけです。まさに「桁違い」の国際支援です。

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中国の仕掛ける「債務の罠」

この中国の動きに、欧米諸国は警戒心を募らせています。アフリカの資源を中国にごっそり持っていかれるとともに、中国の経済支援の在り方に問題があるからです。

中国は、アジア、アフリカ諸国を支援する際に「条件をつけない」のです。ほかの欧米諸国や日本の場合、「経済援助が軍事目的で使われないこと」「人権に問題がある政権には援助しない」などの条件がつけられます。しかし、中国の場合は、そういう条件は一切抜きにして、「何に使ってもけっこう」ということで援助が行われるのです。そのため、中国の援助は、軍事独裁政権の武器として使われるケースがままあり、人権侵害を間接的に手助けするということも生じるのです。

たとえば、ムカベ大統領の人権侵害行為が国際問題ともなったジンバブエにも、中国は多額の経済援助と武器の輸出をして、国際的な非難を浴びました。

また冒頭にご紹介したスリランカの場合も、ラジャパクサ一大統領の一族が、スリランカの大臣の3分の1を占めるなど、明らかに腐敗状態にありました。このラジャパクサ一大統領は、親中派であり、大統領就任以来、国の政治経済を極端な親中国の方に舵を切りました。その結果、債務の罠にはまり、経済危機に陥ってしまったのです。

中国とすれば、これまで自国がさんざんやられてきたことをやっているだけということになります。というより、これまでやられてきた分をやりかえしているのかもしれません。

が、欧米諸国や日本は、19世紀から20世紀にかけての帝国主義的な政策はもはや行っていません。帝国主義政策は様々な弊害があり、世界を決して幸福にしないということがわかったので、欧米諸国や日本は、世界経済において、新しいモラルを構築してきたのです。中国はその新しいモラルを無視し、旧時代の帝国主義的な行いをしようとしているのです。

このままいけば、今後も、第2、第3のスリランカが出てくることになるでしょう。アジア、アフリカ諸国の中には、資源や国土の利権を中国にごっそり持っていかれる国が続出するかもしれません。

中国がこのようなモラルに反するような海外支援を行っている背景には、中国自身の危機意識が大きく関係しています。中国は世界第2位の経済大国になったとはいえ、決して安泰ではない「重大なリスク」を抱えているのです。次回は、この中国が抱える「重大なリスク」について、お話ししたいと思います。

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2/16号は、犯罪などで得た“汚い金”を“洗浄”して、正当に得た金に変えてしまう「マネーロンダリング」について。大村氏によれば、「カジノに入れたお金をカジノから引き出す」手法で、いとも簡単に資金洗浄できてしまうのが現状なのだとか。悪用厳禁はもちろんのこと、賛否が割れる日本のカジノ誘致にも一石を投じる記事です。

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