韓国の“斬首部隊”と呼ばれる陸軍第13特殊任務旅団の大尉が北朝鮮のスパイ活動を行ったとして拘束され、韓国では大きな波紋を呼んでいるそうです。今回の無料メルマガ『キムチパワー』では韓国在住歴30年を超える日本人著者が、北朝鮮工作員がどのような手口で大尉をスパイ活動へと抱き込んだのかを詳しく説明しています。
斬首部隊所属の大尉がスパイ活動
北朝鮮工作員の指令を受けて軍事機密を流出した現役陸軍大尉A(29)が今年4月末、拘束起訴された。陸軍第13特殊任務旅団(特任旅団)所属。
2017年12月、北朝鮮の核危機が高まった当時創設されたこの特任旅団は、有事の際、金正恩北朝鮮国務委員長をはじめとする北朝鮮戦争指揮部を除去し、戦争指揮施設を麻痺させる任務を担っているため、別名「斬首部隊」とも呼ばれている。
非常に頑強で優秀な人間が勤めていることで知られる。ここの現役大尉がスパイ活動をしたというのだから問題は大きい。
A大尉はサイバー賭博で借金に苦しんでおり、数千万ウォン相当のビットコインを受け取る見返りに軍内部網ログイン資料などを渡したことが確認されている。
韓国軍事安保支援司令部(安保支援司令部)は28日、国防部検察団が北朝鮮工作員に抱き込まれ、韓国軍合同指揮統制システム(KJCCS)ハッキングの試みに協力した疑い(国家保安法違反など)で陸軍A大尉を拘束起訴したと発表した。
A大尉は2020年3月、知人を通じて民間人のイ某容疑者(38、拘束起訴)と知り合ったが、イ容疑者の紹介でテレグラムを通じてハッカーの仕事をする北朝鮮工作員とつながった。
昨年11月には北朝鮮ハッカーの指令を受け、「陸軍保安規則」など軍事資料と機密を数回にわたってテレグラムを通して伝送した。
A大尉はこの見返りとして約4800万ウォン相当のビットコインを受け取ったことが調査の結果分かった。
メディア(国民日報)の取材の結果、A大尉は「サイバー賭博のために犯行を犯した」と供述したことが確認された。
A大尉はサイバー賭博による債務に苦しんでいたが、北朝鮮ハッカーがイ容疑者を通じて「ビットコインを渡す」というふうに接近すると結局抱き込まれたという。
イ容疑者はもう一人の現役軍人も抱き込もうとしたが、こちらは結局断られて失敗している。
A大尉はイ容疑者に腕時計型隠しカメラを宅配で受け取り、軍部隊内に持ち込んだりもした。彼が使用した隠しカメラは携帯電話より画質が落ちるなど性能は良くなかったという。
A大尉は飛ばし携帯まで動員して軍事機密を数回撮影した後、北朝鮮ハッカーに転送した。
この中には韓国軍合同指揮統制システム(=軍戦場網、KJCCS)へのログイン資料なども含まれていることが分かった。戦場網自体は2級軍事機密に分類されるが、この中には1級機密も多数存在しているという。
しかしながら実際のハッキングは不発だった模様だ。
安保支援司令部は今年1月、A大尉に対する情報提供を指示し捜査に着手した。
この過程で民間人イ容疑者も関与した事実を把握し、警察庁国家捜査本部安保捜査局と協力捜査を行った。
イ容疑者も国家保安法違反の疑いで拘束起訴された。
安保支援司令部の関係者は、「軍で使用中の電算網がハッキングされた場合、大量の軍事機密が流出し国家安保に甚大な危険をもたらす恐れがあった」と述べた。
(無料メルマガ『キムチパワー』2022年5月10日号)
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