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低血糖を生じやすいか否か。糖尿病薬と「糖質制限食」の相性は?

初めて患った病では、薬の服用や生活習慣の見直しなど、多くの不安があるもの。初めは医師の言うことを守っていても、徐々に疑問も湧いてくるものです。今回のメルマガ『糖尿病・ダイエットに!ドクター江部の糖質オフ!健康ライフ』には、糖尿病と診断され半年、2種類の薬を服用しているという読者が、現在の治療法の判断を仰ぎ、糖質制限食を実践していいものか質問が届きました。江部先生は糖尿病に用いられる代表的な薬の効果と特徴と、各薬と糖質制限食との相性についても回答しています。

薬を飲んでいる場合の糖質制限について

Question

糖尿病と診断され通院を始めて半年です。現在はメトグルコとフォシーガを処方され、朝に各1錠服用しています。半年でHbA1cが12%から8%までさがり、BMIが35から33までさがりましたが、医師からは摂取カロリーを減らして、食事は腹七分目を意識して、運動して痩せてとしか言われません。

ジムに入会し週3通い、朝ウォーキングも始めましたし、食事量も気にする様にはなりましたが、正直このままの治療でいいのか不安です。私の様な肥満者の糖尿病投薬治療中の場合、どの程度まで糖質制限をしてもいいでしょうか。

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ドクター江部からの回答

メトグルコとフォシーガ内服+腹七分目で、HbA1cが12%から8%、BMIが35から33であれば、なかなかの改善であり、良いことだと思います。ただ、カロリー制限食と運動で、このまま糖尿病がどんどん良くなるかというと、かなり厳しいものがあります。

有名な久山町の研究において、糖尿病発症を予防すべく14年間にわたり<カロリー制限食+運動療法>を指導しましたが、糖尿病は逆に激増したという事実があるからです。従って、糖質制限食にたどり着かれて正解です。

(1)メトグルコ(メトホルミン)は欧米では第一選択剤です。
肝臓での糖新生の抑制、消化管からの糖吸収の抑制、末梢組織でのインスリン抵抗性の改善などの作用があります。

(2)フォシーガはSGLT2阻害薬です。
尿中にブドウ糖と水を約60g/日ずつ排泄して血糖値を下げます。心臓・腎臓・脳などの臓器保護作用を有すとされています。最近は、SGLT2阻害薬は、慢性心不全の治療薬としても保険収載されています。

メトグルコもフォシーガも低血糖は基本起こさない薬なので、安心して、スーパー糖質制限食を導入することができます。運動もいいので継続しましょう。

有酸素運動はインスリン抵抗性を改善させます。筋トレで筋肉量が増えれば、血糖取り込み装置大きくなるので、好ましいです。しっかりスーパー糖質制限食を実践されて、厚生労働省のいう「推定エネルギー必要量」は摂取してOKです。

つまり日本糖尿病学会のいう「カロリー制限食」ほど、ひもじい思いをする必要はないということです。それで、体重は標準まで減少して、HbA1cも6.2%未満となるでしょう。念のため、早朝空腹時の血糖値とインスリン値も測定しておきましょう。

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その他の経口糖尿病薬

(3)経口血糖降下剤(SU剤)
疲れた膵臓をさらに鞭打つ矛盾した治療法。食後高血糖・平均血糖変動幅増大を予防せず、空腹時低血糖を生じやすい。

特殊例を除いて使用しない。まれにグリメピリドが有効な例がある。

(4)α-グルコシダーゼ阻害薬(グルコバイ、ベイスン、セイブル)
比較的副作用は少ないが効果も軽度である。腹滿、ガスなどの副作用あり。「STOP-NIDDM」試験では、2型糖尿病の発症を36%、心血管疾患の発症を49%抑制した。近年のCGMにより平均血糖変動幅改善効果が実証されて、再評価されつつある。

(5)インスリン抵抗性改善薬(チアゾリジン誘導体・アクトス)
肥満・浮腫・心不全・男性の膀胱癌など、理論的に副作用が心配である。

(6)速効型インスリン分泌促進剤(グルファスト、スターシス、シュアポスト→グリニド系剤)
効果が軽度。

(7)DPP-4阻害剤(ジャヌビア、ネシーナなど)
効果は軽度。

(8)リベルサス(GLP-1受容体作動薬)
新しい薬ですが、早朝空腹時血糖値を下げてくれます。私はよく使います。

(9)ツイミーグ(イメグリミン塩酸塩)
一番新しい薬です。まだ、2週間投与です。ミトコンドリアへの作用を介して、グルコース濃度依存的なインスリン分泌を促す膵作用と、肝臓・骨格筋での糖代謝を改善する膵外作用(糖新生抑制・糖取り込み能改善)により血糖降下作用を示すと考えられています。良さそうな薬です。

SU剤が最も低血糖を生じやすいので、近年使用量が激減しています。グリニド系剤も、インスリンを分泌させるので、低血糖を起こす可能性は少しあります。(4)(5)(7)(8)(9)は低血糖が生じにくいです。

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image by: Shutterstock.com

江部康二この著者の記事一覧

(財)高雄病院および(社)日本糖質制限医療推進協会 理事長。内科医。漢方医。京都大学医学部卒、同大胸部疾患研究所等を経て、1978年より医局長として高雄病院勤務。2000年理事長就任。高雄病院での豊富な症例をもとに、糖尿病治療、メタボ対策としての糖質制限食療法の体系を確立。自らも二型糖尿病であるために実践し、薬に頼らない進行防止、合併症予防に成功している。

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【著者】 江部康二 【月額】 ¥660/月(税込) 初月無料! 【発行周期】 毎週 火・金曜日

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