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五輪汚職「竹中平蔵は逮捕できぬ」の理不尽。なぜ特捜部動けず?豚箱回避の根拠を元国税が解説

東京五輪を巡る汚職事件で、電通出身の組織委員会元理事や大手出版社会長など、大物たちの逮捕に踏み切った東京地検特捜部。ネット上では検察の手が竹中平蔵氏にまで及ぶのではないかとの噂で持ちきりですが、果たして竹中氏が検挙されることはあり得るのでしょうか。今回のメルマガ『大村大次郎の本音で役に立つ税金情報』では元国税調査官で作家の大村大次郎さんが、ネットに流布している「3つの状況証拠」の信憑性を検証した上で、納得いかない点が多々ありながらも悪名高き竹中氏が罪を犯している可能性と逮捕の現実味について私見を述べています。

※本記事は有料メルマガ『大村大次郎の本音で役に立つ税金情報』の2022年9月16日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め初月無料のお試し購読をどうぞ。

プロフィール大村大次郎おおむらおおじろう
大阪府出身。10年間の国税局勤務の後、経理事務所などを経て経営コンサルタント、フリーライターに。主な著書に「あらゆる領収書は経費で落とせる」(中央公論新社)「悪の会計学」(双葉社)がある。

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竹中平蔵氏の逮捕はあるのか?

安倍元首相が死去して以来、東京オリンピック関係の逮捕が相次ぎました。東京オリンピック・パラリンピックのスポンサー契約をめぐって、組織委員会元理事の高橋治之容疑者が受託収賄の疑いで東京地検特捜部に再逮捕されました。大手出版社のKADOKAWAから総額7,600万円、紳士服のAOKIホールディングスからも総額5,100万円の賄賂を受け取っていたというものです。AOKIホールディングス前会長の青木拡憲容疑者や、KADOKAWAの会長である角川歴彦氏も逮捕されています。そして、日本オリンピック委員会の竹田恒和元会長も参考人として任意の事情聴取を受けているようです。またこの贈収賄事件に絡み、広告会社最大手の電通にも東京地検の家宅捜索が入っています。

これらのことから、あの竹中平蔵氏も逮捕されるのではないかという噂がネット上で流れています。有名YOUTUBERやテレビによくでる評論家なども、そういう説を唱えています。

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ネットに流れる竹中氏逮捕の噂

なぜ竹中氏が逮捕されるのかというと、ネット上に流布している説では、次のような要因が語られています。

これらの「状況証拠」は、確かに信憑性があるように見えます。竹中平蔵氏は、ご存じのように人材派遣企業最大手のパソナの会長でした。そしてパソナは、AOKIやKADOKAWAと同様に、東京オリンピックの「オフィシャルサポーター」でした。東京オリンピックの大会スポンサーには4種類あり、スポンサー料が高い順に、「ワールドワイド」「ゴールド」「オフィシャル・パートナー」となっており、一番安い枠としてさらに「オフィシャル・サポーター」という枠が設けられていました。現在、贈賄が発覚しているAOKIやKADOKAWAはいずれも、一番安い「オフィシャル・パートナー」枠であり、パソナも同じなのです。

そして逮捕されたAOKIの前会長は、逮捕される直前にAOKIの会長職を退いています。検察は、「現役職の逮捕にこだわる」という都市伝説があり、そのためにAOKIの前会長の青木拡憲氏は、逮捕を免れるために辞任したのではないか、と憶測されているのです。

竹中平蔵氏も、つい最近、パソナの会長職を退いているので、「逮捕を免れるために辞めたのではないか?」「でもAOKIの会長も逮捕されているので竹中氏も逮捕されるのではないか」ということです。

また今回、家宅捜索を受けた電通とパソナは蜜月関係にあります。このメルマガでも何度か触れましたが、2020年に始まった持続化給付金の事業では、電通とパソナはグルになって「濡れ手に粟」の大儲けをしました。

持続化給付金というのは、新型コロナにより経営が悪化した中小企業に、悪化状況に応じて現金を給付するという事業です。中小法人で最高200万円、個人事業者で最高100万円が支給されました。経営悪化している事業者は多いので給付の総額は膨大になり、当初のと事務委託費だけで769億円もの予算が組まれました。

この持続化給付金の事業が、「サービスデザイン推進協議会」という団体に769億円という巨額な費用で事務委託され、その委託費は20億円抜かれた後さらに電通、パソナなどに再委託されていたのです。そもそもこの「サービスデザイン推進協議会」は、電通、パソナ、トランスコスモスなどによってつくられた団体です。その「サービスデザイン推進協議会」が中抜きした上、業務も電通やパソナが受注しているわけですから、丸儲けということなのです。

しかも「サービスデザイン推進協議会」が受注した国の事業は今回が初めてではありません。2016年の発足から2020年までのわずか5年間で、経済産業省の事業を1,546億円も受注していたのです。つまり電通とパソナは、以前から組んで暴利をむさぼっていたわけなのです。その電通が今回、家宅捜索を受けたので、いよいよパソナにも捜査の手が向かうのではないか、竹中平蔵氏はそれを察知して、パソナの会長を辞任したのではないか、ということです。

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残念ながら竹中氏の逮捕はない

では本当に竹中氏の逮捕はあるのでしょうか?が、筆者は断言します。少なくともオリンピック関連の汚職事件において、竹中平蔵氏が逮捕されることはありません。

筆者は、これまで竹中氏を批判する記事をたくさん書いてきました。「日本経済が長く低迷してきた最大の元凶は竹中平蔵氏である」と。竹中平蔵氏は、小泉内閣で経済政策を一手に引き受けてきました。竹中平蔵氏は日本経済を「賃下げ」に誘導し、その結果、先進国の中で日本だけが20年もの間、賃金が下がり続けてしまいました。この賃下げこそが、日本経済の活力を失わさせ、国民生活を苦しくさせた最大の要因です。小泉政権は非正規雇用の範囲を拡大し非正規雇用者を激増させました。竹中平蔵氏は小泉退陣とともに政治家を辞め、その直後に、非正規雇用派遣事業の最大手のパソナの重役になるという、まるで韓国ドラマの「悪役」のようなことを平気でやってきた人物です。

この竹中平蔵氏が逮捕されるというのであれば筆者としても非常に喜ばしいところです。

が、今回のオリンピック関連の贈収賄に関する限り、竹中平蔵氏が罪を犯している可能性は、ほぼゼロなのです。

竹中平蔵氏が、安倍首相死去の直後にパソナの会長職を退いたのは、おそらく単なる偶然だといえます。というのも、竹中平蔵氏は今年になってオリックスの役員も退任しています。おそらく、オリンピックとはほかの要因で、日本経済から退出するつもりなのだと思われます。

そして電通に家宅捜索が入ったのは、電通自体の犯罪というよりは、逮捕された組織委員会元理事の高橋治之容疑者が、もと電通の社員だったからです。高橋治之容疑者は、電通時代の後輩などと組んで仕事をしていますし、現在も電通と深いつながりがあるので、今後、電通の社員が逮捕されるようなことはあるかもしれません。が、それは高橋容疑者との関連でのことであり、そのことについてパソナは関係していないのです。

竹中平蔵氏が逮捕されない理由は、他にも多々あります。そしてその理由こそが、竹中氏が長い間日本の政治経済の中枢に居座り続けてきた理由でもあります。次回は、なぜ竹中平蔵氏の逮捕がないのか、その理由についてより詳しくご説明したいと思います。

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