定年後、あなたは何をしようと思っていますか? 実は、人生の後半戦は前準備なしには辛いものになりがちなんだそうです。そこで、準備をするためのヒントを記している一冊をメルマガ『1分間書評!『一日一冊:人生の智恵』』の中で紹介しています。
【一日一冊】定年準備 – 人生後半戦の助走と実践
楠木新 著/中央公論新社
著者は生命保険会社で支社長を務めるなど順調に出世していましたが、47歳のときに体調を崩して休職することになりました。50歳で復帰したときには役職を失い、平社員となった著者はどうすればよいのかわからなくなってしまったのです。
そこで著者は会社員の生き方を考えるため、会社員から蕎麦打ち職人になった人や、大道芸人になった人、提灯職人になった人、翻訳家になった人などの話を聞き始めました。2、3年調査をした後で独立し、会社員の働き方をテーマにしたライターになりたいと考えていたのです。
すると取材の中で、市役所職員から大道芸人に転身した人から、「会社員の働き方を書くなら、定年まで働いて、会社員の体験をネタにすべき」と諭され、さらに「平社員の立場から逃げたいだけではないのか」と叱られたというのです。
結果的に著者はアドバイスどおり会社員の立場を維持したまま、ライターという仕事をすることができました。在職中には12冊の本を書き、講演やテレビ出演することができ、無事定年退職することができたという。
再就職や起業…冷やかしでもいいからまず初めの第一歩を踏み出すことが大切だ(p99)
著者が言いたいのは、何の準備もなく定年退職すると「図書館で小競り合い」「名前が呼ばれるのは病院だけ」「半年経つと立ち上がれない」ということになってしまうということです。
会社員であれば、上司の指示命令に従って従順な社員を演じていれば、失敗さえしなければ、それなりに評価されるでしょう。
ところが定年退職してしまうと、上司も指示命令もなくなり、自分がすべて考えて、決断し、行動しなくてはならないのです。
定年後、自分は何をすればいいのか、自分の居場所はどこなのか、この暇な時間をどう潰すのか、わからなくなってテレビばかり見て過ごす人が多いのだという。
「定年退職を境に、日がなテレビを見て過ごしている」…『不安な個人、立ちすくむ国家』…経済産業省若手プロジェクト(p6)
著者のオススメは、会社員でいるうちから別の名前を持って活動すること。いわゆるペンネーム、芸名を持って二足のわらじを履くことです。
とにかくやってみれば、自分の実力もわかるし、業界の厳しさもわかる。うまくいけば最高だし、うまくいかなくても、新しい道が見えてきたりして、自分の居場所を見つけることができるのです。
副業禁止の会社であれば、ボランティアで無料で趣味の範囲でやってみるのもよいのでしょう。定年後を見据えて、今、やれることを一歩踏み出すことが面白いのではないでしょうか。
楠木さん、良い本をありがとうございました。
【私の評価】★★★★☆(80点)
<私の評価:人生変える度>
★★★★★(ひざまずいて読むべし)
★★★★☆(素晴らしい本です)
★★★☆☆(読むべき一冊です)
★★☆☆☆(余裕があればぜひ)
★☆☆☆☆(人によっては)
☆☆☆☆☆(こういう本は掲載しません)
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